この記事はここがポイント
- 9月発行の個人向け国債100万円、満期時手取り利息は変動10年15万5,386円、固定5年8万9,247円
- 年当たりの手取り利息は固定5年1万7,849円、変動10年1万5,539円、固定5年が上回る水準
- 変動10年は半年ごとの利率改定型、固定5年は発行時利率が満期まで固定される特性
長期金利が一時3%を突破するなど金利の上昇(価格の下落)トレンドが長期化するリスクに身構えるなか、個人向け国債を保有し続けた場合に実際どれくらいの利息を受け取れるのか、具体的な金額でイメージしたいという方も多いのではないでしょうか。
財務省が発表した9月分の個人向け国債は、変動10年(第198回債)が適用利率(税引前)年1.95%、固定5年(第186回債)が年2.24%で条件決定されています。
この記事では、この2つの利率をもとに、100万円を満期まで保有した場合の手取り利息を試算し、変動10年と固定5年でどれくらいの差が生まれるのかを見ていきます。
9月募集分の発行要項(前提条件)
変動10年(第198回債)
・適用利率(税引前):年1.95%(税引後1.5538575%)
・利払日:毎年4月15日・10月15日(年2回)
・償還期限:2036年10月15日(発行日2026年10月15日から10年)
・利率は半年ごとに基準金利連動で改定(最低金利保証:年率0.05%)
固定5年(第186回債)
・適用利率(税引前):年2.24%(税引後1.7849440%)
・利払日:毎年4月15日・10月15日(年2回)
・償還期限:2031年10月15日(発行日2026年10月15日から5年)
・満期まで利率は変わらない
共通事項
・購入単価:最低1万円から1万円単位 ・中途換金:発行後1年経過すればいつでも可能(元本割れなし)。ただし直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる
・利子への課税:20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税相当)が源泉徴収される
100万円を満期まで保有した場合の手取り利息シミュレーション
前提として、変動10年は本来半年ごとに利率が改定される商品ですが、今回は「発行時点の適用利率1.95%が償還まで10年間変わらなかった」と仮定して単純計算しています。
将来の金利動向を予測するものではなく、あくまで現時点の利率をそのまま伸ばした参考値である点にご留意ください。
また、個人向け国債は利子が半年ごとに現金で支払われる方式のため、複利での再投資は行わず単利で積み上げています。
変動10年(100万円・10年間、当初利率据え置き想定)
・税引前利子合計:19万5,000円(100万円×1.95%×10年)
・源泉徴収税額:▲3万9,614円 ・税引後利子合計(手取り):15万5,386円
・満期時受取総額(元本+手取り利子):115万5,386円
固定5年(100万円・5年間)
・税引前利子合計:11万2,000円(100万円×2.24%×5年)
・源泉徴収税額:▲2万2,753円
・税引後利子合計(手取り):8万9,247円
・満期時受取総額(元本+手取り利子):108万9,247円
満期時受取総額だけを見ると変動10年の方が多く見えますが、これは運用期間がそもそも10年と5年で倍近く違うためで、単純な差額(約6万6,139円)を「変動10年の方がお得」と読むのは早計です。
年当たりの手取り利子で比べると、固定5年が1年あたり1万7,849円であるのに対し、変動10年(据え置き想定)は1年あたり1万5,539円と、むしろ固定5年の方が多くなります。
これは今回の適用利率そのものが固定5年(2.24%)の方が変動10年(1.95%)より高いことを反映した結果です。
100万円を満期まで保有した場合の受け取り総額(税引き後)
参考:有名企業の配当利回りとの比較
固定5年の税引後利回り(1.7849440%)は、東証プライム市場の有名企業の配当利回りと、水準としてはさほど変わらないところまで近づいています。
4日終値と会社予想の1株配当(2027年3月期)をもとに計算すると、次のようになります。
・住友電気工業<5802>:終値2,133円、1株配当(会社予想)39.00円、配当利回り1.83%、最低取得金額(100株単位)21万3,300円
