70歳代の貯金は「豊か」か「ギリギリ」か。「借入金あり」の高齢者世帯は6.5%、1歳刻みの年金平均額もチェック
siro46/shutterstock.com
執筆者太田 彩子LIMO&ファイナンス編集部記者
14:30
70歳代の貯金は「豊か」か「ギリギリ」か。「借入金あり」の高齢者世帯は6.5%、1歳刻みの年金平均額もチェック
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この記事はここがポイント

  • 令和6年度の年金受給額は厚生年金男性平均約17万円、国民年金平均約6万円と大きく異なる個人差が特徴。
  • 70歳代の貯蓄は平均2416万円に対し中央値1178万円と約2倍の差があり、資産の二極化が進行。
  • 70歳代の生活安定には、年金額・生活費の現状把握、貯蓄の計画的取り崩し、健康と資産の両輪での備えが不可欠。

「70歳を過ぎても、そこそこの貯蓄と年金があれば大丈夫」。

若い頃はそう漠然と思っていたのに、いざ自分が70歳代を目前にすると、周囲の高齢者がいくらもらってどれほど蓄えているのか、意外に見当がつかないものです。

2026年6月支給分から年金額は改定され、老齢基礎年金の満額は月7万608円になりました。とはいえ「満額」を受け取れる人ばかりではなく、同世代の平均額や貯蓄事情を知ることが、老後設計の第一歩になります。

今回は、70歳代以上の年金平均額と貯金の実像について、公的統計を手がかりに整理していきます。

「今の暮らしは何とかなっているけれど、貯えは本当に足りるのだろうか」。年金と貯蓄が老後の家計を大きく左右する70歳代を目前にすると、そんな不安がふと頭をよぎる方も少なくないのではないでしょうか。

私が自治体で後期高齢者医療の担当をしていた頃、「思ったより年金が少なくて」「まだ借入が残っていて」という声を、窓口で何度も耳にしました。データで見ても、70歳代の暮らしぶりは世帯ごとに差が大きく開いているのが実情です。

今回は、70歳代の年金平均額を1歳刻みで確認しつつ、貯蓄の分布や「借入金あり」世帯の実態まで、公的統計をもとに整理しました。

ご自身の状況と照らし合わせながら、これからの家計設計に役立つヒントを一緒に探していきましょう。

70歳代以上の年金平均額はいくら?

まずは、70歳代以上のシニアが実際に受け取っている年金額を見ていきましょう。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、男女別の平均月額を確認します。

厚生年金(基礎年金含む)の平均月額

厚生年金の全体平均は、男性が16万9967円、女性が11万1413円です。

厚生年金 階級別受給権者数

厚生年金 階級別受給権者数
出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

階級別に分布を見ると、月10万円未満が19.0%(305万3974人)、月20万円超も18.8%(302万7673人)存在し、個人差が大きいのが特徴です。

国民年金の平均月額

国民年金だけを受給する人の平均は、男性が6万1595円、女性が5万7582円です。

40年間保険料を納めれば満額の月7万608円(令和8年度)が受け取れますが、未納期間や免除期間があると減額されるため、実際の平均は満額よりも低い水準にとどまっています。

国民年金の平均額(全年齢)

国民年金の平均額(全年齢)
出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

自営業やフリーランスとして働いてきた人、専業主婦(夫)期間が長かった人は、国民年金だけの受給になることが多く、月額は6万円前後にとどまるのが実情です。

70歳~79歳の年齢別平均

なお、70歳以降を1歳刻みで見ると以下のとおりです。

70歳代の厚生年金額

70歳代の厚生年金額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
  • 70歳の厚生年金:15万455円
  • 71歳の厚生年金:14万8371円
  • 72歳の厚生年金:14万6858円
  • 73歳の厚生年金:14万5583円
  • 74歳の厚生年金:14万7774円
  • 75歳の厚生年金:15万1410円
  • 76歳の厚生年金:15万1241円
  • 77歳の厚生年金:15万962円
  • 78歳の厚生年金:15万862円
  • 79歳の厚生年金:15万3115円

国民年金:70歳~79歳の平均月額

70歳代の国民年金額

70歳代の国民年金額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
  • 70歳の国民年金:6万1011円
  • 71歳の国民年金:6万770円
  • 72歳の国民年金:6万234円
  • 73歳の国民年金:6万32円
  • 74歳の国民年金:5万9813円
  • 75歳の国民年金:5万9659円
  • 76歳の国民年金:5万9555円
  • 77歳の国民年金:5万9349円
  • 78歳の国民年金:5万9124円
  • 79歳の国民年金:5万8676円

