決算から読み解く「大幅増益」の質と「減益予想」の真意
それでは、直近の業績はどのように推移しているのでしょうか。2026年3月期(前期)の決算実績と、2027年3月期(今期)の会社予想の数字を読み解いていきます。
まず、2026年3月期の実績は非常に好調でした。売上高は1兆5,837億円(前期比+3.5%)、本業の儲けを示す事業利益は1,811億円(同+13.7%)、そして最終利益は1,346億円(同+91.6%)と、増収かつ大幅な増益を達成しました。
投資家が注目すべきは、この増益の「質」です。売上高の伸び率(+3.5%)に対して、事業利益の伸び率(+13.7%)が大きく上回っています。これは、利益率が改善していることを意味します。
事業利益増減要因(2026年3月期実績)
決算説明会資料のウォーターフォールチャート(利益の増減要因を滝のように表した図)を見ると、事業利益の増加は主に「粗利率の改善(+273億円)」と「売上増に伴う利益増(+191億円)」が牽引していることがわかります。
一方で、人件費やマーケティング費用、R&D(研究開発)費用などの販管費の増加(約△263億円)がそれを一部相殺する形となっています。しっかりと稼ぐ力を高めながら、将来に向けた投資も行っている健全な姿が見て取れます。
一方で、市場の懸念材料となり得るのが、2027年3月期(今期)の会社予想です。
売上高は1兆7,230億円(+8.8%)、事業利益は1,970億円(+8.7%)と、トップライン(売上)も本業の利益も堅調な成長を見込んでいます。
しかし、最終利益については1,200億円(△10.9%)と、一転して「減益予想」を出してきているのです。
一般的に、株式市場は最終減益の予想を嫌気して売りに走る傾向があります。この見え方の悪さについて、投資家からの疑問を代弁する形で、泉田氏は次のように分析の視点を提示します。
「売上しっかり伸びてるから、保守的な数字になってるかどうかっていうのは、ちょっと中身を確認しながらのチェックになるかなと思います」
実際、セグメント別の事業利益予想を深掘りすると、調味料・食品事業は微増、冷凍食品事業は回復を見込んでいます。
注目の電子材料(ABF)事業を含むヘルスケア等セグメント全体でも増益予想となっていますが、電子材料事業単体で見ると、前期の546億円から今期は605億円への成長にとどまり、伸び率がやや鈍化する見通しとなっています。
会社側が将来の不確実性を考慮して、意図的に保守的な(控えめな)見通しを出している可能性もあり、今後の四半期ごとの進捗が注目されます。
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
