内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、現在の生活に満足している高齢者の割合は数年前と比べて減少しており、老後にゆとりを保つハードルが少しずつ上がっていることがわかります。
このような現実を前に「将来のためにしっかりと資産形成をしておかなければ」と焦る一方で、「物価の高騰や教育費でお金が飛んでいくから、投資に回す余裕なんてない!」というのが、現役世代のリアルな本音ではないでしょうか。
今回は、そんな「手元にお金は残しておきたい、でも老後も不安」というジレンマを抱える私たちが、どうすれば無理なく確実な老後資金を作れるのか、老後資産設計にiDeCoが向いている理由について考えてみたいと思います。
そもそも老後資産の準備はなぜ必要なのか?
なぜ老後生活資金の準備が必要なのでしょうか。ここからは各調査データをもとにその現状について紐解いていきましょう。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきます。
65歳以上の生活費
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(月額)
- 収入の平均:25万4,395円 (うち社会保障給付など:22万8,614円)
- 支出の平均:29万6,829円 (消費支出:26万3,979円 / 非消費支出:3万2,850円)
主な消費支出の内訳は以下の通りです。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
毎月の家計収支は赤字傾向か
月々の家計は4万2434円の赤字となっており、不足分は貯蓄を取り崩して補う必要があります。
このことから、老後生活資産のために事前の資産設計が必要となるのです。
現役世代のジレンマ「お金は貯めたい、でも支出も多い」
老後生活資産は現役世代からの積み重ねが必要となりますが、現役世代は何かとお金が必要となり、貯蓄まで気を回せないと感じる人も多いのではないでしょうか。
世代ごとの貯蓄と負債の比率を見てみましょう。
年齢階級が高くなるほど、貯蓄額が増加傾向
29歳以下
- 貯蓄額:650万円
- 負債額:1,250万円
- 年間収入:729万円
- 持家率:41.4%
30〜39歳
- 貯蓄額:898万円
- 負債額:1,838万円
- 年間収入:734万円
- 持家率:70.7%
40〜49歳
- 貯蓄額:1,314万円
- 負債額:1,445万円
- 年間収入:835万円
- 持家率:81.9%
50〜59歳
- 貯蓄額:1,798万円
- 負債額:729万円
- 年間収入:878万円
- 持家率:85.5%
60〜69歳
- 貯蓄額:2,659万円
- 負債額:270万円
- 年間収入:612万円
- 持家率:93.3%
70歳以上
- 貯蓄額:2,441万円
- 負債額:56万円
- 年間収入:427万円
- 持家率:95.5%
30代や40代は、貯蓄よりも負債の方が圧倒的に多く、実質的なマイナス状態にあります。住宅ローンや子どもの教育費などが重なり、まさに「人生で一番お金が出ていく時期」と言えます。
将来に向けたお金を取り分けることが難しいと感じるのも当然です。
このような時期はどのように資産設計を考えていけばよいのでしょうか。
「引き出せるお金」と「引き出せないお金」を強制的に分ける
そこで重要になるのが、資産の「切り分け」です。
例えばNISAや預貯金はいつでも引き出せるため、教育費や車の購入など「現役時代に使うお金(流動性の高い資産)」の準備に適しているでしょう。
しかし「いつでも引き出せる」からこそ、老後を迎える前に使ってしまうリスクも伴います。
そこで、iDeCoの最大のデメリットと言われる「原則60歳まで引き出せない」ルールを逆手にとって考えてみるのです。簡単に手を出せないお金として明確に切り分けることで、スムーズに資産設計を進めることができるのです。
もちろんすべての資産をiDeCoに入れてしまうのは、いざという時に引き出せず危険です。しかし、流動性の高い資産ばかりでも、取り崩しやすさが将来の足を引っ張る可能性もあります。
そのため、流動性の低い資産としてiDeCoをあえて持つ、ということです。
流動性の異なる資産を組み合わせて持つことが、現役世代から老後資産設計をするうえで欠かせない考え方だと言えます。
iDeCo(イデコ)とはどんな制度?
ここでiDeCo(個人型確定拠出年金)の基本ルールを整理しておきましょう。iDeCoは、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せして準備する私的年金制度です。
- すべて自分で決める:企業型とは異なり加入は任意です。申込から毎月の掛金額、運用先までご自身で管理します。
- 運用成果が将来の年金に:積み立てた掛金と運用で得た利益の合計額が、将来の給付金となります。
- 60歳まで引き出し不可:老後資金の確保を大前提としているため、原則として60歳を迎えるまでは資産を引き出すことができません。
まとめ
iDeCoは制約が多く、わかりにくいと感じてなかなか踏み出せない人も多いと聞きます。
ですが、その制約を逆手にとって「将来の資産設計のためにうまく活かす」と考えることができれば、これほど有用な制度はありません。
ぜひ、ご自身の資産設計を検討するきっかけにしてみてください。
参考資料
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みずほ銀行出身。FP2級保有。確定拠出年金の講師として全国でセミナーに登壇。フィンテック企業広報を経て、現在はLIMOで官公庁データを基に、年金や資産運用、新NISA、iDeCo等の記事を執筆。

みずほ銀行出身。FP2級保有。確定拠出年金の講師として全国でセミナーに登壇。フィンテック企業広報を経て、現在はLIMOで官公庁データを基に、年金や資産運用、新NISA、iDeCo等の記事を執筆。
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