安川電機、利益の柱はロボットではなくサーボとインバータ。7,000円台から急落した株価に何を見るか
Hyejin Kang_shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
05:30
安川電機、利益の柱はロボットではなくサーボとインバータ。7,000円台から急落した株価に何を見るか
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この記事はここがポイント

  • 安川電機の利益の柱はロボットではなく、モーションコントロール事業。
  • 2026年2月期は営業利益243億円とロボットを上回り、過去も利益率が高い。
  • 株価の変動は、半導体など設備投資に敏感な同事業の景気感応度を反映。

安川電機と聞いて、多くの人は工場で溶接や搬送をこなす産業用ロボットを思い浮かべるのではないだろうか。 私自身、安川電機<6506>を長いあいだ「ロボットの会社」として見てきた。 ところが事業ごとの利益を並べると、稼ぎ頭はロボットではない。 株価も5月末に7,000円台をつけたあと大きく崩れた。この会社の利益の重心がどこにあるのか、確かめてみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ロボットより稼いでいたのはモーター側の事業

安川電機のセグメントは、モーションコントロール、ロボット、システムエンジニアリングの3つが柱だ。 モーションコントロールには、ACサーボドライブや汎用インバータ、リニアモータ、コントローラといった製品が並ぶ。 機械を思いどおりの速さと位置で動かすための、いわば駆動と制御の部品群である。

2026年2月期のセグメント実績を見ると、売上収益(IFRS)ではロボットが2,470億円、モーションコントロールが2,360億円で、ロボットがわずかに上回った。 ここまではイメージどおりだろう。

ところが営業利益で並べると順位が入れ替わる。 モーションコントロールの営業利益は243億円で、ロボットの204億円を2割近く上回った。 売上高営業利益率もモーションコントロールが10.3%、ロボットが8.3%と、2ポイントの差がある。

展示会や工場の映像で目に入るのはロボットでも、利益を生んでいるのは、そのロボットや工作機械の中で動くモーターと制御の側だ。 表に見える製品と、利益の出どころが一致していない。 この会社を見るうえで、最初に押さえておきたいズレである。

利益の重心は、過去の実績でもモーター側にあった

これは2026年2月期だけの話ではない。 2010年代半ば以降のセグメント実績を並べると、営業利益でロボットがモーションコントロールを上回ったのは2025年2月期の1期だけだ。 このときもロボットの237億円に対し、モーションコントロールは230億円と、差はわずかだった。

好況期の差はもっと大きい。 2024年2月期のモーションコントロールの営業利益は389億円で、ロボットの251億円を大きく上回った。 2022年2月期には営業利益率が16.8%に達し、ロボットの9.7%を7ポイント以上引き離している。 さらに遡ると、2018年2月期のモーションコントロールは営業利益417億円、利益率19.7%という高い水準にあった。

裏を返せば、モーションコントロールは利益の振れ幅も大きい。 2025年2月期の営業利益は230億円で、前期の389億円から4割減った。 半導体製造装置や電子部品といった設備投資の波をまともに受ける事業だからだろう。

ロボットの利益率も4%台から11%台まで動いており、景気の波を受ける点は同じだ。 それでも利益率は、2025年2月期を除くすべての期でモーションコントロールがロボットを上回っている。 つまり安川電機は、利益の厚みでも振れ幅でも、モーター側が業績の方向を決める構造を持つ会社と読み取れる。 ロボットのイメージだけで業績を読もうとすると、利益の振れの主因を見落とすことになりかねない。

では、なぜこのズレは生まれるのか。 モーションコントロールの製品は、ロボットだけでなく工作機械や半導体製造装置、空調など、幅広い機械に組み込まれる部品だ。 完成品のロボットが特定の産業の設備投資に左右されやすいのに対し、部品は売り先の裾野が広い。 量が出る局面では利益率が大きく跳ね上がりやすい、部品事業らしい収益の形が表れていると考えられる。

2026年2月期決算に表れた両事業の温度差

直近の通期である2026年2月期の連結業績は、売上収益が5,421億円(前期比+0.8%)、営業利益が473億円(同▲5.7%)、当期利益が352億円(同▲38.2%)だった。

会社の説明によると、モーションコントロールでは電子部品市場や工作機械市場、空調用途向けを中心に需要が堅調だった。 半導体市場でもAI関連の投資がけん引する形で、期の後半にかけて回復が強まったという。 ロボットでは、日本・米州・欧州の自動車関連の設備投資が軟調だった一方、一般産業向けの需要は堅調に推移した。

