ROEとは?自己資本利益率の意味・計算式・目安から、ROA・ROICとの違い・デュポン分解まで元機関投資家が解説
Sichon/Shutterstock.com
執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
13:58
ROEとは?自己資本利益率の意味・計算式・目安から、ROA・ROICとの違い・デュポン分解まで元機関投資家が解説
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この記事はここがポイント

  • ROEは高さでなく、デュポン分解で収益性・効率性・財務レバレッジの「中身」を分析する指標
  • 自己資本利益率のROEは当期純利益÷自己資本で計算、一般に10%以上が優良企業の目安
  • ROEは株主資本コスト(約8%)超過で評価され、PBR=PER×ROEで株価に直結

「ROEの高い会社を選べばいい」——株式投資の入り口で、そう教わった方は多いかもしれません。たしかにROEは、会社の"稼ぐ力"を手早く測れる、とても便利な指標です。ただ、私が機関投資家として数字を見てきて痛感したのは、ROEは高さだけを見ると足をすくわれる、ということです。大事なのは、その高さが"どこから来ているのか"。本記事では、ROEの意味・計算式・目安から、ROAやROICとの違い、そして中身を見抜く「デュポン分解」までを、順にみていきましょう。

ROEとは——株主のお金で、どれだけ稼いだか

ROEは「Return On Equity」の略で、日本語では「自己資本利益率」といいます。計算式はシンプルです。

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

自己資本とは、株主が出したお金や、これまで会社がためてきた利益など、返済のいらない「株主のお金」です。ROEは、その株主のお金を使って、1年でどれだけの利益(当期純利益)を生み出したかを示します。たとえば自己資本100億円の会社が10億円の純利益を上げれば、ROEは10%。株主が預けた100円につき、1年で10円を稼いだ、というイメージです。つまりROEは「株主の視点」で会社の稼ぐ力を測る、収益性の代表的な指標なのです。

ROEの目安は何%?業種で大きく変わる

「何%あれば良いのか」は、多くの方が気にするところです。一般的には、ROEが10%以上あれば優良企業の一つの目安、とされます。日本企業は長らく一桁が多く、二桁に乗せていれば、まず合格ラインと見てよいでしょう。

ただし、ここで注意が要ります。ROEの適正水準は、業種によって大きく違うということです。海運業や保険業、鉱業などは13%を超える高水準になりやすい一方、パルプ・紙や繊維といった素材産業は3〜4%台にとどまりがちです。工場や設備に多額の投資が必要な業種は、自己資本が厚くなり利益率も低めになりやすいため、ROEはどうしても低く出ます。ですから「何%だから良い」「何%だから悪い」と一律で判断せず、必ず同じ業種のなかで比べること。ROEは、同業比較でこそ意味を持つ指標です。ROEの目安の考え方や業種別の水準感は「ROEの目安は何%?業種別平均と『8%の壁』」で詳しく解説しています。

ROEとROA・ROICの違い——「誰の視点」で見るか

ROEとよく一緒に語られるのが、ROA(総資産利益率)とROIC(投下資本利益率)です。3つとも「利益÷資本」という形は同じですが、分母が違うため、見ている「視点」が根本的に異なります。

ROEは、分母が自己資本で「株主の視点」。ROAは、分母が総資産(自己資本+負債)で「会社全体の資産をどれだけ効率よく使えたか」を見ます。ROICは、税引後営業利益÷投下資本で計算し、「事業そのものの稼ぐ力」を測ります。

ここで大切な読み方があります。ROEが高くても、ROAが低い会社には注意が必要です。それは、借入(レバレッジ)を効かせてROEを押し上げている可能性があるからです。株主視点のROEだけでなく、会社全体を見るROA、事業を見るROICと合わせて眺めることで、稼ぐ力の実像がはっきりします。ROE・ROA・ROICの違いと使い分けは「ROEとROA・ROICの違いとは?『誰の視点で見るか』で使い分ける」で詳しく解説しています。

