この記事はここがポイント
- 10月債、10年債3.3%台、5年債2.558%に利率上昇。スプレッド据え置き
- 地方債利率は個人向け国債より高いが、5年債は1,000万円単位。商品性にも差異
- 地方債投資は利率、スプレッド、購入単位、個人向けの販売有無を確認。元本割れリスク注意
7日、全国型市場公募地方債(個別債)のうち、「令和8年10月債」の10年債・5年債について、埼玉県や千葉県など複数の自治体が条件を決定しました。
本記事では、条件決定済みの10年債・5年債について、表面利率と対国債スプレッド(国債の利回りに対する上乗せ幅)をまとめて見ていきます。
10年債の条件(10月7日条件決定分)
4団体とも対国債スプレッド(カーブ対比)は+20.0bp、発行価格は100円00銭、応募者利回りは表面利率と同水準です。
いずれも入札方式以外で利率を決める標準モデルの銘柄です。
- 【埼玉県】 表面利率:3.305%/発行額:200億円/発行日:10月22日
- 【千葉県】 表面利率:3.301%/発行額:100億円/発行日:10月23日
- 【札幌市】 表面利率:3.295%/発行額:100億円/発行日:10月30日
- 【千葉市】 表面利率:3.291%/発行額:100億円/発行日:10月28日
10年債の表面利率は、9月債(2日条件決定分)の3.195~3.204%から0.1%前後上昇し、3.3%台に乗せる銘柄が出てきました。
一方、対国債スプレッドは+20.0bpと9月債から変わっていません。
5年債の条件(10月7日条件決定分)
3団体とも表面利率は2.558%、対国債スプレッド(カーブ対比)は+14.0bp、発行価格は100円00銭、応募者利回りは表面利率と同水準です。
こちらも10年債同様、入札方式以外利率を決める標準モデルの銘柄です。
- 【愛知県】 発行額:200億円/発行日:10月19日
- 【名古屋市】 発行額:500億円/発行日:10月19日
- 【京都市】 発行額:100億円/発行日:10月23日
5年債の表面利率は2.558%と、9月債(2日条件決定分)の2.441%から+0.117%となりました。
対国債スプレッドは+14.0bpで、8月債から1bp縮小した9月債の水準がそのまま維持されています。
なお、地方債は基本的に「機関投資家向け」になります。
一部が個人投資家に販売されるため、10月に登場した新発債全てが個人で買えるわけではありません。
実際、今回の5年債3銘柄は購入単位がいずれも1,000万円と大口で、個人向けに販売されるケースは限られるとみられます。
地方債のスプレッド推移
そもそも「対国債スプレッド」とは?
地方債の多くは、条件決定時点の国債の利回りに一定の上乗せ幅(スプレッド)を加えて利率を決める方式で発行されます。
いわば「国債金利+横並びの上乗せ幅」で利率が決まる仕組みです。
今回の10年債では埼玉県・千葉県・札幌市・千葉市の4団体がそろって+20.0bp、5年債では愛知県・名古屋市・京都市の3団体がそろって+14.0bpとなっており、同じ年限であれば発行体が違っても上乗せ幅は横並びになっています。
10年債の表面利率には3.291~3.305%の差がありますが、上乗せ幅は4団体とも同じ+20.0bpです。
差が出ているのは各団体の信用力の違いではなく、上乗せ幅を加える前の、ベースとなる国債カーブ上の利回りの部分です。
スプレッドが同じであれば、実質的には同一条件の発行と捉えて差し支えありません。
9月債と比べると、スプレッドは10年・5年とも据え置きで、表面利率だけが上がっています。
上乗せ幅が変わらない以上、利率の上昇分は、ベースとなる国債金利が9月債の条件決定時より上がった分にあたります。
まだ条件が決まっていない団体も
10月の発行分ではこのほか、以下の団体が発行を予定しています(条件決定日は予定)。
10年債
- 10月9日:北海道、岩手県、山梨県、愛知県、熊本県、相模原市、福岡市
- 10月16日:東京都
- 10月中旬:三重県(グリーンボンド)
- 10月中:福岡県、浜松市
- 最速10月:横浜市
5年債
- 10月9日:宮城県、大分県、鹿児島県、川崎市、広島市
- 10月15日:神奈川県(グリーンボンド)
- 10月16日:福井県(グリーンボンド)
- 10月上旬以降:東京都(グリーン・ブルーボンド)
- 10月中旬:三重県(グリーンボンド)
- 最速10月:横浜市
東京都は他の自治体より信用力が高く、スプレッドが狭めに決まる傾向があります。
また、グリーンボンドなどのESGラベル債は、ESG投資方針を持つ金融機関などの需要が集まりやすく、通常の地方債よりスプレッドがやや狭く決まる傾向があります(グリーニアムと呼ばれます)。
これらは今回の横並びの4団体・3団体とは別枠で見る必要があります。
また、複数の自治体がまとまって発行する共同発行市場公募地方債(10年)の10月債は、10月8日に条件が決まります。
同じ10月7日に決まった個人向け国債と比べると?
10月7日には、10月8日から募集が始まる個人向け国債の利率も発表されました。
地方債の10年債は変動10年と、5年債は固定5年と並べてみます。
【10年】
- 地方債10年債:3.291~3.305%(固定)
- 個人向け国債 変動10年(第199回):初回適用利率2.05%(9月募集の1.95%から+0.10%)
【5年】
- 地方債5年債:2.558%(固定)
- 個人向け国債 固定5年(第187回):2.39%(9月募集の2.24%から+0.15%)
10年同士では1.2%以上、5年同士では0.168%、地方債の利率が上回っています。
ただし、今回条件が決まった地方債5年債は購入単位が1,000万円のため、個人投資家にとって固定5年の代わりになる選択肢とはいえません。
また、変動10年は半年ごとに利率が見直されるため、地方債10年債のように10年間利率が固定されるわけではありません。
さらに、個人向け国債は1万円から買え、発行から1年経てば、直前2回分の利子相当額が差し引かれるものの元本割れせずに中途換金できるのに対し、地方債を途中で手放す場合は市場価格での売却になります。
利率の差は、こうした商品性の違いとセットで見る必要があります。
記者コメント
10月債は、10年・5年とも対国債スプレッドが9月債と同じ水準で決まり、表面利率はベース金利の上昇分だけ上がる形になりました。
10年債は3.3%台に乗せる銘柄が出ています。
購入単位(各債券の金額)は銘柄によって大きく異なります。
10月7日に条件が決まった銘柄では、10年債の札幌市が1万円、埼玉県が10万円、千葉県・千葉市が1,000万円、5年債の愛知県・名古屋市・京都市がいずれも1,000万円です。
個別の利率の大小だけで「お得な自治体」を探すのではなく、条件決定後に公表される対国債スプレッドや購入単位を確認したうえで、個人向けに販売があるかどうかを、口座を持っている証券会社のサイトで確認してください。
満期まで保有すれば額面で償還されますが、途中で売却する場合は市場価格次第で元本割れとなる可能性がある点にも注意が必要です。
免責事項
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
