65歳以上の就業者数は22年連続増、就業率56.1%へ。年金月15万円ラインを越えられない現実と70歳雇用の努力義務
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65歳以上の就業者数は22年連続増、就業率56.1%へ。年金月15万円ラインを越えられない現実と70歳雇用の努力義務

「年金だけで暮らせる」シニアは1割未満

執筆者太田 彩子LIMO&ファイナンス編集部記者
監修者齊藤 慧編集者
06:00
65歳以上の就業者数は22年連続増、就業率56.1%へ。年金月15万円ラインを越えられない現実と70歳雇用の努力義務
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この記事はここがポイント

  • 月15万円以上の年金受給者は半数未満、年金のみでの生活は多くのシニアで困難
  • 65歳以上就業者は960万人(22年連続増)、65〜69歳就業率は56.1%に増加
  • 国は70歳までの就業確保を努力義務化、教育訓練休暇給付金創設で高齢者就労支援

同年代の友人と健康や趣味の話をしていても、ふとした瞬間に「月にいくら年金を受け取れるのか」という現実が頭をよぎることがあります。物価上昇のニュースがスーパーの店頭でも実感される中、「夫婦で暮らすならいくら要るのか」「もしおひとりさまになったら、いくらあれば自立できるのか」と気になる場面が増えました。

一つの境界線としてよく語られるのが「月額15万円」という数字です。国民年金と厚生年金を合わせて月15万円あれば、ひとり暮らしになっても最低限の生活は維持できるだろうと考える人もいるでしょう。

しかしシニア層で、この15万円の壁をクリアできている人はどれくらいの割合いるのでしょうか。

自分の老後設計を確かなものにするには、世間の「ふつう」とされるマクロなデータを正しく捉え、社会保障制度の動向を掴むことが近道になります。

ここでは月15万円以上を受け取っている人の割合、シニア世代が抱える家計実感、そして今進んでいる「年齢に関わりなく希望に応じて働ける環境」の整備状況について、官公庁の公表資料をもとに解説していきます。

筆者が自治体窓口で保険料の相談対応をしていた頃、同じ会社員経験を持つ人であっても、現役時代の年収や厚生年金の加入期間、働き方の違いで、15万円ラインに届くかどうかに大きな個人差が出ていました。 本記事では、編集部が厚生労働省や総務省および日本年金機構など、官公庁が公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

厚生年金と国民年金を合わせて月15万円以上を受け取る人の割合

日本の公的年金制度は、すべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」を土台とし、その上に会社員や公務員などが加入する「厚生年金」が積み上がる仕組みです。

厚生年金と国民年金の仕組み

厚生年金と国民年金の仕組み
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金部分を含む厚生年金受給者の平均月額は15万289円で、老齢基礎年金の部分も金額に含まれています。

1万円刻みで、受給権者数がどのように分布しているかを見ていきます。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

厚生年金の受給額

厚生年金の受給額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

受給額ごとの人数分布をみると、厚生年金を月15万円以上受け取っている人は全体の49.8%となっており、半数には達していません。

なお、厚生年金を受給していない人(国民年金のみの人)まで含めれば、この割合はさらに下がります。実際の受給額は現役時代の収入や加入期間で大きく変わりますから、まずは自分の見込み額をねんきんネットやねんきん定期便で確かめておきたいところです。

シニア世代は年金だけで生活できているのか?

実際に年金生活を送る人は、家計についてどのように感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を見ると、年金生活の厳しい実態がうかがえます。

年金生活のリアルな実感

年金生活のリアルな実感
出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成

ポイント1:「年金だけで不自由なく暮らせる」と感じる人は少数

60歳代・70歳代ともに、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答した割合は、二人以上世帯・単身世帯のいずれも8〜12%台にとどまっています。

ポイント2:単身世帯では「生活費もまかなえない」と感じる人が目立つ

「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した割合は、二人以上世帯では26〜33%台でした。

一方、単身世帯では60歳代が50.7%、70歳代が35.5%となっています。

ポイント3:最も多い理由は「物価上昇」

年金生活にゆとりがない理由として最も多かったのは、すべての年代・世帯区分で「物価上昇等」でした。

いずれも5割を超えており、続いて「医療費の自己負担増」や「年金支給額の切り下げ」などが挙げられています。

この調査結果からは、多くのシニア世帯が物価高による生活費の負担増を実感しており、年金収入だけではゆとりのある生活を送りにくい状況がうかがえます。

【白書データ】65歳以上の就業者数は22年連続で増加、就業率も右肩上がり

年金だけでは足りないという実感の裏側で、実際に働く65歳以上のシニアも増えてきました。内閣府が2026年に公表した「令和8年版高齢社会白書」から、直近の就業者数と就業率の推移を確かめていきます。

65歳以上の就業者数は960万人、全就業者の13.7%を占める

令和7年(2025年)時点の内訳を、年齢階級別に並べていきます。

  • 65〜69歳の就業者数:403万人
  • 70歳以上の就業者数:557万人
  • 65歳以上の合計:960万人
  • 全就業者数7,004万人に占める65歳以上の割合:13.7%

