オリエンタルランド(4661)、営業キャッシュフロー1兆円をどこへ配るのか。投資と還元の設計図
Songsak C/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
20:00
オリエンタルランド(4661)、営業キャッシュフロー1兆円をどこへ配るのか。投資と還元の設計図
Songsak C/Shutterstock.com

テーマパークの運営会社は、景気の波に強い優等生だと思われやすい。実際、直近通期の営業利益率は23.9%と高い。だが株主の手元に返ってきたものを見ると、その印象とは違う姿が現れる。株価は昨秋から水準を大きく切り下げ、初夏に切り返した。稼ぐ力と株主のリターンが噛み合わない理由は、現金の行き先にありそうだ。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

3,500円台から2,100円台へ、11か月で入れ替わった株価の水準

出所:各種資料をもとに筆者作成1/1

2025年9月末の終値は3,500円台だった。そこから月末終値は段階的に切り下がっていく。10月末は3,100円台、12月末は2,800円台、2026年1月末は2,700円台まで下押しした。

2月末に2,800円台へ戻したものの、3月末は2,700円台、4月末は2,100円台。2025年9月末以降の月末終値では、この4月末が最も低い。起点である2025年9月末が、この11か月で最も高かったことになる。

流れが変わったのは初夏だ。5月末は2,200円台、6月末は2,400円台と戻し、7月末には3,100円台まで切り返した。半年以上かけて失った水準を、3か月ほどで取り返した形になる。

2026年8月時点の終値は2,800円台。7月末からは上げ幅を吐き出している。

株価がここまで振れた理由を一つに絞ることはできない。相場全体の地合いも、需給も、思惑も絡む。ただ、この間に決算の見え方が変わったことは確かめられる。

増収なのに減益、2026年3月期に効いたもの

2026年3月期の売上高は7,045億円で前年同期比+3.7%。一方で営業利益は1,684億円の▲2.1%、経常利益は1,696億円の▲2.1%、当期純利益は1,218億円の▲1.8%と、いずれも前期を下回った。

会社の説明はこうだ。東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」が通期で稼働し、周年イベントや夏の新規イベント、10年ぶりに刷新したクリスマスのパレードを展開した。テーマパークの入園者数は前年とほぼ同様で、ゲスト1人当たり売上高は増加した。ホテル事業でも「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」が通期稼働し、客室単価が上がっている。その一方で、人件費や諸経費をはじめとするコストは増加した。

整理すると、人数は増えず単価で稼いだ期であり、その増収分をコストの増加が上回った。増収減益の中身としては素直な形だ。

ここで見落としたくないのが減価償却費の水準だ。2026年3月期の減価償却費は665億円で、2024年3月期の467億円から大きく増えている。新しいエリアが稼働に入れば、売上と同時に償却も立ち上がる。投資の果実と負担は、必ずセットで届く。

2027年3月期1Q、経常利益+48.6%を作ったもの

直近の2027年3月期1Qは様子が違う。売上高1,807億円で+10.4%、営業利益477億円で+23.1%、経常利益583億円で+48.6%、当期純利益412億円で+50.3%と、いずれも大きく伸びた。

営業利益と経常利益の伸びの差が目を引く。差を生んだのは営業外に立った持分法による投資利益101億円で、前年同期は0.45億円だった。本業そのものではなく、持分法の対象となる会社の利益が効いている。

セグメントで見ると、伸びたのはテーマパーク事業だ。セグメント利益は378億円で、前年同期の292億円から積み上がった。ホテル事業は92億円で、前年同期の91億円とほぼ横ばいだった。

収入の内訳を開くと、伸び方に濃淡がある。アトラクション・ショー収入は703億円で前年同期の654億円から増えた。飲食販売収入も263億円と、前年同期の236億円から伸びている。

際立つのは商品販売収入だ。472億円で、前年同期は390億円だった。入園者を大きく増やさずに収入を伸ばしたのだから、来園者1人が園内で落とす金額、とりわけ物販の単価が効いたと考えるのが自然だろう。

入場料で稼ぐ事業だという見方が先に立ちやすいが、四半期の伸びを作ったのは園内消費の側だった。

会社が示す2027年3月期の通期予想は、売上高7,243億円で+2.8%、営業利益1,607億円で▲4.5%、当期純利益1,137億円で▲6.6%と減益の見通しだ。ところが1Qの営業利益はすでに477億円あり、通期予想に対する進捗率は29.7%になる。3か月経過時の目安である25%を上回る。

会社計画は保守的に置かれている可能性が高い。もっとも、テーマパーク事業は季節性が強く、四半期の進捗だけで通期を語るのは早計だ。

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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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