5期で売上は2.5倍を超え、人も賃金も増えた
2022年3月期の売上高は2,757億円だった。行動制限が来園者数を直撃した期であり、営業利益は77億円、ROE(自己資本利益率)は1.1%にとどまっている。
そこからの戻りは速い。2023年3月期は売上高4,831億円、2024年3月期は6,184億円、2025年3月期は6,793億円、そして2026年3月期は7,045億円。4年で売上高は2.5倍を超えた。
同じ期間に人も増えている。連結の従業員数は9,094名から11,207名へ、臨時従業員は7,057名から14,263名へ増えた。有価証券報告書に載る平均年間給与も、491万円から605万円になっている。
来園者を迎える体制を厚くし、賃金も上げてきた。これが2026年3月期に効いた人件費や諸経費の増加の中身だと考えられる。
規模が戻り、人を増やし、そのうえで新しいエリアへ投資する。三つが同時に進んだのが、この5期だった。
稼いだ現金のほぼ全額が投資へ消えていく5期
この会社の姿は、損益計算書よりキャッシュフローを並べたほうが見えやすい。
2022年3月期の営業キャッシュフローは546億円で、投資キャッシュフローは▲1,389億円。2023年3月期は1,677億円と▲1,444億円、2024年3月期は1,976億円と▲212億円、2025年3月期は1,953億円と▲2,531億円、2026年3月期は1,812億円と▲1,720億円だった。
5期のうち2期は、投資の額が営業キャッシュフローを上回っている。2026年3月期も、両者の差は100億円に満たない。稼いだ現金がほぼそのまま投資へ出ていく状態が続いている。
足りない分は外から入れている。2026年3月期の財務キャッシュフローは+385億円。1年内償還分を含む社債残高は3,100億円で、2024年3月期末の2,000億円から積み上がった。手元資金の範囲で投資していた会社が、負債の枠を使い始めた形だ。
投資はまだ途中にある。2026年3月期末の建設仮勘定は1,032億円で、2026年6月末には1,340億円へ増えた。建設仮勘定はまだ稼働していない資産であり、この段階では売上を1円も生まない。
2026年3月期の設備投資は862億円、減価償却費は665億円。償却を上回る投資が続く限り、資産は膨らみ、将来の償却も増えていく。自己資本比率は67.5%と厚く、現金及び預金も2,361億円ある。当面の余力そのものは十分にある。
5年で1兆円の現金を、どこへ配るのか
会社は2025年度から2029年度の5年間で、営業キャッシュフローが1兆円規模になるとの見通しを示している。そのうえで株主配当は3,000億円規模、手元資金は2,500億円程度を確保するとしている。2035年度には配当性向30%という水準を掲げる。
順番が明快だ。稼ぐ現金の総額を置き、還元の総額と手元に残す額を先に決める。残りが投資に回る。逆に言えば、投資の余力は前の二つで決まる。
直近の配当性向は20.2%で、掲げる水準までは開きがある。1株当たり配当金は2026年3月期の15円から2027年3月期は16円の予想で、増配は5期連続になる。
資本効率の側はどうか。2026年3月期のROEは11.7%で、サービス業の中央値8.6%を上回る。ただし2024年3月期の13.5%からは低下している。
ここに一つのねじれがある。2026年3月期の営業利益率23.9%は、サービス業中央値6.4%の3倍を超える。稼ぐ力で言えば飛び抜けて高い。ところが有価証券報告書に載る株主総利回りは直近通期で82.9%、比較指標である配当込みの株価指数は202.2%だった。
事業の収益性が高いことと、株主の取り分が増えることは別の話だ。この開きの一因は、投じた資本が売上と利益に変わるまでの時間差にあるのではないだろうか。建設仮勘定に積み上がった資産は、まだ何も生んでいない。
筆者コメント
この会社の資本の使い方は、いま切り替わる途中にある。
かつては稼いだ現金の範囲で投資し、余りを積み上げていく会社だった。いまは債券市場から資金を取り、償却を上回る投資を続けている。手元に残す額と還元の総額を先に約束し、残りを投資へ回すという設計も明示されている。
資本配分の組み立てとしては、むしろ分かりやすい部類だろう。ただし前提が一つある。投じた資本が、計画どおりの現金を生むことだ。前提が崩れれば、先に約束した還元と手元資金が投資の側を圧迫する。
決算を追うなら、入園者数や単価だけで満足しないでほしい。建設仮勘定がいつ有形固定資産へ振り替わり、そこから償却がどれだけ増えるか。投資フェーズにある会社は、その切り替わりで利益率の景色が変わる。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
