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日銀利上げを経て株価が一服した今だからこそ確認したい、三井住友FGとみずほFGの「足元の実力」

執筆者 高原 祥子 LIMO&ファイナンス編集部記者
18:30
日銀利上げを経て株価が一服した今だからこそ確認したい、三井住友FGとみずほFGの「足元の実力」

日本銀行は6月16日の金融政策決定会合において、政策金利(無担保コールレート)を1.0%に引き上げる利上げを決定しました。事前の報道等で方向性がある程度示されていたこともあり、市場ではすでに織り込みが進んでいました。

長期金利(新発10年物国債利回り)の推移をみると、発表前の2.6%前後から、発表後は2.6%台半ばにシフト、その後は2.67~2.68%程度にまで上昇する場面も見られました。ただ、25日は状況が一変。

ホルムズ海峡での航行問題が解消されつつあるとの見方が広がり、原油価格の下落を受けてインフレ懸念が後退。米国市場で金利が低下した流れを引き継ぎ、国内でも同様の動きとなった結果、足元の長期金利は2.62%近辺で推移しています。  

株式市場におけるメガバンク株は、利上げ直後の18日に上場来高値や年初来高値を付けたものの、その後は利益確定売りなどに押され、調整を経て足元は横ばい圏での推移となっています。

もっとも、こうした短期的な一服感は見られるものの、中長期的な視点に立てば、金利水準の上昇が銀行の資金利益(利ザヤ)の拡大につながるというマクロ的な追い風の構図に変わりはありません。

今回は、業界トップの三菱UFJフィナンシャル・グループを除いた、メガバンクの実質的な「二大対決」に焦点を当てます。

高い株主還元方針を維持する三井住友フィナンシャルグループ(8316)と、次世代システムの刷新を経て基盤を固め、利益成長で巻き返しを図るみずほフィナンシャルグループ(8411)

両社の強みと現在の立ち位置を、データをもとに比較検証していきます。

2社の戦略的なアプローチと方向性の違い

国内のメガバンク業界において、三井住友FGとみずほFGは、それぞれ固有の強みを最大化させた収益拡大策を推進しています。

三井住友フィナンシャルグループ(8316)

同社の最大の特徴は、三井住友カード等に代表される決済ビジネスや証券、海外ホールセールといった非金利ビジネスにおける強固な収益基盤です。

2026年3月期通期においても、業界トップクラスの規模を誇る1兆5,829億円の当期純利益を計上。「累進的配当」の方針を堅持し、安定的な高い収益力と株主還元戦略を両立する姿勢を維持しています。  

みずほフィナンシャルグループ(8411)

長年にわたり注力してきたシステム刷新をはじめとする構造改革が実を結び、足元の業績を大きく押し上げています。2026年3月期通期の純利益は1兆2,486億円をマークし、対前期比で41.0%という大幅な増益を達成しました。

利益の伸び率は主要メガバンクのなかでも相対的に高く、同社として初めて純利益1兆円の規模に到達。金利上昇局面を捉えた預貸金利回りの着実な改善も、利益成長を牽引する重要な要因となっています。

財務指標の徹底比較

両社の決算データおよび25日の終値をもとに、主要な財務データを比較します。

なお、三井住友FGは2026年9月30日を基準日として「1株⇒2株」の株式分割を予定しているため、比較の基準をそろえるために分割前(現行株価)ベースの換算値を採用しています。

規模と収益性の比較

総資産

  • 三井住友FG:328兆5,111億円
  • みずほFG:302兆2,400億円

純利益と成長性(2026年3月期実績)

  • 三井住友FG:1兆5,829億7,300万円(前期比+34.4%)
  • みずほFG:1兆2,486億3,200万円(前期比+41.0%)

※みずほは初の1兆円突破を達成。成長率ではみずほが上回っています

自己資本比率

  • 三井住友FG:4.8%
  • みずほFG:3.7%

1株当たり指標とバリュエーション(25日終値ベース)

株価評価を正しく行うため、株価、今期会社予想EPS、配当予想はすべて「株式分割前」の基準に統一して算出しています。

株価(2026年6月25日終値)

  • 三井住友FG:6,340円
  • みずほFG:7,725円

EPS(1株当たり純利益)

  • 三井住友FG:411.97円(前期実績)/447.50円(今期会社予想・分割前換算値※)
  • みずほFG:502.92円(前期実績)/533.10円(今期会社予想)

BPS(1株当たり純資産:前期末実績)

  • 三井住友FG:4,135.71円
  • みずほFG:4,640.23円

予想PER(株価収益率)

  • 三井住友FG:14.17倍
  • みずほFG:14.49倍

実績PBR(株価純資産倍率)

  • 三井住友FG:1.53倍
  • みずほFG:1.66倍

※ 三井住友FGの今期会社予想EPSに関する注記

三井住友FGが公表している2027年3月期の会社予想EPSは223.75円(株式分割後ベース)です。ここでは現在の株価および前期実績と直接比較できるよう、分割前の基準に引き直した447.50円を掲載しています。

なお、すべての指標を「分割後ベース」に統一して算出した場合、三井住友FGの数値は【前期実績EPS:205.99円 /今期予想EPS:223.75円/ 前期末実績BPS:2,067.86円】となります。

株主還元(配当)

