【10月7日利率発表】固定5年と変動10年、なぜ期間が長いほうが利率が低いのか
出所:モニクルリサーチ
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【10月7日利率発表】固定5年と変動10年、なぜ期間が長いほうが利率が低いのか

その答えは個人向け国債という金融商品設計にあり

執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
08:22
【10月7日利率発表】固定5年と変動10年、なぜ期間が長いほうが利率が低いのか
出所:モニクルリサーチ

この記事はここがポイント

  • 変動10年国債低利率は、金利上昇備えの約1.0%ポイントのオプション料金控除という設計。
  • 変動10年は基準金利の0.66倍、固定型は基準金利から一定割合を引く異なる計算式。
  • 初回利率比較は早計で、資金用途と金利変動見据えた固定か変動かの選択が重要点。

10月7日に、個人向け国債の10月募集分の利率が発表されます。

その前に、9月募集分の数字をもう一度見ておきたいと思います。固定3年が1.96%、固定5年が2.24%、そして変動10年の初回利率が1.95%でした。

お気づきでしょうか。いちばん期間が長い変動10年が、いちばん低いのです。

ふつう、お金を長く貸すほど金利は高くなります。それなのに、なぜ10年物の金利が3年物の金利よりも低いのか。答えは市場の金利ではなく、商品の設計にあります。

年限が異なる3商品で差し引き方がまるで違う

財務省が公表している適用利率の決め方は、3商品で次のようになっています。

  • 固定3年:基準金利 − 0.03%
  • 固定5年:基準金利 − 0.05%
  • 変動10年:基準金利 × 0.66

固定の2本は引き算、変動10年だけが掛け算です。ここがすべての出発点になります。

基準金利の中身も商品ごとに違います。固定3年と固定5年は、募集期間開始日の2営業日前の市場実勢利回りをもとに計算した、それぞれ3年・5年の固定利付国債の想定利回りです。変動10年は、前月までの最後に行われた10年固定利付国債の入札における平均落札利回りを使います。

なお、どの商品も下限は年0.05%で、これを下回ることはありません。

公表された利率から基準金利を逆算してみる

では、9月募集分の基準金利はいくらだったのでしょうか。公表されている適用利率から逆算できます。

  • 固定3年:1.96% + 0.03% = 1.99%
  • 固定5年:2.24% + 0.05% = 2.29%
  • 変動10年:1.95% ÷ 0.66 = 約2.95%

市場の金利そのものは、3年1.99%、5年2.29%、10年2.95%。期間が長いほど高いという、ごく普通の形をしています。

逆転は市場で起きているのではありません。商品の計算式で起きています。

変動10年物だけ、1.0%ポイント削られている

差し引かれた幅を並べると、設計の違いがはっきりします。

  • 固定3年:0.03%ポイント(基準金利の約1.5%)
  • 固定5年:0.05%ポイント(基準金利の約2.2%)
  • 変動10年:約1.0%ポイント(基準金利の34%)

固定の2本はほとんど削られていないのに、変動10年だけが基準金利の3分の1を持っていかれています。

9月に関して言うと、100万円を1年間持った場合の利子(税引前)にすると、固定5年が2万2400円、変動10年が1万9500円です。もし変動10年が基準金利のまま2.95%だったなら2万9545円でしたから、年に約1万円が差し引かれていることになります。

削られた1.0%ポイントは、何と引き換えなのか

ここで、こう思われた方もいるかもしれません。なぜ変動10年だけ、そんなに差し引かれるのか、と。

変動10年と固定5年を比べると、違いは一点に絞られます。これから金利が上がったときに、ついていけるかどうかです。

固定5年は、2.24%が5年間変わりません。その後に長期金利が4%になっても、受け取る利子は2.24%のままです。一方の変動10年は、半年ごとに基準金利を取り直して利率を決め直します。したがって、金利が上がれば、受け取る利子も増えていきます。

その「ついていける権利」であるオプションの値段が、「34%」の価値(オプション料金)だと読むことができます。言い換えれば、変動10年を買う人は、いまの利回りを1.0%ポイント譲って、将来の金利上昇に備える「保険」を買っていることになります。オプション料金を保険料と理解してもらってもよいです。

初回利率だけで2つを比べてはいけない

だからこそ、1.95%と2.24%を並べて「固定5年のほうが得だ」と結論づけるのは早すぎます。

変動10年の1.95%は、最初の半年に適用される利率にすぎません。2回目以降は、その都度、冒頭に見てきた「基準金利×0.66」で決め直されます。

逆もまた同じです。長期金利が下がる局面に入れば、変動10年の利率も下がっていきます。変動とは、上にも下にも動くという意味です。

したがって、比べるべきは初回の数字ではなく、5年なり10年なりを通して受け取る利子の合計です。そしてその合計は、将来の金利次第で決まります。

なお、どの商品も発行から1年間は換金できません。1年経過後は換金できますが、「額面金額+経過利子相当額 − 直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685」という計算で、直近2回分の利子が差し引かれます。この点は3商品とも共通です。

債券という商品そのものの性格については「元機関投資家が教える株式投資と債券投資のメリットとデメリットー知っておきたい12の視点」で整理しています。

10月募集分も、同じ計算で読める

10月7日に発表される10月募集分も、読み方は変わりません。

変動10年の初回利率を0.66で割れば、直近の10年国債入札の平均落札利回りが見えます。固定5年に0.05%を足せば、5年の想定利回りが見えます。公表された利率の裏側にある市場の金利を、自分で取り出せるということです。

利率がどう決まるのかという仕組みの全体像は「個人向け国債は『計算式』、個人向け社債は『仮条件』から……債券の利率はどう決まるのか?」で詳しく解説しています。

元機関投資家イズミダの視点

私が機関投資家だったころ、債券の利回りを見るときに必ずやっていたのは、株式市場との関係性です。株式市場と債券市場はコインの表と裏のような関係性です。株価が上がる時は債券価格が下がり、株価が下がる時は債券価格が上がるという関係性です。その関係をつなぐのが金利です。

金利は景気そのものを映し出す指標であり、中央銀行も景気を見ながら金利を誘導していきます。そして、中央銀行の考えは、投資家心理とも深く関係しています。

さて、その金利を対象とした金融商品が債券なのですが、その債券を発行している主体が国である場合、その債券を国債と呼びます。国債自体は、機関投資家が主な取引の主体ですが、個人向けに発行された国債が個人向け国債となります。

個人向けに発行される債券はプロ投資家である機関投資家と同じような商品設計であれば取り扱いが難しいということもあり、追加的な商品設計がされていると理解しています。それが、今回見てきたような商品設計ということになります。

基本的には、個人が取り扱いやすいように設計されているという理解でいいかと思いますが、今回見てきたように一見すると初めての人からすると「?」が残る点もあることでしょう。

1.95%という数字は、2.95%という市場の金利から1.0%ポイントを引いた結果であって、最初から1.95%という商品があるわけではありません。分解すれば、その1.0%ポイントが何の対価なのかを自分で考えられます。

では、固定と変動のどちらを選ぶべきか。

私がおすすめしたいのは、そのお金をいつ使うかで決めることです。5年以内に使い道が決まっているなら、利率が確定している固定のほうが計算が立ちます。当面使う予定がなく、インフレで目減りすることのほうが心配なら、変動10年の「ついていける」性質が効いてきます。こうすることで、金利を当てにいかなくても、決められます。

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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