この記事はここがポイント
- 2026年3月期はIT関連事業が利益を牽引、2027年3月期1Qで半導体利益は10倍超に急反転。
- 2027年3月期1Q営業利益179.5%増、通期経常利益136億円へ上方修正。
- 株価は2026年4月以降に回復、半導体回復期待を先行織り込み済み。
決算の数字が悪くても株価が上がる、あるいはその逆が起きるとき、私たちはつい単純な因果を探したくなる。半導体関連という一語で語られやすい東京エレクトロンデバイス(2760)も、事業の中身に降りてみると少し違う姿が見えてくる。昨秋からの株価と、直近の決算を並べて考えてみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
昨秋からの株価。3,000円割れの谷から4,300円台へ
東京エレクトロンデバイスの株価は、2025年9月末に3,000円弱の水準にあった。
そこから緩やかに水準を切り上げる場面もあったが、2026年3月末には3,000円を割り込み、昨秋以降の月末終値では最も低い水準まで下押しした。
局面が変わったのはその後だ。4月から夏にかけて株価は大きく水準を切り上げ、2026年8月時点では4,300円台まで戻している。
株価がなぜ底を打ったのか、その理由を一つに決めることはできない。ただ、この谷と回復のタイミングは、同社の事業が置かれた局面の変化と重なって見える。
「半導体商社」で稼いだのは半導体ではなかった
半導体を商う会社と聞けば、業績も半導体市況に素直に連動すると考えたくなる。ところが2026年3月期通期の中身は、その素朴なイメージとずれている。
同社の通期は売上高2,037億円(前期比5.8%減)、営業利益102億円(同17.7%減)と減収減益で着地した。
セグメントを分けると構図がはっきりする。売上の8割近くを占める半導体及び電子デバイス事業は、経常利益が32億円(前期比47.8%減)とほぼ半減した。会社の説明によると、車載向けは堅調だったものの、産業機器向け半導体の顧客在庫調整と、ウェーハ市場の調整長期化が響いたという。
一方、売上構成では2割ほどのコンピュータシステム関連事業は、経常利益65億円(同24.2%増)と伸ばした。ストレージや保守・監視、セキュリティ関連の販売が好調だったためだ。
つまりこの期は、規模で小さいはずのIT関連事業が、規模で大きい半導体事業の利益を上回って稼いだ。半導体商社という看板だけを見ていると取り落としてしまう構造だ。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
