この記事はここがポイント
- 7月個人向け国債の金利は魅力的な水準だが定期預金金利との比較検討が重要
- 減らしたくない資金や初めての資産運用に適しているが”インフレ”には注意
「個人向け国債は買ってはいけない」ネットやSNSの口コミでそんな言葉を目にして、購入をためらっている人もいるのではないでしょうか。
確かに、個人の目的や資金の使い道によっては「合わない」と感じることもある商品です。
私が銀行員だった当時は、超低金利の真っ只中でした。
窓口に定期預金を預け入れに来られたお客様に、少しでも金利の高いものを…と個人向け国債をご紹介したことが何度もあります。
しかし当時は、「定期預金と大して金利も変わらないし、わざわざ国債にしなくても定期預金のほうが安心だからいいわ」と仰る方がほとんどでした。
あれから環境は大きく変わりました。日銀の利上げ方針もあり、日本には本格的に「金利のある世界」が戻りつつあります。
かつての「定期預金で十分」という常識は揺らぎ、個人向け国債の金利メリットは急速に高まっているのです。
毎月更新される金利への関心が高まる中、2026年7月3日、財務省より最新の個人向け国債の発行条件が発表されました。
今回は、気になる最新の金利情報をお届けしながら、元銀行員の目線で「買ってはいけない」と言われる理由の真相と、個人向け国債が持つ確かなメリットを両面からわかりやすく整理して解説します。
個人向け国債とは? はじめての資産運用に向いている「6つのポイント」
「投資は怖いけれど、定期預金のままではもったいない」
個人向け国債は、そんな方のはじめての資産運用に適した商品です。
その理由は、以下の6つのポイントにあります。
個人向け国債とは
満期まで保有すれば、国が元本を保証
満期まで保有すれば、投資した金額(元本)がそのまま戻ってきます。
国が発行だから安心
日本国政府が責任を持って元本と利子を支払うため、極めて安全性の高い金融商品です。
1万円から購入可能
まとまった資金がなくても、1万円単位で少額から無理なく始められます。
0.05%(年率) の最低金利保証
万が一、世の中の金利が大きく下がっても「年0.05%」の利子は約束されています。
年12回(毎月) 発行
毎月新しい国債が発行されるため、自分の買いたいタイミングでいつでも購入できます。
中途換金も1万円からOK
発行から1年経過すれば、1万円単位で引き出し(換金)できるため柔軟性もあります。
2026年7月募集の個人向け国債の金利は?
まずは最新の金利水準を確認しましょう。
個人向け国債の金利
2026年7月募集分の個人向け国債には3つのタイプがあり、それぞれ以下の金利が設定されています。
- 変動10年:年1.80%(半年ごとに適用利率が見直される)
- 固定5年:年1.95%(満期まで金利固定)
- 固定3年:年1.56%(満期まで金利固定)
長らく「金利のない時代」が続いていたことを考えると、いずれも注目に値する水準といえます。
個人向け国債とメガバンク定期預金の金利比較
個人向け国債の金利水準を、メガバンクの定期預金金利と比べてみましょう。
現在のメガバンクの定期預金金利は、10年物が0.9%程度、5年物が0.7%程度、3年物が0.6%程度です。
個人向け国債との差は以下のようになります。
- 10年物:個人向け国債(変動)が約0.9%上回る
- 5年物:個人向け国債(固定)が約1.25%上回る
- 3年物:個人向け国債(固定)が約0.96%上回る
数字だけ見れば個人向け国債が有利に映ります。
しかし、金融機関が行う定期預金キャンペーンで、期間限定の優遇金利を活用すると個人向け国債の金利を上回るケースも出てきています。
「国債の方が常に有利」とは言い切れない局面もあるため、最新情報を確認して比較することをおすすめします。
「個人向け国債は買ってはいけない」と言われる3つの理由
個人向け国債はリスクが低い商品として知られていますが、「自分には向かない」と感じる方がいるのも事実です。
その理由として挙げられる主なポイントを整理します。
①インフレに負けるリスクがある
近年は物価高が続いており、インフレ傾向にあるといえます。
個人向け国債は安全性の高い商品ですが、物価上昇率(インフレ率)が金利を上回ると、受け取る利子の金額は変わらなくても、実質的な資産の価値は目減りします。
特に固定金利タイプ(固定3年・固定5年)は、金利上昇が続く局面では「もっと高い金利で運用できたかもしれない」というリスクが伴います。
②購入後1年間は換金できない
個人向け国債は、購入から1年間は原則として中途換金ができません。
1年が経過した後であれば1万円単位での換金が可能ですが、その際は直近2回分の利子相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれます。
近いうちに使う予定のある資金や、急な出費に備えておきたい生活費の一部には向かない商品です。
「もしかしたら早めに使うかもしれない」という資金は、いつでも引き出せる預金で管理しておく方が安心です。
③資産を大きく増やすのは難しい
個人向け国債は元本が保証されており、安定した利子収入が得られます。
ただし、株式や投資信託のように価格の値上がりによる利益(キャピタルゲイン)は期待できません。
老後資金をしっかり増やしたい、運用でまとまった資産をつくりたいという目的には、別の手段も組み合わせた方がよいでしょう。
それでも「買う価値がある」と感じる3つのメリット
デメリットを踏まえたうえで、個人向け国債ならではの強みも確認しておきましょう。
①元本割れリスクがほぼない
個人向け国債は国が発行する債券で、満期まで保有すれば元本は保証されています。
株式や投資信託と比べて価格変動リスクがなく、「絶対に減らしたくない資金」の置き場として安心感があります。
②変動10年は金利上昇の恩恵を受けやすい
変動金利タイプの10年物は、半年ごとに金利が見直されます。
「これからも金利が上がるかもしれない」という局面では、市場金利の上昇に連動して受け取れる利子が増える可能性があります。
また、下限金利として年0.05%が保証されているため、極端に金利が下がっても最低限の利子は受け取れます。
③1万円から購入できる手軽さ
1万円から購入できるため、まとまった資金がなくても始めやすいのも特徴のひとつです。
安全性を重視しつつ、銀行預金より少しでも高い金利を得たいという方にとっては、検討する価値がある選択肢といえます。
「買ってはいけない」のではなく、「自分に合っているか」で判断を
個人向け国債が「買ってはいけない」と言われることがあるのは、資産を大きく増やすことへの期待や、流動性の高さを求める方にとって期待に応えにくい場面があるからです。
一方で、元本割れのリスクを抑えながら預金よりも高い金利を受け取りたい方には、合っている選択肢になり得ます。
2026年7月募集分の金利は、変動10年が1.80%、固定5年が1.95%、固定3年が1.56%と、比較的高い水準にあります。
ただし、金融機関の定期預金キャンペーンを活用すると個人向け国債の金利を上回るケースも出てきているため、比較してから判断することをおすすめします。
「満期まで使わない資金かどうか」「インフレに備えた別の備えがあるか」を確認したうえで、ご自身の目的に合った使い方を検討してみてはいかがでしょうか。
【免責事項】
- 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
