TOPIXを上回る株価推移とディフェンシブ銘柄の強み
次に、味の素の株価推移とその背景にある市場の評価を見ていきましょう。
一般的に、食品セクターの株式は「ディフェンシブ銘柄」と呼ばれます。景気が悪化しても、人々が食事をやめることはないため、業績が景気動向に左右されにくく安定しているからです。泉田氏は、このディフェンシブ銘柄の特性を次のように解説します。
「基本、食品セクターってやっぱ地味というか手堅いのよ。だって、今日味の素を使ってて明日味の素を使わないってないじゃん。なので収益のビジビリティ(見通し)が高い。なので消費安定、ディフェンシブ銘柄なんだよね」
味の素の株価チャート
ディフェンシブ銘柄は下値が堅い一方で、景気拡大局面や強気相場においては、成長株に資金が向かうため市場平均(TOPIXなど)に劣後しやすいという弱点があります。実際、味の素の株価も過去にはTOPIXを下回る局面がありました。
しかし、2023年頃から潮目が変わり、味の素の株価はTOPIXを継続的にアウトパフォーム(上回って推移)するようになります。
特に足元では、その乖離が顕著になっています。これは、市場が味の素を単なるディフェンシブ銘柄としてではなく、ABFを通じた「半導体・AIテーマの需要拡大」を織り込み始めた結果だと泉田氏は分析します。
とはいえ、純粋な電子部品メーカーのように株価が急騰しているわけではありません。ここが味の素の面白さであり、投資家にとっての安心感に繋がっています。
「利益の7割方は食品事業から来てるんで、半導体事業で全部乗れるというわけではないけども、一方で半導体ブームが終わった後も主力の事業は残るんで、普通に全部半導体ですって言われるよりはリスクは分散されてるかなっていう気はしますね」
つまり、現在の味の素の株価は、「強固で安定した食品事業」というディフェンシブな土台の上に、「AI半導体向け電子材料」という強力なアップサイド(上値余地)が乗っているという、非常にユニークな二面性を評価して形成されているのです。
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
