

「資産運用を始めてみたいけれど、株のように値動きが激しいものは怖い……」
このように悩んでいる方に、今改めて知っていただきたいのが「債券投資」です。
現在の日本は、かつてのマイナス金利時代を完全に脱し、長期金利(10年物国債利回り) が2%台後半で推移するなど、確かな利回りが期待できる世界が定着しています。
手堅く資産を守りながら増やす安全資産として、国債や地方債への注目度はますます高まっています。
本稿では、初めて債券に触れる方向けの「国債と地方債の基本やリスクの違い」を押さえつつ、直近6月の市場の振り返りと、今後の投資判断を大きく左右する7月債の注目ポイントを分かりやすく解説します。
そもそも「債券投資」とは? 基本を簡単におさらい
債券投資とは、国(国債)や地方自治体(地方債)、企業(社債)などが資金を調達するために発行する「債券」を購入する仕組みです。
投資家から見た最大のメリットは、「あらかじめ運用の成果が見えやすい」という点にあります。
株のように日々価格が大きく上下してハラハラすることが少なく、購入すれば定期的に利子(クーポン)が支払われ、満期(償還)を迎えれば元本がそのまま戻ってきます。
何から始める?王道は「個人向け国債」
「具体的になにから始めたらよいか」と迷ったら、まずは国が発行する「個人向け国債」をチェックするのが王道です。
1万円から手軽に購入でき、国が元本と利子を保証しているため安全性が高いのが特徴です。
以下の3つのタイプが毎月発行されています。
- 変動10年:実勢金利に応じて半年ごとに適用利率が変わる
- 固定5年:発行時の利率が満期(5年)まで変わらない
- 固定3年:発行時の利率が満期(3年)まで変わらない
いずれのタイプも、経済情勢に関わらず年率0.05%の最低金利が保証されているため、初めての資産運用でも安心です。
もう一つの選択肢「地方債」:国債との違いと元本割れリスク
国債よりも少し高い利回りを狙いたい場合に候補となるのが、都道府県や政令指定都市などの自治体による「地方債」です。
国債との主な違いは「金利の高さ」と「途中売却時のリスク」にあります。
また、地方債は機関投資家向けの発行が中心で、個人投資家向けはごく一部です。
利率の上昇によってかなり人気が高くなっているため、ネット証券などで販売されると一瞬で完売してしまいます。
個人向け国債に比べて、かなり購入しにくいことには注意が必要です。
地方債の「メリット」「デメリット」
メリットは「国債より利率が高め」な点です。
国の信用力を基準とするため、地方債のほうがわずかに金利が高く設定され(国債への上乗せ幅)、より効率的な運用が期待できます。
デメリットは「中途換金による元本割れリスク」がある点です。
個人向け国債は、発行後1年が経過すれば、国がいつでも額面金額(元本)で買い取ってくれるため元本割れがありません。
しかし、地方債を途中で換金したい場合は、国が買い取るのではなく「市場(中途売却)で売却」することになります。
債券は、株式のように取引所を通じて市場参加者全員で一斉に売買する仕組みではなく、証券会社などを相手に1対1で売買する「相対(あいたい)取引」が基本です。
自身で売りたい価格を自由に決めることが難しく、証券会社が提示するその時の引き取り価格(時価)に従うことになるため、市場金利が上昇して債券の価値が下がっているタイミングで売却すると、購入時の金額を下回り、元本割れするリスクがあります。
地方債は満期まで保有すれば元本が戻ってきますが、途中で解約する可能性がある資金の場合は、このリスクの違いに注意が必要です。
個人向け国債・地方債の早見表
【6月債の振り返り】個人向け国債と地方債の動向
では、直近に条件が決定した2026年6月債の動きはどうだったのでしょうか。個人投資家目線で重要な「実際の利率」を振り返ります。
個人向け国債(6月募集分)
6月3日に提示された6月募集分の個人向け国債の利率は、変動10年(第195回)が年1.74%、固定5年(第183回)が年1.86%、固定3年(第193回)が年1.51%となりました。
長期金利の推移を反映した確かな利回り水準が維持されており、6月30日まで募集が行われています。
10年物地方債:利率は「2.7%〜2.8%台後半」のレンジで安定
地方債市場では、機関投資家が指標にする国債への上乗せ幅(スプレッド)が+18bp(0.18%)で4月から横ばいが続いており、市場はすでに2%台後半の長期金利を織り込んだ水準で安定しています。
個人投資家にとって最も重要な「実際の利率(表面利率)」に注目すると、6月の10年物地方債(個別債)は、以下の通り2.7〜2.8%台後半の魅力的な利回りとなっています。
【利率の下限】2.729% (神奈川県、京都府) 【利率の上限】2.868% (愛知県)
また、複数の自治体が共同で発行する「第279回 共同発行市場公募地方債(10年)」についても、同じく表面利率(応募者利回り)は2.832%となっており、上記の上限・下限の範囲内にしっかりと収まっています。
10年物の地方債を狙うなら、この水準が現在の大きな目安となります。
【7月債への見通し】日銀利上げ後「初の10年国債入札」が最大の焦点
長期金利が2%台後半という高水準で定着するなか、7月の債券市場は新たな「基準値」を探る極めて重要な局面を迎えます。
注目すべきポイントは以下の2つです。
① 6月16日 日銀が追加利上げを決定
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合において、政策金利(無担保コールレート)を1.0%程度に引き上げる変更を決定しました。
② 利上げ後「初」となる10年国債入札(7月2日)
この利上げ決定を受けて、市場の実勢金利がどこを新たな定位置とするのか。そのダイレクトな答え合わせとなるのが、7月2日(木)に実施される「10年利付国債の入札」です。
利上げ後に初めて実施される大口の10年国債入札となるため、ここで形成される利回りが、今後の日本の長期金利の「新基準」として市場をリードすることになります。
まとめ:7月債の着地がどうなるか、まずは入札結果に注目!
7月2日の10年国債入札の結果は、その直後に条件が決定する以下の7月債の発行条件(利率)へダイレクトに反映されます。
- 7月募集の個人向け国債(変動10年 第196回)
- 7月発行の地方債
新たな金利環境における初めて本格的な値決めとなるこれらが、果たしてどのような利率に着地するのか。
これから債券投資を始める方も、すでに保有している方も、非常に注目される局面です。
今後の動向をじっくりと見守っていきましょう。
参考資料
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願いいたします。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
PROFILE
立教大学卒業後、海外専門の旅行会社に就職し、その後旅行業界専門誌の記者に転身。企業決算の記事などを手掛けるうちに金融マーケットに興味を持つようになり、株式や債券の発行市場をカバーする金融専門誌の記者に転職。債券市場の動向や市況について、10年以上にわたって数多くの記事を機関投資家に向けて日経QUICKやブルームバーグ等へ執筆した。その後、株式会社フィスコでアナリストが執筆する企業調査レポートの編集を手掛けるとともに、決算などIR情報の発信業務に携わる。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』のLIMO編集部に所属し、LIMOでも記事を執筆している。