次では貯蓄事情を見ていきましょう。

70歳代の貯金事情、平均と中央値で見えてくるもの

金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、70歳代・二人以上世帯の平均は2416万円、中央値は1178万円です。

平均と中央値に2倍近い開きがあることからも、資産の多い一部の世帯が全体の平均を押し上げていることが読み取れます。半数以上の世帯は、平均額よりもかなり少ない貯蓄で暮らしているのが実態です。

70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額分布

  • 金融資産非保有:10.9%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100〜200万円未満:5.1%
  • 200〜300万円未満:3.7%
  • 300〜400万円未満:3.9%
  • 400〜500万円未満:2.9%
  • 500〜700万円未満:6.4%
  • 700〜1000万円未満:6.7%
  • 1000〜1500万円未満:11.1%
  • 1500〜2000万円未満:6.7%
  • 2000〜3000万円未満:12.3%
  • 3000万円以上:25.2%
  • 無回答:0.6%

3000万円以上を保有する世帯が全体の4分の1を超える一方で、金融資産非保有と100万円未満をあわせると15.4%を占めます。

70歳代の家計は、豊かに暮らせる世帯と、家計に余裕のない世帯にはっきり分かれる二極化傾向がみられます。

2000万円以上の貯蓄がある世帯は37.5%、1000万円以上でみると55.3%と過半数に達します。とはいえ、45%の世帯は1000万円未満で老後を過ごしていることになり、公的年金が生活の柱になっている家計は多いといえるでしょう。

「借入金あり」の高齢者世帯も一定数存在する

貯蓄と並んで確認しておきたいのが、負債の状況です。厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査」の表9(貯蓄額階級別・借入金階級別世帯数の構成割合)によると、高齢者世帯のうち、借入金が「ない」と答えた世帯は81.1%を占める一方、「ある」と回答した世帯も6.5%存在します(残る12.4%は有無不詳)。

貯蓄額階級別・借入金額階級別世帯数の構成割合

貯蓄額階級別・借入金額階級別世帯数の構成割合
出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」

大多数はローンから解放されているものの、住宅ローンの残債や、リフォーム・医療費・車の買い替えなどで一時的に借入れを行っているケースが一定数あることが読み取れます。

高齢者世帯の1世帯当たり平均借入金額は34.7万円ですが、これは借入金がない世帯を含めた全体の平均です。

実際に借入れがある世帯だけで見れば、残高はより大きい水準になります。「貯蓄はあるが借入金も残っている」という世帯では、返済負担が家計を圧迫することもあるため、貯蓄額と負債を一体で把握しておくことが大切です。

【筆者からのアドバイス】70歳代を安心して過ごすために意識したい3つのこと

70歳代からの生活を安定させるために、何を意識しておけばいいのでしょうか。

受給額と生活費の「今の姿」を把握する

70歳代に入ってから収入と支出のバランスを崩さないためには、まず現状の把握が欠かせません。

日本年金機構から届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の年金額を確認したうえで、光熱費や食費、医療費などの生活費が月々いくらかかっているのかを家計簿アプリなどで見える化することから始めましょう。

取り崩しペースをコントロールする

ある程度の貯蓄があっても、無計画に取り崩してしまえば長生きした場合に家計は行き詰まります。

「毎月いくらまで貯蓄から補填してよいか」の目安を決め、預貯金・投資信託・定期性の資産などを整理しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。使う口座と残す口座を分けておくのもひとつの方法です。

健康と資産の「両輪」で備える

70歳代以降は、医療費や介護費用が家計を圧迫しやすい年代です。健康寿命を延ばすための生活習慣に投資することは、結果として資産を守ることにもつながります。

定期的な健康診断や適度な運動、社会とのつながりを保つことなどは、精神的な安定と経済的な安定の両方につながるでしょう。

まとめにかえて

70歳代の年金と貯金の実像を数字で追ってみると、「平均」の裏側には大きな個人差があることが見えてきます。厚生年金の平均月額は男性で約17万円、女性で約11万円、貯蓄も中央値は1178万円と、平均2416万円との差が広がっています。

大切なのは、他人の平均に一喜一憂するのではなく、自分自身の年金額と暮らし方に合わせて備えを整えていくことです。まずは受給見込みと家計の現状を確認し、無理のない範囲で老後の設計図を描いていきましょう。

参考資料

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