【9月の格付け変更まとめ】電通グループをR&Iが格下げ(AA-→A+)、格上げ7件・格下げ1件(R&I/JCR)
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【9月の格付け変更まとめ】電通グループをR&Iが格下げ(AA-→A+)、格上げ7件・格下げ1件(R&I/JCR)

電通は海外事業の低迷とのれん減損で「AA」からダウングレード、双日はA(シングルAフラット)

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
14:45
【9月の格付け変更まとめ】電通グループをR&Iが格下げ(AA-→A+)、格上げ7件・格下げ1件(R&I/JCR)
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この記事はここがポイント

  • 9月にR&IとJCRによる国内格付けで7グループが格上げ、電通グループが唯一の格下げ
  • 電通グループは海外事業の低迷と大規模な減損でAA-からA+へ格下げ変更
  • 格付けは元本保証ではない意見、見通し(方向性)の変化も重要な情報

9月30日までに、国内の格付け会社である格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)は、あわせて国内7グループの格上げと、1社の格下げを公表しました。

社債を持っている方や、これから買おうと検討している方にとって、発行体の格付けが上がったのか下がったのかは気になるポイントではないでしょうか。

本記事では、9月に格付けが変わった発行体を一覧にしたうえで、主な発行体について格付け会社がリリースで挙げた理由を見ていきます。

なお、ここで取り上げるのは長期の発行体格付けの変更です。

証券化商品の格付けや、S&P・ムーディーズなど海外の格付け会社による変更は対象外としています。

9月の格上げ・格下げ一覧

日付はリリースの公表日です。格付けの後ろの[ ]内は見通し(R&Iでは「方向性」)を示しています。

国内発行体の格上げ(7グループ)

  • 9月3日:双日<2768>/R&I/A-[ポジティブ]→A[安定的]
  • 9月11日:めぶきフィナンシャルグループ<7167>(常陽銀行・足利銀行も同時)/R&I/A+[ポジティブ]→AA-[安定的]
  • 9月15日:アニコム ホールディングス<8715>(アニコム損害保険も同時)/JCR/A[ポジティブ]→A+[安定的]
  • 9月16日:平和堂<8276>/R&I/A-[ポジティブ]→A[安定的]
  • 9月17日:大同メタル工業<7245>/R&I/BBB[安定的]→BBB+[安定的]
  • 9月25日:神戸製鋼所<5406>/JCR/A[ポジティブ]→A+[安定的]
  • 9月30日:牧野フライス製作所<6135>/JCR/A-→A[安定的]

国内発行体の格下げ(1社)

  • 9月4日:電通グループ<4324>/R&I/AA-[ネガティブ]→A+[安定的](CP格付けもa-1+→a-1)

9月の主な格付け変更一覧

9月の主な格付け変更一覧
出所:R&I、JCRより筆者作成

海外発行体(いずれもJCR)

  • 格上げ:インド共和国(9月2日、外貨建て・自国通貨建てともBBB+→A-[安定的])、インド輸出入銀行、インド鉄道金融公社、REC、Housing and Urban Development Corporation(4機関とも9月3日、BBB+→A-[安定的])
  • 格下げ:Lotte Chemical Corporation(9月10日、A[ネガティブ]→A-[安定的])、ハンファ・ソリューションズ・コーポレーション(9月11日、A[ネガティブ]→A-[安定的]。同じリリースで、発行体の申し出による格付けの撤回もあわせて公表)

主な発行体の変更理由

ここからは、格付け会社が示した判断の背景および主な評価ポイントを発行体ごとに整理します。

電通グループ:AA-→A+(R&I)

9月においては国内唯一の格下げとなりました。R&Iは、日本に次ぐ事業規模を持つ米州で競争激化により事業環境が悪化し、マイナス成長が続いていて、売上総利益の回復が見通しにくいと指摘しています。

あわせて、海外事業の大規模なのれんの減損で傷んだ財務基盤の修復は中期的な取り組みになりそうだ、という見方も示しました。

2025年度に約4,000億円ののれんの減損損失などを計上して資本が減り、2026年6月末の自己資本は4,200億円程度、自己資本比率は13.8%にとどまるとしています。

