この記事はここがポイント
- 2026年度、厚生年金平均15万289円、月30万円超受給者は0.12%。
- 年金はマクロ経済スライドで維持、保険料率は2017年18.3%で固定。
- 公的年金のみで生活は41.3%、高齢者世帯の52.1%が生活苦。
2026年度は物価や賃金の上昇を反映し、公的年金の支給額が引き上げられましたが、厚生年金の平均受給額や受給者の分布を見ると、高額の年金を受け取っている人はごく一部に限られます。
「年金制度は破綻する」「保険料は上がり続ける」「年金は元が取れない」といった話を耳にする機会もありますが、制度の仕組みを正しく理解することが大切です。
本記事では、2026年度の年金額や厚生年金の受給実態に加え、年金制度について誤解されやすいポイントを分かりやすく解説します。
2026年度の年金額はどれくらい?標準的な夫婦世帯は月額23万7279円
令和8年度の年金額の例
厚生労働省は2026年度の年金額改定を公表しました。
▼令和8年度 年金額の例(月額)
- 国民年金(満額・1人分):7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(標準的な夫婦世帯):23万7279円(前年度比+4495円)
※厚生年金は、平均的な収入(平均標準報酬額45.5万円)で40年間就業した夫と、専業主婦の基礎年金を合算したモデルケースです。
物価や賃金の変動を反映した結果、2026年度は年金額が引き上げられました。
厚生年金で月30万円以上受給する人の割合は?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金を含めた厚生年金受給者全体の平均月額は15万289円です。
受給額の割合を見ると、次のようになっています。
厚生年金の受給額ごとの割合をチェック
厚生年金の受給額
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
とくに注目したいのが、月30万円以上受給している人の割合です。
該当する人は全体の0.12%で、1000人に1人強という非常に少ない水準となっています。
平均受給額がおよそ15万円であることを踏まえると、月30万円以上の厚生年金を受け取るケースはごく一部に限られていることが分かります。
年金収入だけで老後を暮らす人は約4割という現状
年金は老後の生活を支える重要な収入源ですが、実際には年金だけで生活している世帯ばかりではありません。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給だけで家計を賄っている世帯は全体の41.3%でした。
また、厚生労働省の同調査では、高齢者世帯の52.1%が生活について「大変苦しい」「やや苦しい」と回答しています。
一方、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は6.2%にとどまり、老後の生活にゆとりを感じている世帯は少数派となっています。
こうした結果からも、公的年金は老後の生活を支える重要な基盤である一方、多くの世帯では年金以外の収入や資産を活用しながら家計を維持している実態がうかがえます。
なお、「年金制度はいずれ破綻する」「保険料は今後も上がり続ける」「年金は元が取れない」といった声を耳にすることも少なくありません。
そこで次に、年金制度についてとくによく見られる3つの誤解について、制度の仕組みや最新のデータをもとに確認していきましょう。
年金制度でよくある3つの誤解
年金制度については、誤解されやすい点も少なくありません。
ここでは代表的な3つを見ていきましょう。
「年金制度はいずれ破綻する」は本当?
日本の公的年金には、「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されています。
これは、少子高齢化や平均寿命の伸びなどを考慮しながら、年金給付の水準を自動的に調整する制度です。
マクロ経済スライドを導入
あらかじめ財政のバランスを維持する仕組みが組み込まれているため、制度そのものが突然機能しなくなることを前提とした制度ではありません。
そのため、「破綻するかどうか」ではなく、どのような給付水準を維持していくかという点が重要になります。
「破綻はしない」からといって「安心」と一概には言えません。マクロ経済スライドにより、将来的に実質的な給付水準が緩やかに抑えられていく可能性はあります。公的年金を「老後の土台」として確保したうえで、足りない分をNISAやiDeCoなどで補っていく「組み合わせ」の意識が大切です。
年金保険料は今後も上がり続ける?
厚生年金の保険料率は、2017年に18.3%で固定されており、制度上際限なく引き上げられる仕組みにはなっていません。
働く人が増えている
また、女性や高齢者の就労が進んだことで保険料収入が増加し、積立金残高は想定より約70兆円多くなる見通しとなっています。
積立金残高は約70兆円を上回る
このため、「保険料だけが増え続ける」という単純な構図ではないことも理解しておきたいポイントです。
「年金は元が取れない」は正しい?
公的年金は、老後資金を積み立てるためだけの制度ではなく、以下を含めた社会保険制度です。
- 老齢年金(長生きリスクへの備え)
- 障害年金(病気やけがへの保障)
- 遺族年金(家族の生活保障)
世代と世代の支えあい
さらに、所得再分配機能によって、現役時代の収入差ほど受給額に大きな差が生じない仕組みとなっています。
公的年金の所得再分配機能
そのため、「支払った保険料より受給額が多いか少ないか」という視点だけでは、公的年金制度の役割を十分に評価することはできません。
損得で語られがちな年金ですが、基礎年金の半分には「国からの税金」が投入されています。さらに、現役時代に払った保険料は全額税金控除の対象になるため、節税メリットも含めて考えると、民間商品では実現できないほど手厚い制度と言えます。
できることから一歩ずつ始めよう
本記事では、2026年度の年金額や厚生年金の受給実態に加え、年金制度について誤解されやすいポイントを解説しました。
2026年度は年金額が引き上げられましたが、厚生年金の平均受給額は約15万円であり、月30万円以上を受給している人は全体の0.12%と、ごく限られていることがわかりました。
「年金制度はいずれ破綻する」「保険料は際限なく上がり続ける」「年金は元が取れない」といった見方もありますが、公的年金には財政の安定を図る仕組みや、老齢年金だけでなく障害年金・遺族年金を含めた社会保障としての役割があります。
制度の一部だけを切り取った情報ではなく、公的年金の全体像を理解したうえで、自身の見込み受給額や老後の資金計画について早めに確認・準備していくことが大切です。