デュポン分解でROEの"中身"を見る

ROEを本当に理解するカギが、「デュポン分解」です。これは1920年代に米化学大手デュポン社が社内管理のために考案した手法で、ROEを次の3つの掛け算に分解します。

ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

売上高当期純利益率は「売上のうちどれだけ利益に残ったか(収益性)」、総資産回転率は「資産をどれだけ効率よく売上に変えたか(効率性)」、財務レバレッジは「自己資本の何倍の資産を動かしているか(レバレッジ)」を表します。ちなみに、最初の2つを掛けるとROA(総資産利益率)になるので、「ROE=ROA×財務レバレッジ」とも書けます。

なぜ分解するのか。それは、同じ「ROE10%」でも中身がまるで違うからです。本業の利益率が高くて達成した10%と、借金を膨らませてレバレッジで押し上げた10%とでは、質が正反対です。前者は強く、後者は財務リスクを抱えた「砂上の楼閣」になりがちです。ROEの高さを見たら、必ずこの3分解で「どの要素が効いているか」を確かめる——これが、私が現場で何度も繰り返してきた読み方です。

デュポン分解の詳しい計算例や、同じROEでも中身が違うことの見抜き方は「デュポン分解とは?ROEを3つに分解して『稼ぐ力の中身』を見抜く方法」で解説しています。

ROEを高める方法と、その落とし穴

デュポン分解が分かれば、ROEを高める道筋も見えてきます。方法は3つ。

①本業の利益率を上げる(売上高当期純利益率の改善)
②資産を効率よく使う(総資産回転率の向上、遊休資産の圧縮)
③適度に借入を活用する(財務レバレッジ)

このうち、王道はやはり①と②、つまり本業の収益性と資産効率を高めることです。③のレバレッジは手っ取り早くROEを上げられますが、借金への依存を強め、財務の安全性を損ないます。自己資本を自社株買いで圧縮してROEを上げる手もありますが、これも度を越せば同じこと。ROEは「高ければ高いほど良い」のではなく、その中身が健全かどうかが問われます。

ROEを高める具体的な方法と落とし穴は「ROEを高める方法とは?デュポン分解でわかる3つの道と落とし穴」で詳しく解説しています。

株価・資本コストとの関係——PBR=PER×ROE

最後に、ROEが株価とどうつながるかです。ここが投資家にとっては要になります。まず、ROEが株主資本コスト(株主が期待する最低限のリターン、一般に8%前後とされます)を上回っていれば、その会社は株主の期待を超える価値を生んでいる、と評価できます。ROEが二桁の目安とされるのも、この資本コストを超える水準だからです。

そして、株価の割安・割高を測るPBR(株価純資産倍率)は、「PBR=PER×ROE」という関係で結ばれています。ROEが高い会社ほど、理屈のうえではPBRも高く評価されやすい。東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を求め、いわゆる「ROE経営」が広がっているのも、ROEが企業価値と株価に直結するからにほかなりません。

元機関投資家イズミダの視点:ROEは「高さ」より「中身」で読む

私がアナリストとしてROEを見るとき、いちばん大切にしてきたのは、「高さ」ではなく「中身」で読む、という姿勢です。

ROEが高いというだけで飛びつくと、借金でかさ上げされた見せかけの高ROEをつかむことがあります。逆に、いまはROEが低くても、本業の利益率が改善し始めた会社には、大きな伸びしろが眠っていることもあります。デュポン分解は、その見極めのための、いわば聴診器です。

ROEという一つの数字も、そのまま鵜呑みにするのではなく、3つに分解し、ROA・ROICと見比べ、同業と照らし、資本コストを超えているかを問います。この一手間をかけられるかどうかが、会社の実力を見抜けるかの分かれ目だと、私は考えています。もっとも、業種や局面で最適な水準は変わりますので、数字を一つだけで判断しないことが肝心です。

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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