この記事はここがポイント
- 国民年金の平均受給額は月5万9310円、厚生年金は月15万289円
- 65歳以上の無職夫婦世帯は月約4万2000円、単身世帯は月約3万円の家計赤字
- 国民年金だけの夫が亡くなっても、遺族基礎年金は子のある配偶者または子が受給対象
ふつうの人の1カ月の「年金額」は国民年金で平均5万9310円、厚生年金で15万289円。生活費は平均でも赤字になる
老後の不安の中でも、多くを占めがちな「年金」。自分はいくらもらえるのか、みんなどれくらいで老後生活しているのか、もしも一人になったら…といった不安を抱える人は少なくないでしょう。
本記事では、編集の現場で読者の関心が高かったポイントを軸に、公的年金のしくみと実際の平均受給額、シニア世帯の家計収支、そして「もしものとき」に家族が受け取れる遺族年金まで、もと銀行員の筆者が解説します。
公的年金の基本的なしくみ
日本の公的年金は「2階建て」にたとえられます。
厚生年金と国民年金の仕組み
1階は20歳以上のすべての人が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」、2階は会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。自営業やフリーランスの方は1階が中心になります。つまり、どのような働き方をしてきたかで、受け取る年金の姿は変わってきます。
【厚生年金と国民年金】平均受給額はいくら?
では、実際の平均額はどのくらいでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均の年金月額は次のとおりです。
国民年金の月額
厚生年金月額
- 厚生年金:全体15万289円(男性16万9967円/女性11万1413円)
- 国民年金:全体5万9310円(男性6万1595円/女性5万7582円)
厚生年金では男女で6万円ほどの差があります。これは、働き方や賃金、加入期間の違いが反映されるためです。平均だけでなく、加入歴による個人差が大きい点もおさえておきたいところです。
65歳以上・無職夫婦世帯の1カ月の消費支出は26万3979円。赤字は約4万円に
受け取る額がわかったら、次は「暮らしていけるのか」です。総務省の家計調査(2025年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の毎月の家計は次のようになっています。
- 実収入:25万4395円(うち社会保障給付22万8614円)
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
- 毎月の赤字:およそ4万2000円
収入の約9割を年金などの社会保障給付が占め、それでも毎月4万円ほどの赤字です。不足分は貯蓄から取り崩して補うことになります。まずはご自身の「毎月いくら足りないのか」を把握することが出発点です。
65歳以上・単身世帯の1カ月の消費支出は14万8445円。赤字は約万円に
単身世帯もみておきましょう。同じ家計調査(2025年)によると、次のとおりです。
- 実収入:13万1456円(うち社会保障給付12万212円)
- 消費支出:14万8445円
- 非消費支出:1万2990円
- 毎月の赤字:およそ3万円
収入も支出も夫婦世帯より小さくなりますが、それでも毎月およそ3万円の赤字です。
国民年金だけの夫が亡くなったら、遺族年金を受けられるのは生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」
老後の備えを考えるうえで、「自分にもしものことがあったとき、家族に何を残せるのか」「配偶者に何かあったとき、自分は生活できるか」も早めに知っておきたいところです。ここでは遺族年金の基本を確認します。
遺族年金には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。
そもそも遺族年金で知っておきたい注意点
まず前提として知っておきたいのは、遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに亡くなった方が受給要件を満たしている必要があります。
遺族基礎年金の受給要件には、国民年金の被保険者である間に死亡したときや、老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したときなど、遺族厚生年金の場合には、厚生年金保険の被保険者である間に死亡したときや、厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したときなどの要件がありますので、こちらの要件の確認をすることが大切です。
国民年金だけの夫が亡くなったら遺族基礎年金を受け取れる人
亡くなった方が上記の要件を満たしていた上で、遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」、または「子」です。ここでいう「子」※とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある方などを指します(※条件あり)。
たとえば、国民年金だけに加入していた夫が亡くなった場合、対象となる子がいる妻であれば、要件を満たせば遺族基礎年金を受け取れます。一方、対象となる子がいない妻は、遺族基礎年金の対象にはなりません。
ただし、寡婦年金や死亡一時金など、別の給付を受けられる場合があります。要件は個々の加入状況によって変わるため、詳しくは年金事務所に確認しておくと安心です。
なお、会社員だった方(厚生年金の加入者)が亡くなった場合は、生計を維持されていた遺族に要件を満たせば遺族厚生年金が支給されます。
どの年金の対象になるかは働き方によって変わるため、ご自身とご家族のケースを一度整理しておきたいところです。
【元銀行員がアドバイス】老後資金は世帯で考えよう
今回見てきたように、老後の備えは「自分ひとり」ではなく「世帯」で考えるべきでしょう。どちらかに万一のことがあったとき、遺族年金の対象になるのか、いくら受け取れるのかは、家庭によって大きく変わります。
まずは、ご自身が加入している年金の種類と、遺族年金の受給要件を確認しておきましょう。あわせて、保険や預貯金、資産のありかを一覧にして、家族と共有しておくこと。残される側の生活を数字で見通しておくことが、いざというときの支えになります。元気なうちに、世帯全体のお金を一度整理しておきたいところです。
参考資料
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。

金融や年金に関する記事を、これまで数えきれないほど編集してきました。読者の方が多く興味をもたれているのが、「自分は結局いくら年金をもらえるのか」というものです。制度の解説を扱うたびに感じるのは、老後の不安の多くが「制度のリアルな数字を知らないこと」から生まれている、ということです。平均額や家計収支といった具体的な数字を目にすると、「思ったより厳しい」と受け止める方もいれば、「意外となんとかなりそう」と胸をなでおろす方もいます。いずれにせよ、ぼんやりとした不安が「対策できる課題」に変わるのは、正確な数字を知った瞬間です。