一方、国内事業については広告市場でトップの座を占めて成長を続けており、強固な収益基盤に変わりはないと評価しています。

双日:A-→A(R&I)

R&Iは格上げの理由として、次の3点を挙げています。

  • 新規投資をテコにした非資源分野の営業基盤の拡充
  • 不採算事業への対応が進み、事業ポートフォリオの質が改善していること
  • 内部留保の積み増しによるリスク耐久力の向上

ネットD/Eレシオ(純有利子負債が自己資本の何倍か)は1倍程度に抑えられており、自己資本は1兆円を超える水準に積み上がったとしています。

めぶきフィナンシャルグループ:A+→AA-(R&I)

常陽銀行と足利銀行を傘下に持つ地域金融グループです。R&Iは、茨城県・栃木県の非常に強固な営業基盤のもとで地元の預金・貸出金の残高を伸ばし、顧客部門の収益力が良くなっていると評価しました。

内部留保の蓄積や金利リスクの削減によって、リスク耐久力が「AAゾーン」の水準に達したことも格上げの理由に挙げています。持株会社と2行(常陽銀行/足利銀行)の格付けもそろってAA-になりました。

平和堂:A-→A(R&I)

滋賀県を地盤とする小売業者です。R&Iは、強い顧客基盤と地域ドミナント(特定地域への集中出店)によって利益・キャッシュフローが底堅く推移していること、有利子負債の圧縮が進み自己資本の厚みが増したことを理由に挙げています。

平和堂はJCRでは8月24日にA[安定的]で据え置かれており、今回の格上げで2社の格付けがA(シングルAフラット)でそろいました。

大同メタル工業:BBB→BBB+(R&I)

すべり軸受の総合メーカーです。R&Iは、主力の自動車エンジン用軸受が強い競争力を保って全社収益の過半を占めるなか、船舶・データセンター向け軸受が旺盛な需要を背景に収益を伸ばしていると指摘しています。

製品用途が分散することで収益基盤が強くなり、全社利益の水準が上がって財務基盤の改善が進むとみて、格上げしたとしています。船舶・データセンター向け軸受では、メキシコの新工場が2028年に稼働を始める予定です。

アニコム ホールディングス:A→A+(JCR)

JCRは、中核子会社のアニコム損害保険が収入保険料ベースで約4割の市場シェアを持つペット保険のトップ企業であり、高い市場地位と競争力を背景に契約業績や収益基盤の拡大が続いている点を評価しました。今後もシナジー創出事業を通じて事業基盤が一段と強くなる見込みであることから、格上げしたとしています。

契約継続率は約9割と高い水準にあるとする一方、損害率や事業費率を抑える取り組みの成果にも注目していくとしています。

神戸製鋼所:A→A+(JCR)

JCRは、鉄鋼の事業環境が一段と厳しくなるなかでも、機械系事業や電力事業が利益を下支えしていて、連結業績の安定性が確認できると説明しています。

財務面では、利益の積み上げで自己資本が増え、有利子負債も減って財務構成が改善したとしています。2026年3月期末の自己資本比率は44.0%、DER(有利子負債が自己資本の何倍か)は0.6倍で、直近の底だった2020年3月期末の27.2%・1.5倍から大きく改善しました。

牧野フライス製作所:A-→A(JCR)

工作機械の専業大手です。JCRは、大型機や高精度5軸加工機など付加価値の高い機種のラインナップを広げて需要を取り込み、収益力が向上していると評価しました。良好な受注動向や豊富な受注残から当面は業績の拡大が続くとみており、財務構成も健全だとしています。

2026年3月期の営業利益は250億円(前期比35.2%増)で、過去最高益を更新したとしています。2027年3月期第1四半期末の自己資本比率は60.9%です。

インド共和国:BBB+→A-(JCR)

JCRは、堅調な経済成長、成長基盤を強化する経済政策の実効性、金融システムの健全化などを踏まえて格上げしたとしています。2025/26年度の実質GDP成長率は7.7%、銀行部門の不良債権比率は2026年3月末に1.8%まで低下したと記しています。

韓国の化学2社:A→A-(JCR)

