監修者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
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株価を左右するABF事業の成長シナリオとリスク

味の素の株価の行方を占う上で、最大のドライバーとなるのがABF(電子材料事業)の動向です。この事業は今後、どのように成長していくのでしょうか。

成長のキーワードは、半導体パッケージの「大型化」と「多層化(積層化)」です。

AIやデータセンターで使われる高性能な半導体は、処理能力を上げるためにチップそのものが大きくなり、さらに内部の構造がミルフィーユのように何層にも積み重なっていきます。

層を重ねる際には、電気を通さないための絶縁フィルムが各層の間に必要となります。

半導体パッケージ基板の大型化・多層化の推移

半導体パッケージ基板の大型化・多層化の推移
出所:味の素「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年5月7日)4/4
半導体パッケージ基板の大型化・多層化の推移

会社の資料によれば、パソコン用途で採用された当初は3層程度だったものが、近年のハイパフォーマンスコンピューティング用途では9層から11層へと増加しています。

さらに会社予想では、2031年以降のAI用途に向けて13層へと多層化が進み、パッケージの面積も拡大していくと見込まれています。

面積が広がり、層の数も増えれば、当然ながら使用されるABFの量も加速度的に増加していくという、構造的な成長シナリオが描かれています。

これだけを聞くと死角がないように思えますが、プロの機関投資家は常にリスクシナリオも想定します。泉田氏は、ABF事業における2つの大きなリスク要因を指摘します。

1つ目は「キャパシティ(生産能力)の問題」です。

どれだけ需要が旺盛でも、工場がフル稼働に達してしまえば、それ以上売上を伸ばすことはできません。味の素は将来の需要拡大を見据えて新工場の建設などを計画していますが、それが稼働するまでの間、現在の設備でどれだけのアップサイド(増産余地)を吸収できるのかが、短期的な業績の上振れを左右します。

2つ目は「代替技術の脅威」です。

現在はABFが絶縁フィルムとして圧倒的な地位を築いていますが、半導体業界の技術革新は日進月歩です。将来的には「ガラス基板」や「PID(感光性絶縁樹脂)」といった新しい技術や素材が台頭してくる可能性があります。

「やっぱり100%(のシェア)だから、新技術が来た時に一気に代替される可能性もあるし、あとやっぱ競合も虎視眈々と狙ってる」

シェア100%という数字は圧倒的な強みであると同時に、もし代替技術に取って代わられた場合、シェアを奪われる一方となり、業績へのダウンサイド(下落インパクト)が非常に大きくなるという脆さも孕んでいるのです。

まとめ:投資家が注目すべき「純度」と事業の分散

味の素は、食品メーカーとしての強固な基盤を持ちながら、AI半導体に不可欠な素材で世界を席巻するという、極めて稀有なポジションを確立しています。

投資家がこの銘柄に向き合う際、意識すべきはAI銘柄としての「純度」です。

売上高の6.4%、利益の約3割がABF事業であり、残りの大部分は依然として食品事業が占めています。「AIの成長に100%フルベットしたい」と考える投資家にとっては、食品事業の存在が株価の上昇をマイルドにするため、もどかしさを感じるかもしれません。

しかし、株式投資において「事業の分散」は強力な武器になります。万が一、半導体市場が調整局面に入ったり、代替技術のリスクが顕在化したりしたとしても、私たちの生活に密着した食品事業がしっかりと利益を下支えしてくれます。

今後は、ABFの技術動向や新工場の稼働に向けた進捗を注視しつつ、主力の食品事業がインフレ環境下でいかに着実に利益を積み上げていくか。この両輪のバランスを見極めることが、味の素の企業価値を正しく評価する鍵となるでしょう。

参考資料

  • 味の素株式会社「2026年3月期 通期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月7日)
  • 味の素株式会社「2026年3月期 決算概要」(2026年5月7日)
  • 味の素株式会社「2027年3月期 セグメント別業績予想」(2026年5月7日)
  • 味の素株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年5月7日)
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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