ROEとROA・ROICの違いとは?「誰の視点で見るか」で使い分ける方法を元機関投資家が解説
vectorfusionart/Shutterstock.com
執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
15:30
ROEとROA・ROICの違いとは?「誰の視点で見るか」で使い分ける方法を元機関投資家が解説
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この記事はここがポイント

  • ROEは株主、ROAは会社全体、ROICは事業の視点で利益効率を測る指標
  • ROEは借金で水増しされる弱点があり、ROAやROICと併用して真の稼ぐ力を把握する重要性
  • 「高ROE・低ROA」は借金頼み、「ROE≒ROA」は無借金経営と判断する目安

「ROE・ROA・ROIC」——似たような経営指標に関する、いわゆる「アルファベット3兄弟」に、頭が混乱した経験はないでしょうか。どれも「利益÷資本」で計算する収益性の指標ですが、分母が違うだけで、見ている景色はまるで変わります。ROEの基本は「ROEとは?自己資本利益率の意味・計算式・目安からROA・ROICとの違い・デュポン分解まで」で解説していますので、本記事では、この3つの違いと使い分けを、「誰の視点で見るか」という切り口でみていきましょう。

3つの共通点と、決定的な違い——分母

まず、3つに共通するのは「利益 ÷ 資本」で稼ぐ効率を測る、という点です。違うのは分母、つまり「どの資本で割るか」だけ。ですが、この分母の違いこそが、指標の意味を決定的に変えます。

  • ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷ 自己資本
  • ROA(総資産利益率)=当期純利益 ÷ 総資産
  • ROIC(投下資本利益率)=税引後営業利益(NOPAT)÷ 投下資本(有利子負債+自己資本)

自己資本は「株主のお金」、総資産は「株主のお金+借金の全部」、投下資本は「事業に投じたお金(借金+自己資本)」。分母が変わると、「誰の立場で稼ぐ効率を見ているか」が変わるのです。順に見ていきましょう。

ROE——株主の視点

ROEは、分母が自己資本、つまり株主が出したお金です。だからROEは「株主の視点」で、預けたお金がどれだけの利益を生んだかを測ります。株主にとって最も直接的な"通信簿"であり、株価評価(PBR=PER×ROE)にも直結するため、投資家が最も重視する指標です。目安の考え方は「ROEの目安は何%?業種別平均と『8%の壁』」で解説しています。

ただしROEには弱点があります。分母が自己資本だけなので、借金を増やして自己資本を相対的に小さくすると、見かけのROEを上げられてしまう。この「レバレッジで水増しできる」性質が、次のROA・ROICと併せて見るべき理由になります。

ROA——会社全体の資産効率

ROAは、分母が総資産(自己資本+負債)です。つまり「会社が使っている資産の全部で、どれだけ効率よく利益を生んだか」を見る、会社全体の視点の指標です。借金も含めた全資産が対象なので、ROEのように借金で水増しすることができません。その意味で、ROAは会社の「素の資産効率」を映します。

だからこそ、ROEとROAを並べると多くのことがわかります。ROEが高いのにROAが低ければ、その差は借金(レバレッジ)によるもの。逆にROEとROAが近ければ、借金にほとんど頼らず稼いでいる、ということです。

ROIC——事業そのものの稼ぐ力

ROICは、分母が投下資本(有利子負債+自己資本)、分子が税引後営業利益(NOPAT)です。事業に投じたお金が、本業でどれだけ利益を生んだかを測る「事業の視点」の指標です。株主視点のROEや、会社全体のROAに対し、ROICは資本構成(借金と自己資本の割合)の影響を受けにくく、事業そのものの実力を映します。

ROICの真価は、資本コスト(WACC)と比べたときに出ます。ROICがWACCを上回っていれば、その事業は資本コストを超える価値を生んでいる。東京証券取引所が資本効率経営を求めるなか、「ROIC>WACC」は価値創造の合言葉になっています。

3つの関係——ROE=ROA×財務レバレッジ

3つはバラバラではなく、きれいにつながっています。デュポン分解を思い出すと、ROE=ROA×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)。つまりROEは、会社全体の資産効率(ROA)に、借金というてこ(レバレッジ)を掛けたものなのです。分解の詳しい読み方は「デュポン分解とは?ROEを3つに分解して『稼ぐ力の中身』を見抜く方法」で解説しています。

この関係を頭に入れると、3指標の役割分担が見えてきます。ROEで株主リターンを見て、ROAでレバレッジ抜きの素の効率を確かめ、ROICで事業が資本コストを超えているかを問う。3つを重ねることで、稼ぐ力を立体的に読めるのです。

使い分けと「高ROE・低ROA」の罠

実例で見ると、違いがはっきりします。トヨタ自動車はROEが10.1%ですが、巨大な金融事業(自動車ローン・リース)で総資産が膨らむため、ROA(総資産利益率)は低く出ます(「トヨタ自動車のROEはようやく10.1%」を参照のこと )。ROEを約2.6倍の財務レバレッジが支えている構造です。

反対に、キーエンスや村田製作所は自己資本比率が極めて高く(村田は約85%、キーエンスは約95%)、借金にほとんど頼りません。そのためROEとROAがほぼ重なり、レバレッジという伸びしろを自ら封印しています(「キーエンスのROEは13.5%!超高収益なのに、なぜROEは13%台なのか」 、「村田製作所、ROE8.8%——『利益率の低下』と『健全すぎる財務』」を参照のこと)。「高ROE・低ROA」なら借金頼みを疑い、「ROE≒ROA」なら無借金経営、と読み分けられます。

元機関投資家イズミダの視点:3兄弟は「立場の違い」で使い分ける

私がアナリストとして企業を見るとき、ROE・ROA・ROICは、どれか一つを選ぶものではなく、立場を変えて同じ会社を眺める3つのレンズだと考えてきました。株主の立場ならROE、会社全体の効率を疑うならROA、事業そのものの実力を測るならROIC。とくにROEは便利ですが、借金で膨らませられる弱点があるからこそ、ROAで素の効率を、ROICで資本コスト超えを確かめる——この重ね合わせが効きます。

高いROEに飛びつく前に、それがROAに支えられた本物か、レバレッジで膨らんだ見かけかを、必ず確かめる。「経営効率アルファベット3兄弟」を使い分けられるようになると、会社の稼ぐ力の解像度が一段上がります。もっとも、最適な水準は業種で変わりますので、数字は同業と比べて読むことが肝心です。

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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