2026年3月期 配当実績

  • 三井住友FG:157円
  • みずほFG:145円

2027年3月期 配当予想

  • 三井住友FG:180円(※株式分割前の換算値)
  • みずほFG:150円

予想配当利回り

  • 三井住友FG:2.84%
  • みずほFG:1.94%

財務比較表

財務比較表
出所: 各種資料より筆者作成

市場の評価と株価パフォーマンスの背景

両者の株価パフォーマンスをみていきましょう。

三井住友FG:計画的な利益還元によって市場からの信頼をより強固に

三井住友FGは、投資家から終始ブレのない高い評価を受け続けています。その原動力となっているのが、非常に明快な資本の配分方針です。状況に応じた機敏な自社株買いの実施や、新たな投資家層を呼び込むための株式分割など、節目ごとの目標に沿った還元策が、市場の予測を裏切らない成果を出し続けています。

ここ1年の値動きを振り返ると、中東情勢の緊迫化といった外部環境の変化によって一時的に下落する場面もありましたが、その後はしっかりと買い戻され、下値を切り上げています。6月18日には6,733円をつけて上場来高値を更新。抜群の「稼ぐ力」を背景に、株価は順調に右肩上がりをキープしています。

三井住友FGの年間チャート

三井住友FGの年間チャート
出所:各種資料より筆者作成

みずほFG:業績の向上が導いた「マーケットによる再評価」

みずほFGも近年の業績拡大に伴い、市場からの評価を大幅に高めています。以前の超低金利環境においては、本来の実力通りに見られていなかった稼ぐ力が、金利環境の正常化によって直接的に利益へ結びつく仕組みが確立されたことが、株価動向の好転に寄与しています。

過去1年間の値動きを振り返ると、3月に見られた調整局面を乗り越えて力強く反発し、現時点ではマーケットの先行き期待を反映しつつ、一段上の価格帯で推移しています。他行と同様に、収益のブレの少なさや配当利回りの高さを重視する投資家からの資金流入が継続しています。

みずほFGの年間チャート

みずほFGの年間チャート
出所:各種資料より筆者作成

一時的なブレは見られるものの、中長期的スパンで俯瞰すれば、利上げに伴う貸出利回りの改善と、それによる収益基盤の強化が本格化しています。両社の経営環境は構造改革を通過したことで、一段上のフェーズへと定着しつつあると考えるのが妥当でしょう。

とはいえ両社にとどまらず、銀行セクター全体において割安状態の見直しが進んでいます。

この動きの背景としては、主に2つの要素が挙げられます。

一つは金利上昇という強力なプラス要因です。日銀によるマイナス金利解除から利上げへの舵切りという金融政策の転換を契機に、預貸利ざやの改善(本業における収益性の向上)が鮮明となりました。これはメガバンクのみならず、地方銀行をも巻き込んだセクター全体の利益をストレートに底上げする要素となっています。

二つ目は東証による「PBR1倍割れ」是正要請です。長期間にわたり「万年割安株」の象徴であった銀行株に対し、東証が資本効率の向上を厳しく促した結果、各行が足並みを揃えて自社株買いや増配といった積極的な株主還元策へと舵を切っています。

経営効率の比較と投資判断のポイント

企業の「資本に対する収益の効率性」を表す指標として、自己資本当期純利益率(短信ベースのROE相当)を算出すると、次のような結果になります。

  • 三井住友FG:10.4%
  • みずほFG:11.4%

効率性の観点では、足元の業績回復が追い風となり、みずほFGが三井住友FGを上回る結果となりました。

今回の利上げに伴う金融環境の「織り込み」が一服した現在、中長期的な投資の視点からは、両社の特徴に応じて次のような判断基準が挙げられます。

株主還元の継続性と、分散された収益基盤を重視するなら「三井住友FG」

決済やリテール分野を含めたバランスの良い事業構成(ポートフォリオ)を有し、累進的配当に裏付けられた資本政策の安定性は、ディフェンシブな大型配当株としての強みと言えます。

収益構造の変革と、これからの成長余力に注目するなら「みずほFG」

構造改革を経て収益水準が一段と高まった現在、市場からの見方はかつての「低PBR銘柄」という位置づけから、高い総還元性向(50%以上目安)を掲げる「収益成長株」への評価へと変化しています。今後の増配や自己株買いを通じたEPS(1株当たり利益)の拡大に期待を寄せる投資家にとって、有力な選択肢になり得ます。

今回の利上げが想定通りに通過し、市場の関心が今後の利上げペースへと移るなか、改めて各行の「本質的な稼ぐ力」を見極める局面へと移行していくとみられます。

おわりに

日銀による追加利上げという大きな転換期を迎え、メガバンク各社は新たな成長局面へと入りました。以前の「割安株」という見方から、高い資本効率と手厚い株主還元を両立させる「収益成長株」へと市場の評価は大きく様変わりしています。

今回はメガバンクの中でも独自の戦略を展開する三井住友FGと、構造改革を通じて大幅な利益成長を達成したみずほFGの二社に焦点を当て、比較・検証を行いました。

三井住友FGは堅固な非金利ビジネスと累進的配当による安定感を示している一方、みずほFGは構造改革に伴う効率化と業績の伸長によって、過去の見方を覆す成長の勢いを見せています。利上げが本格化する現在、両社の戦略の差異は投資家にとって重要な比較検討の材料となるでしょう。

なお、金融政策や市場環境は常に変化するものであり、株価の動向にも予測できない要素が含まれます。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任において、最新の開示資料などの情報を自ら収集・精査したうえで行っていただくようお願いいたします。

※免責事項

  • この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。
  • 本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害や損失についても、一切の責任を負いかねます。投資に関する最終的な判断は、最新の決算資料や市場動向をご自身で確認し、自己責任で行うようお願いします。
  • 株主優待の内容や適用条件は変更されることがありますので、必ず企業の公式サイトで最新情報をご確認ください。

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