この記事はここがポイント
- ENEOSホールディングスの2026年3月期営業利益が339.8%増の4,666億円と急増した背景には、前期の在庫評価による利益押し下げからの反動があり、変化率自体が実力を測る物差しになりにくい点。
- 石油元売り事業の利益は原油価格や為替、在庫評価といった外部要因に大きく左右され、過去5期の営業利益は大きく変動しており、安定業種のイメージとは異なる利益構造であること。
- 今後の株価や業績を評価する際は、在庫影響を除いた実力ベースの利益水準と、原油・為替の前提条件を重視し、まもなく発表される2027年3月期1Q決算で通期予想の前提がどう点検されるか。
石油元売りと聞くと、生活に欠かせない燃料を安定して供給し、手堅く配当を出す会社という姿を思い浮かべる人は多いだろう。だが決算の利益を1期ずつ並べてみると、その印象とはずいぶん違う振れ方をしている。ENEOSホールディングス(5020)の営業利益は、年によって大きく膨らんだり縮んだりする。次の四半期決算の発表を前に、その振れの正体を株価と重ねて考えてみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
営業利益が前期の4倍超。数字の派手さには理由がある
まず直近の通期決算から見ていこう。2026年3月期の売上収益(IFRS)は前期比▲4.5%の11兆7,654億円、営業利益は同+339.8%の4,666億円だった。当期利益(親会社の所有者に帰属)は+14.4%の2,587億円で着地している。
営業利益が前期の4倍を超えたと聞けば、事業が一気に好転したように映る。しかし中身はもう少し込み入っている。会社の説明によると、在庫の評価が売上原価に与える影響(在庫影響)を除いた営業利益相当額は、前期比3,107億円増益の4,744億円だった。前期はこの在庫影響が利益を大きく押し下げており、その反動が今期の増益率を膨らませている。
つまり+339.8%という数字は、実力の改善と、前期の目減りからの揺り戻しが混ざったものだ。原油価格や在庫の評価という外部要因が、見かけの利益を上下に振らせている構図と読み取れる。
5期並べて見える利益の振れ。「安定」のイメージとのズレ
この振れは単年の話ではない。営業利益を過去5期でたどると、2022年3月期は7,859億円と大きかったが、2023年3月期は2,812億円へ縮み、2024年3月期は3,814億円、2025年3月期は1,060億円まで落ち込み、そして今期4,666億円へ戻している。
石油元売りには生活インフラを担う安定業種というイメージがつきまとう。だが利益の実額はこのように大きく上下している。原油相場、為替、在庫評価が重なり、1期ごとの利益がぶれやすいのがこの事業の実像だ。安定的に供給する事業であることと、決算の利益が安定していることは、必ずしも同じではない。
資本効率の面では、今期のROE(自己資本利益率)は8.0%だった。石油・石炭製品の業種中央値がおよそ8.0%なので、水準としては業種の真ん中あたりに位置する。自己資本比率37.1%も業種中央値並みで、財務の体格そのものは業種の標準的な姿に近いと言える。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