65歳以上の就業者数は22年連続で増加してきました。日本の労働市場にとってシニア層は周縁的な存在ではなく、就業者のおよそ7人に1人を占める重要な担い手になっています。

65〜69歳の就業率は56.1%、70〜74歳は36.7%まで上昇

続いて年齢階級別の就業率(人口に占める就業者の割合)を並べます。

  • 65〜69歳の就業率:56.1%
  • 70〜74歳の就業率:36.7%
  • 75歳以上の就業率:12.7%

65〜69歳では2人に1人以上が働いており、10年前の44.0%と比べると10ポイント以上の伸びを示しました。70〜74歳の36.7%も、いまや珍しくない水準になっています。

【白書が示す方針】「年齢に関わりなく希望に応じて働ける環境」の整備が進む

シニアの就業拡大を後押しする形で、国も「年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境」の整備を進めてきました。同じ「令和8年版高齢社会白書」の第2章から、令和7年度に実施された施策の骨子を追いかけていきます。

スキルアップとリ・スキリングの支援強化

まずは学び直しに関する新制度から並べていきます。

令和7年10月から、雇用保険被保険者が在職中に教育訓練休暇を取得した場合に賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」が創設されました。雇用保険の被保険者ではない人などが教育訓練を受講する場合に、教育訓練費用と受講中の生活費を融資する「リ・スキリング等教育訓練支援融資」も同時に始まっています。

大学や放送大学でも、社会人選抜の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制、科目等履修生制度などによって、社会人が学び直しやすい環境の整備が進んできました。

70歳までの就業機会確保が努力義務化

続いて企業側の受け皿の広がりについて押さえておきます。

高年齢者雇用安定法では、事業主に対して70歳までの就業機会確保が努力義務とされています。独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の「70歳雇用推進プランナー」などが、企業への相談・助言を担ってきました。

65歳以上の年齢への定年延長、66歳以上の年齢への継続雇用制度導入、高年齢の有期雇用労働者の無期転換などを進める事業主には、助成措置が用意されています。国家公務員の定年も段階的に65歳へ引き上げられる制度移行の途中にあります。

多様な就業機会の提供

シルバー人材センターや副業・兼業、テレワークといった多様な働き方の裾野拡大も進んでいます。

シルバー人材センターの就業は「概ね月10日程度、または週20時間を超えない」業務を扱ってきましたが、令和8年1月末までに761地域で就業時間の要件緩和が行われ、より柔軟な働き方に対応できるようになりました。

副業・兼業についても、公益財団法人 産業雇用安定センターが中高年齢者のキャリアや能力活用を希望する企業とのマッチングを担うモデル事業を実施しています。テレワークの導入支援も継続され、通勤負担を減らしながら働き続けたいシニアの選択肢が広がってきました。

エイジフレンドリー補助金や、令和8年2月に公表された「高年齢者の労働災害防止のための指針」など、安全に働き続けられる環境整備も並行して進んでいます。

齊藤 慧
監修者齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ

【元記者の視点】106万円の壁撤廃が示す国のメッセージ

本記事の通り、国民年金と厚生年金を合わせて「月15万円以上」を受け取れる人の割合は、受給者全体の中で過半数に届いていません。

その一方で、65歳以上の就業者数は22年連続で増え、65〜69歳では半数以上が働き続ける時代になりました。70歳までの就業機会確保が努力義務化され、教育訓練休暇給付金やリ・スキリング等教育訓練支援融資、シルバー人材センターの就業時間要件緩和など、長く働き続けるための制度も細かく整えられてきています。

これらの動きから読み取れるのは、「基礎年金の水準だけで全員の老後を守り切るのは難しい。だからこそ長く働ける環境を国として整えるので、健康と意欲があるうちは第二の年金の上乗せ(就業収入)を自分で積み上げてほしい」という国側のメッセージだと感じます。

早い段階からねんきん定期便を開いて加入期間と見込み額を把握したうえで、いつまで・どんな形で働き続けるかを配偶者と一緒に描いてみる。この視点を持てるかどうかが、不確実な時代における老後の安心を大きく左右していきます。

まとめにかえて

公的年金だけで不自由なく暮らせる世帯は、全体で見るとごく一部にとどまるのが実態です。国民年金と厚生年金を合わせて月15万円以上を受給している人も、全体の半数には届いていません。

一方で国側は、「年齢に関わりなく希望に応じて働ける環境」を整える方向にはっきりと舵を切ってきました。65歳以上の就業者数と就業率が伸び続けているのは、健康寿命の延びと制度整備が同時進行してきた結果です。

まずは手元のねんきん定期便やねんきんネットで、自分と配偶者の加入月数と将来の見込み額を確かめてみてください。そのうえで、どのタイミングまで、どんな働き方で就業を続けるかを言葉にしていくと、不確実な老後を守り抜くための輪郭がぐっと具体的になっていきます。

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