日銀が政策金利を約30年ぶりの水準となる1%に引き上げるなど、日本の金利環境が大きな転換期を迎えるなか、個人投資家の間で「債券投資」への注目が一段と高まっています。
こうした環境下で、メガバンクの一角であるみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が、個人投資家向けに新たな「劣後債(れつごさい)」の発行を準備していることが明らかになりました。条件決定は7月2日の予定です。
提示された仮条件を見ると、足元の金利上昇の影響がくっきりと表れています。
今回は、みずほFGが提示した新たな社債の仮条件の内容や、投資する前に必ず知っておくべき劣後債のリスク、そして直近で話題となったソフトバンクグループ債との違いを分かりやすく解説します。
そもそも「劣後債」とは?普通社債との違い
具体的な条件を見る前に、まずは今回登場した「劣後債(劣後特約付社債)」という仕組みについて簡単におさらいしておきましょう。
劣後債とは、一言で言えば「普通の社債よりも、リスクを引き受ける分、高い利回りが期待できる債券」のことです。
投資家にとっては普通の社債よりもリスクが高い商品となるため、その見返りとして高い金利(利率)が設定されるのが特徴です。
投資する前に必ず押さえる!劣後債の3つのリスクと注意点
高い利回りは魅力的ですが、裏側にある「リスク」を正しく理解しておくことが債券投資では最も大切です。
劣後債を検討する際は、以下の3つの注意点を必ず頭に入れておきましょう。
万が一のときの「弁済順位が低い」
発行体(みずほFG)が破産などの法的倒産手続きを行った場合、元本や利息が投資家に返済される順位(弁済順位)が、普通の社債や一般の借入金よりも後回し(劣後)になります。
つまり、普通の社債を保有している人たちにお金が返ってきた後、それでも資産が残っていれば返してもらえる、という仕組みです。
メガバンクならではの「実質破綻時免除特約(ベイルイン)」
金融機関が発行する劣後債には、非常に重要な特約がついています。
同債では、仮に発行体であるみずほFGの自己資本比率が著しく低下し、金融庁などから「このままでは実質破綻する」と認定された場合、この劣後債の元本や利息を支払う義務が永久に免除(カット)されるリスクがあります。
国が税金(公的資金)を投入して銀行を救う前に、まずは劣後債の投資家に身代わり(損失)になってもらうというルールです。
途中で満期が変わる?「期限前償還条項」の仕組み
今回準備されている券種の一つ(第35回債)には、5年後に発行体の都合で前倒し償還できる特約(10NC5)がついています。
国際的な銀行の規制上、5年が経った最初のタイミングで前倒し償還されるのが市場の“既定路線(慣例)”となっており、プロの間では「実質5年債」として扱われます。
投資家としては「5年で返ってくるのが基本スケジュール」と捉えつつも、世の中の金利状況によってはその予定が後ろにズレ込む可能性(コールスキップ)があるという、変則的な満期の仕組みを理解しておく必要があります。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
