この記事はここがポイント
- 医療費控除は年間10万円以下でも適用、総所得金額等200万円未満なら「5%」を基準。
- 保険金は対応医療費にのみ適用し、超過分を他の医療費に充当することは不可。
- 「セルフメディケーション税制」では1万2000円超の市販薬購入費が控除対象。
近年、物価高の影響で家計の見直しに注目が集まっています。加えて、厚生労働省の調査でも国民医療費は増加傾向にあり、日々の医療費負担を少しでも軽くしたいと考える方は少なくありません。
近年はマイナポータルとe-Taxの連携が進み、医療費通知情報が自動入力できるようになるなど、確定申告の手間が大幅に軽減されています。来年の確定申告に向けて、秋口から早めに医療費の状況を整理しておくのがおすすめです。
病気やけがなどで医療費の負担が大きくなった年は、「医療費控除」を利用できる可能性があります。今回は、意外と見落としがちな医療費控除の仕組みと、知っておきたい3つのポイント(総所得金額等に応じた基準額、保険金受け取り時の計算方法、市販薬購入で利用できる特例制度)を解説します。
また、今年5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律案」についてまとめた記事も合わせてご確認ください。
医療費控除 「医療費が10万円未満」でも使える?
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までに、自分や「生計を一にする(日常の生活費を共にしている)」配偶者、その他の親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。 医療費控除額を所得から差し引くことで課税される所得が減り、その結果として所得税などの負担が軽くなる仕組みです(最高200万円まで)。
医療費控除とは
医療費控除というと、「年間の医療費が10万円を超えないと使えない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はこれは誤解です。 医療費控除額は、原則として次の式で計算します。
- 実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされた金額 - 10万円 = 医療費控除額
ただし、その年の「総所得金額等」が200万円未満の方は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」の金額を差し引きます。
総所得金額等とは、会社員の給与の額面年収そのものではなく、給与所得や公的年金等に係る雑所得などをもとに計算されます。そのため、年金を中心に生活しているシニア層などは、200万円未満になるケースが珍しくありません。
たとえば、65歳以上で公的年金収入が200万円、ほかの所得はなしという方の場合。 一定の条件のもと公的年金等控除額(110万円)を差し引くと、総所得金額等は90万円となります。
この場合の基準額は「90万円の5%=4万5000円」です。 仮に年間の医療費が8万円であれば、8万円-4万5000円=3万5000円が医療費控除額となります。10万円に届いていなくても利用できるため、まずはご自身の所得状況を確認してみましょう。
保険金を受け取った場合の「差し引き計算」に注意
計算式の中で少し分かりにくいのが、「保険金などで補てんされた金額」の扱いです。 民間の医療保険から受け取った入院給付金や、健康保険の高額療養費、出産育児一時金などが該当します。計算の際は「どの治療に対して受け取った保険金なのか」を対応させるのがポイントです。
【ケース1】給付金が医療費より少ない場合
- A病院:入院費10万円(医療保険の入院給付金5万円)
- B病院:歯科治療費8万円(保険金などなし)
A病院については、10万円-5万円=5万円となります。B病院の8万円と合わせると、計算上残る医療費は13万円です。基準額が10万円の方なら、13万円-10万円=3万円が医療費控除額となります。
【ケース2】給付金が医療費を上回った場合
- A病院:入院費3万円(医療保険の入院給付金5万円)
- B病院:歯科治療費8万円(保険金などなし)
この場合、医療費11万円-給付金5万円=6万円とは計算しません。A病院の給付金は、あくまでA病院の入院費を補てんするものだからです。 A病院の計算は「3万円-5万円→0円」となり、余った2万円をB病院の歯科治療費から差し引く必要はありません。したがって、B病院の8万円がそのまま計算上の医療費となります。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