・ダイキン工業<6367>:終値20,500円、1株配当(会社予想)360.00円、配当利回り1.76%、最低取得金額(100株単位)205万円
もっとも、株式は値上がり・値下がりによる価格変動リスクを負う一方、配当は業績次第で減配・無配になる可能性もあり、満期保有なら元本割れしない個人向け国債とは性質が異なります。
あくまでキャピタルゲイン(値上がり益)を狙わず、配当だけに着目した場合の利回り水準の参考比較であり、値動きや配当額そのものを保証するものではありません。
上記の配当利回りは会社予想の1株配当をもとにした計算のため、実際の配当額は今後変更される可能性がある点にもご注意ください。
そもそも「変動10年」と「固定5年」は何が違うのか
個人向け国債には、満期まで一度も利率が変わらない固定金利型の「固定5年」「固定3年」と、半年ごとに実勢金利を反映して利率が見直される変動金利型の「変動10年」があります。
いずれも国が発行するため、満期まで保有すれば元本割れすることはありません。
変動10年は基準金利×0.66で利率が決まる設計になっており、市場金利から約34%が差し引かれます。一見割の合わない商品に見えますが、この差し引き分は「金利上昇リスク」と「価格変動という意味での元本割れリスク」を丸ごと消し去るための、いわば保険料のようなものと捉えると理解しやすくなります。
金利が上昇する局面では、半年ごとの見直しによって受取利子も増えていく点が変動10年ならではの特徴です。
一方の固定5年は、発行時点の利率が満期まで固定される代わりに、その後さらに市場金利が上昇しても恩恵を受けることはできません。
シミュレーション上の注意点・リスク
- 変動リスクを無視した仮定計算である点:今回の変動10年の試算は「当初利率が10年間変わらなかった」という単純化した前提に基づいています。実際には半年ごとに基準金利連動で利率が改定されるため、今後金利がさらに上昇すれば手取り利子は試算より増え、逆に金利が低下すれば試算より減る可能性があります(ただし年率0.05%の最低金利保証があります)
- 固定金利の機会損失リスク:固定5年は発行時点の利率で満期まで固定されるため、その後さらに市場金利が上昇しても、その恩恵を受けることはできません
- 中途換金の制限:発行後1年間は原則として換金できません。1年経過後はいつでも換金可能ですが、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる点に注意が必要です
- 資金拘束期間の長さ:変動10年は償還までの10年間、固定5年は5年間、資金が長期にわたって固定されます。10年先の資金需要を見通すのは簡単ではなく、この「資金拘束の長さ」への許容度も選択の重要な判断材料になります
まとめにかえて
9月発行の個人向け国債の利率をもとに100万円を満期まで保有した場合の手取り利息を試算すると、変動10年(当初利率据え置き想定)は15万5,386円、固定5年は8万9,247円という結果になりました。
ただし運用期間が異なるうえ、変動10年の試算は変動リスクを無視した参考値にすぎません。
実際に選ぶ際は、目先の利率差だけでなく、ご自身の資金拘束期間への許容度や、今後の金利動向をどう見るかを踏まえたうえで判断する必要があります。
記者コメント
固定5年の税引後利回り約1.78%と言われても、債券になじみがなければ、それが金融商品全体の中でどのくらいの水準なのかは直感的にイメージしづらいかもしれません。
そんなときは、同じくらいの利回りが得られる株式の配当利回りを物差しにしてみるのも一つの手だと思います。
今回参考として挙げた住友電工やダイキン工業といった有名企業も、現時点の株価と会社予想配当をもとに計算すると、配当利回りはおおむね1.8%前後の水準です。
もちろんこれは利率同士を単純に並べただけの比較であり、キャピタルゲインも期待できる一方で値下がりや減配のリスクを抱える株式と、満期まで保有すれば元本割れしない個人向け国債とでは、リスクの性質そのものが別物である点は変わりません。
それでも「有名企業の株を買って得られる配当利回りと、国が発行する個人向け国債の利回りがほぼ並ぶところまで来ている」という事実は、金利のある世界を実感する一つの目安になるのではないでしょうか。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