セグメントの数字もこの説明と整合する。 モーションコントロールは減収ながら営業利益が前期比+6.0%と増益、ロボットは増収ながら営業利益が▲14.0%と減益だった。 売上で抜いたロボットが利益で後退し、モーター側が利益を積み増した。重心のズレが、この1期でむしろ広がった形だ。

連結の営業減益について、会社は売上増で付加価値が増えたものの、為替影響と間接費の増加を補えなかったとしている。 当期利益の大幅な減少は、前期に煙台東星磁性材料股份有限公司の株式の一部譲渡に伴う譲渡益と残存株式の再評価益を計上した反動によるものだ。

少し時間軸を伸ばすと、連結の営業利益は2022年2月期の528億円から、2023年2月期に683億円まで伸びたあと、662億円、501億円、473億円と3期続けて減っている。 2023年2月期から2026年2月期にかけての連結営業利益の減少幅のうち、半分強はモーションコントロールの営業利益が361億円から243億円へ縮んだことによる。 連結の利益の山と谷を形づくっているのも、やはりモーター側だ。

バランスシートにも気になる動きがある。 棚卸資産は2022年2月期の1,317億円から2026年2月期には2,107億円まで膨らんだ。 売上収益の伸びに比べて在庫の積み上がりが速く、需要の回復局面でこの在庫がどれだけ円滑に売上へ変わるかは、利益率の戻りを占ううえでの論点になるだろう。

2027年2月期の通期予想は、売上収益5,800億円(前期比+7.0%)、営業利益600億円(同+26.8%)、当期利益470億円(同+33.4%)と、増収増益を見込む。 ただし足元の2027年2月期1Qは、売上収益1,389億円、営業利益84億円で、営業利益の通期予想に対する進捗率は14.1%にとどまった。

業種の物差しも当てておく。 電気機器の営業利益率の中央値は6.9%、上位4分の1の境目は11.6%だ。 連結の8.7%は中央値を上回り、モーションコントロールの10.3%は上位の境目に近い。 ROEは7.7%で、電気機器の中央値7.7%とほぼ同じ水準にある。

この構造は株価に織り込まれているか

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価は荒い動きをたどった。 2025年10月末の4,200円台から、年末にかけて4,700円台へ上昇し、2026年2月末には5,500円台まで切り上がった。

3月末には4,000円台へ急落し、昨秋以降の月末終値では最も低い水準をつけた。 しかし4月末には5,500円台へ戻し、5月末には7,200円台と、昨秋以降の月末終値で最も高い水準に達している。 6月末も7,000円台を保った。

流れが変わったのは7月だ。 7月末には4,800円台まで下げ、6月末から3割ほど値を失った。 8月末は4,700円台、9月時点の終値は4,400円台で、昨秋から年末にかけての水準まで押し戻された形になる。

5月にかけての上昇には、会社も触れていた半導体市場の回復への期待が意識された可能性がある。 7月の急落は、1Q決算で示された進捗の遅さが警戒された可能性が考えられる。 もっとも、株価の振れの理由を一つに決めることはできない。

注目したいのは、この株価の振れ方そのものだ。 半導体の設備投資に敏感なモーションコントロールが利益の柱である以上、株価が設備投資の見通しに大きく揺さぶられるのは、構造上ある程度避けられない。 「ロボットの会社」として見ると不可解な振れ幅も、モーター側の景気感応度を重ねると筋が通って見えてくる。

筆者コメント

なぜ「ロボットの会社」というイメージは、利益の実態とずれたまま残るのか。 私は、見えるものと稼ぐものの違いにあると考えている。

ロボットは完成品で、展示会でも工場の映像でも主役になる。 一方、サーボやインバータは機械の内側に収まり、外からはほとんど見えない。 人の記憶に残るのは前者だが、利益の多くを生むのは後者だ。 部品メーカーが完成品の顔をして語られる、少し珍しい構図といえる。

このズレは、業績を追う読者にとって実務的な意味を持つ。 ロボットの受注や自動車の設備投資だけを見ていると、利益の振れの大きな部分を取りこぼす。 むしろ注視すべきは、半導体や電子部品、工作機械の設備投資の温度感だろう。

今後の決算では、連結の数字だけでなく、モーションコントロールの利益率がどこまで戻るかに目を向けることをおすすめしたい。 この会社の業績の振れを最も素直に映すのは、その数字だからだ。

参考資料

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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