この記事はここがポイント
- 地方債の利率はスプレッドが重要、変動はベース金利によるもの
- 8月共同債は3.019%、7月より低下もスプレッド20.0bp不変で条件悪化なし
- 共同発行地方債は複数自治体の連帯債務で、安定資金調達の仕組み
6日、8月の共同発行市場公募地方債の発行条件が決まりました。
表面利率は3.019%、発行価格は100円となっています。発行額は890億円、期間は10年で、発行予定日は8月25日です。
本記事では、今回決定した発行条件の詳細を確認したうえで、そもそも共同発行市場公募地方債とはどのような仕組みなのか、そして地方債の利回り差をどう解釈すればよいのかを解説していきます。
そもそも「共同発行市場公募地方債」とは?
共同発行市場公募地方債とは、複数の都道府県・政令指定都市が共同で発行する地方債のことです。
いわば、参加している自治体同士が互いの信用を持ち寄って発行する「連帯債務」のような制度で、参加自治体はそれぞれの発行分について連帯して債務を負います。
単独の自治体が発行するよりも規模を確保しやすく、市場からの資金調達を安定させやすいという利点があります。
7月債からの変化をどう見るか
前回(7月債)の表面利率は3.027%でした。今回の8月債は3.019%となり、0.008ポイントわずかに低下する形になりました。
ただし注目すべきは、対国債スプレッドが20.0bpで変わっていない点です。
表面利率の小幅な変動は、条件決定時点でベースとなる長期国債の金利そのものが動いたことによるものであり、7月債に比べて発行条件が明確に悪化したわけではありません。
地方債の利回り差、正しく理解するために
地方債の利率は、条件決定時点の国債金利に、あらかじめ決められた上乗せ幅(スプレッド)を加えて決まる「スプレッド方式」で設定されます。
機関投資家が本来注目しているのはこのスプレッドであり、表面上の利率そのものではありません。
多くの自治体は同じ上乗せ幅で横並びに発行する慣習があるため、スプレッドが同じであれば実質的に同一条件とみなしてよく、月ごとに利率が上下しても、それは「その時点の国債金利がどうだったか」というタイミングの差に過ぎないと考えられます。
したがって、どの回が「お得か」を事前に予測しようとするより、条件決定後に決まった利率を確認し、そのなかから選ぶという向き合い方が実務的です。
個人向け国債(変動10年)は「1.87%」に
高格付け債では、5日に8月募集分の個人向け国債(変動10年)が1.87%に決まっています。
こちらは共同債とは反対に、7月債からは0.07%利率が上がっています。
両者の差は、前回に1.227%だったものが、今回は1.149%に縮小にしています。
厳密にみれば、8月債は国債対比で投資妙味が薄れた(0.078%縮小)ことになりますが、依然として利率は3%を超えています。
これまでのマイナス金利時代からすれば、十分に魅力的な水準であり、一般的に投資家が求める水準は満たしていると言えます。
リスク・注意点
- 信用リスク:参加自治体が財政破綻に近い状態に陥らない限り、償還が滞る可能性は低いとされていますが、ゼロではありません
- 価格変動リスク:満期まで保有すれば額面で償還されますが、途中で売却する場合は市場価格次第となり、購入時より値下がりしていれば元本割れする可能性があります。機関投資家は時価評価を気にしますが、個人投資家が満期保有前提であれば、この点はさほど気にしなくてよいでしょう
- 流動性リスク:地方債はもともと機関投資家向け中心の商品であり、個人が途中で売却したいときに買い手が見つかりにくい場合がある点に注意が必要です
購入を検討する際に
地方債は個人向け国債と違い、証券会社ごとに取扱いの有無や販売枠が異なります。
今回の8月債についても、口座を持つ証券会社のサイトで募集の有無・申込期間を確認する必要があります。
また、地方債はNISAの非課税枠の対象外であり、利子・償還差益には20.315%の税金がかかる点も見落とされがちなので確認しておきましょう。
まとめ
第281回共同発行市場公募地方債は、表面利率3.019%、対国債スプレッド20.0bpという条件で決定しました。
一部を除いて、スプレッドが横並びで決まる地方債は、利率の上下だけを見て自治体の優劣を判断するものではなく、その時点の国債金利を反映した結果と捉えるのが正確な理解といえるでしょう。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
