2027年3月期1Qの増益は何から来たのか
直近の2027年3月期1Qは、売上高1,143億円で前年同期比+27.1%、営業利益490億円で同+42.2%だった。経常利益は484億円で同+42.5%、純利益は342億円で同+44.0%である。
営業利益率は42.9%。売上の伸びを上回る速さで利益が増えている。
なぜ増えたのか。会社の説明によると、生成AIの需要拡大を背景にデータセンタ向け投資が継続した。先端ロジックやHBM(高帯域幅メモリ)といった高性能半導体向けの需要は高水準で推移したという。
そのうえで、機械装置の検収が進んだことなどで売上高が増えた。為替の影響と高付加価値製品の増加により売上総利益率が上昇し、人件費や研究開発費といった販売管理費の増加を吸収して増益になった、というのが会社の整理である。
前期にあたる2026年3月期通期も、売上高4,368億円で前期比+11.1%、営業利益1,849億円で同+10.9%と増収増益だった。出荷額と売上高はともに6期連続で過去最高を更新している。
もっとも、同じ期の会社説明は用途別の強弱にも触れている。PC・スマートフォン向けの需要には緩やかな回復が見られた一方、パワー半導体向けはEV需要の鈍化を背景に低調だったという。
生成AI一色で伸びているわけではない、ということだ。用途の入れ替わりを吸収しながら、削る対象そのものは増え続けている。そう読み取れる。
研究開発費は2026年3月期に341億円まで積み上がった。売上高の8%弱を毎期投じ続けている会社が、装置の値段だけで戦っているとは考えにくい。
資金の使い方にも、この局面の特徴が出ている。2026年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは1,335億円だが、投資活動によるキャッシュ・フローは▲1,357億円で、差し引きはわずかにマイナスへ振れた。
有形固定資産は2,232億円まで膨らみ、うち建設仮勘定が338億円、土地が654億円を占める。稼いだ現金を、削る現場そのものを増やす方向へ回している時期だと読める。
株価は8万円台から5万円台へ。市場はこの構造をどう見ているか
株価の動きは、業績の滑らかさとはまるで別物だった。2025年9月末の終値は4万6千円台で、11月末には4万3千円台まで下押しした。昨秋以降の月末終値では、これが最も低い水準である。
年明けから様子が変わる。2026年1月末に6万6千円台、2月末には7万5千円台へと大きく切り上がり、6月末には8万1千円台をつけた。
ところが7月末には5万8千円台まで大きく下落した。2026年8月時点の終値は6万2千円台で、いくぶん戻した水準にある。
1Qの増益率が前期より加速していることと、7月末の下押しが同じ時期に並んでいる。決算そのものが嫌気されたと断じるのは早計だろう。半導体関連全体の地合いや、バリュエーションの調整が意識された可能性もある。株価が動いた本当の理由は、外から断定できない。
財務の側は静かだ。2026年3月期末の自己資本比率は78.9%で、総資産7,434億円に対して非流動負債はわずか8億円にとどまる。それでもROE(自己資本利益率)は25.1%と、機械業種の中央値7.8%を大きく上回る。
負債をほとんど使わずにこの資本効率を出しているのは見事だ。ただ、負債を使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点として残る。
筆者コメント
売上総利益率の切り上がりと、棚卸資産の重さを並べて見ると、この会社の性格が浮き上がってくる。
利益率だけを取り出せば、設備をほとんど持たない情報サービス業のような数字だ。一方で在庫の厚みは、現物を削り、磨いて出荷する製造業そのものである。この二つが同居している会社は、そう多くない。
同居を可能にしているのが消耗品の層ではないだろうか。装置の受注が途切れても、すでに現場に据え付けられた装置の刃は減っていく。減れば買い直される。砥石屋から始まった会社が最後まで手放さなかったのは、この「減るものを売る」位置だったと考えられる。
にもかかわらず、この構造は外から見えにくい。報道の焦点は装置の出荷額に集まり、消耗品は独立した数字として切り出されないためだ。半導体製造装置メーカーという一語で片づけたくなる誘惑は、そこから生まれている。
決算を読むときは、装置が何台売れたかではなく、現場がどれだけ動いているかを映す部分に目を向けてほしい。そちらのほうが、この会社の地力に近いはずだ。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
