【元銀行員の監修者からのアドバイス】住宅ローン返済中のNISA活用、判断に迷わないための4つの視点
住宅ローンを抱えながらの資産形成は、「返済」と「運用」という二つの目的が同時に走ることになるため、判断に迷うのも無理はありません。ここでは、元銀行員の視点から、住宅ローン返済中にNISAを活用する際の考え方を整理します。
1. 金利差で判断する:ローンの金利より運用リターンが期待できるか
「住宅ローンは早く返さなきゃと思っていましたが、運用に回した方が良いという考え方を知れてよかったです」というように、住宅ローンの金利より運用で期待できるリターンの方が高い場合、繰り上げ返済を急ぐよりも運用に資金を振り向ける方が、家計全体を効率よく増やせる可能性があります。
低金利の住宅ローンを組んでいる場合ほど、この考え方が当てはまりやすくなります。
2. 資金の性格で線引きする:使う時期が決まっているお金は現金で確保
まとまった資金が入ったときは、その置き場所を最初に整理しておくことが大切です。教育資金のように使うタイミングが決まっているお金は現金で確保し、当面使う予定のない資金だけを運用に回すという線引きをすると、住宅ローンの返済に無理が生じる不安も和らぎます。
まとまった資金については、保険と債券を組み合わせて保障と運用の両方を確保する、あるいは一部を一括で保険会社の商品に預け、残りをNISAで積立に回すというように、資金の性格ごとに役割を分けて考えると判断がしやすくなります。
3. 円資産に偏らず、インフレへの備えも視野に入れる
銀行預金や国債の金利だけではインフレに追いつかないという実感も、運用を続ける後押しになるでしょう。
円だけに資産を偏らせず、外国債券のような選択肢も視野に入れることで、住宅ローンという固定の支出を抱えながらも、資産全体としては物価上昇に対応できる形を作っていけます。
まとまった資金を細々と積み立てるより、一括で運用しつつ保障も確保する方がよい場面もあり、資金の規模に応じてNISAの積立と一括運用を使い分ける発想も参考になります。
4. 変動金利のリスクを踏まえ、返済と運用のバランスを都度見直す
住宅ローンが変動金利である以上、今後の金利上昇にどう備えるかも欠かせない視点です。
金利が上がれば返済負担は増えますが、だからといって手元の資金をすべて繰り上げ返済に投じてしまうと、運用によってインフレや金利上昇に対応する余地がなくなってしまいます。
返済を焦って前倒しにするのではなく、金利差とインフレの両方を踏まえたうえで、運用と返済のバランスを都度見直していく姿勢が、住宅ローン返済中のNISA活用における一番の注意点になります。
変動金利ユーザーにとって、昨今の金利上昇のニュースは不安ですよね。ただ、市場金利が上がっても住宅ローンの返済額がすぐに増えるわけではありません。大切なのは、金利上昇時にいくらまで返済額が増え、家計がどこまで耐えられるかを事前にシミュレーションしておくことです。
その際、ご自身のローンに「5年ルール」や「125%ルール」が適用されているかも確認しましょう。これらは急激な負担増を抑える仕組みですが、返済額の内訳が変わるだけで元金が減りにくくなったり、未払利息が発生したりするデメリットもあります。仕組みを正しく理解し、焦らずに返済と運用のバランスを見極めていきましょう。
住宅ローンやNISAにおける資産運用を考える時に知っておきたい用語解説
- NISA:投資で得た利益にかかる税金が一定の範囲で非課税になる制度です。
- 繰り上げ返済:住宅ローンなどの残高の一部または全部を、予定より前倒しで返済することです。返済期間を短縮する方法と、毎月の返済額を減らす方法があります。
- 変動金利:市場の金利動向に応じて、一定期間ごとに適用利率が見直されるローンの金利タイプです。固定金利に比べて当初の金利は低めですが、将来の返済額が変動するリスクがあります。
- 外国債券:海外の政府や企業などが発行する債券です。円資産だけに偏らない分散先の一つとして活用されます。
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級保有。住友生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