Lotte Chemical Corporationについては、2025年12月期まで4期連続で営業赤字となり、基礎化学の需給の緩みが長引いていることや、EV市場の成長鈍化で二次電池関連材料の需要が伸び悩んでいることを挙げ、業績回復にはまだ不確実性が残るとしています。

ハンファ・ソリューションズ・コーポレーションについては、2025年12月期は厳しい事業環境で収益力やキャッシュフロー創出力が低くとどまり、米国の太陽光事業への大規模投資で有利子負債が増えて財務レバレッジが高い水準にあるとし、財務改善にはなお時間がかかると判断しています。

格上げ方向の「見通し変更」も

格付け自体は変わっていないものの、9月には見通し(方向性)が「安定的」から「ポジティブ」に変わった発行体もありました。

  • R&I:SBIグループ(9月2日)、豊田通商(9月16日、AA-)、ユーラスエナジーホールディングス(9月16日、AA-)、リンテック(9月18日、A)、群馬銀行(9月30日、A+)
  • JCR:The Hongkong and Shanghai Hotels(9月4日、A)、伊藤忠丸紅鉄鋼(9月7日、A+)、カナモト(9月11日、A-)、レゾナック・ホールディングス(9月18日、A)、第一実業(9月29日、A-)、Samvardhana Motherson International(9月29日、A)

このほかJCRは9月30日、日鉄エンジニアリング(AA-)について、ネガティブ方向で付けていたクレジット・モニターを解除し、見通しを安定的としました。

そもそも「格付け」とは?

格付けとは、債券の元本や利息が約束どおり支払われる確実性を、格付け会社がAAAやBBBといった記号で示したものです。

いわば発行体の「通信簿」のようなもので、一般にBBB以上が「投資適格」とされます。

記号には「+」「-」が付き、A-からAへ、AからA+へといった1段階の変化を「1ノッチ」と呼びます。9月の国内の格上げ・格下げは、いずれも1ノッチの変更でした。

格付けと並んで示される「見通し(方向性)」は、今後の格付けの向きを示すものです。

「ポジティブ」は格上げ方向、「ネガティブ」は格下げ方向で見直す可能性があることを表します。

9月の国内の格上げ7件のうち、双日、めぶきフィナンシャルグループ、平和堂、アニコム ホールディングス、神戸製鋼所の5件は、見通しが「ポジティブ」になっていた発行体でした。

見通しの変化は、格付けそのものと同じくらい目を配っておきたい情報といえるでしょう。

格付けを見るときの注意点

格付けは「意見」であり、元本を保証するものではない

格付け会社自身が、信用格付けは信用力についての意見であって事実の表明ではなく、投資の是非を推奨するものでもないとしています。

格付けが高くても、元本割れやデフォルトの可能性がゼロになるわけではありません。

格付け会社ごとに格付けが異なることがある

 同じ発行体でも、R&IとJCRで格付けが違うことは珍しくありません。

今回の平和堂のように、片方の格上げで2社の格付けがそろうケースもあります。

社債を比較する際は、どの格付け会社の格付けかをそろえて見ることが大切です。

発行体格付けと個別債券の格付けは別物である

今回取り上げたのは発行体全体の格付けです。

劣後債やハイブリッド債など返済順位の低い債券は、発行体格付けより低い格付けが付くのが一般的です。

保有・検討している債券そのものの格付けを確認しておきましょう。

番外編:社債の途中売却の価格は市場次第

満期まで持ち、発行体が約束どおり支払えば元本は戻ってきます。

一方、満期前に売却する場合は、その時点の市場価格で売ることになり、元本を下回る可能性があります。

記者コメント

2026年9月は、国内発行体の格上げが7グループ、格下げが1社と、格上げが目立つ1カ月となりました。

格上げの理由として格付け会社が挙げたのは、収益基盤の強化と自己資本の積み上がりが中心です。

一方、格下げとなった電通グループについては、海外事業の低迷と財務基盤の修復に時間がかかる点が指摘されました。

保有している社債や購入を検討している社債の発行体が含まれていれば、格付け会社のリリースで理由を確認し、あわせて見通し(方向性)の変化にも目を配っておくとよいでしょう。

新たに社債を購入する際は、目論見書で債券そのものの格付けや条件を確認してください。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

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