2026年7月7日までに個人向け国債と7月の地方債、共同発行市場公募地方債の利率が決定しました。
6日には長期金利(新発10年物国債利回り)が一時2.830%にまで上昇し、約30年ぶりの高い水準を記録しました。
マーケットでは、高市政権が掲げる積極財政方針に伴う財政悪化リスクを意識した債券売りが続いており、金利の上昇圧力が強まっています。
今後もさらなる金利の先高感が意識されるなか、基準金利の引き上げに伴い、債券の利回り妙味がかつてないほど高まっています。
これを受けて、国債や地方債は有力な資産運用先として、いま大きな脚光を浴びています。
本記事では、利回りの変化をダイレクトに把握できるよう、地方債の標準的な発行パターンである「国債カーブ+20bp(0.20%)」の上乗せ金利で決定された、個人向けの主要銘柄をピックアップしました。
変則的な銘柄を排除し、比較が容易な「標準モデル」に絞り込むことで、4月から7月にかけた発行条件の具体的な推移と、その最新トレンドを紐解きます。
今月の債券市場における、最新の発行条件の動向をくわしく見ていきましょう。
10年物地方債は共同債で3.027%に
財務省および各自治体から発表された7月の10年物債券の条件は以下の通りです。
7月の個人向け国債と地方債の早見表
7月債
- 個人向け国債(変動10年): 1.80%(初回)
- 共同債(固定): 3.027%
- 千葉県(固定): 2.982%
- 札幌市(固定): 2.972%
半年ごとに適用利率が見直される変動型である個人向け国債は、初回の利回りが1.80%に決定しました。
一方、地方債の利回りは、日本の金利の基準である「国債の金利」に、一定の「上乗せ金利(スプレッド)」をプラスして決める仕組み(スプレッドプライシング)になっています。
ベースとなる国債の金利は、満期までの期間(数カ月のズレなど)によって細かく変動しますが、そこにプラスされる「上乗せ幅」は東京都や大阪府などを除いて、どの自治体も基本的に同じです。
そのため、表面上の利回りが違って見えても、実質的な条件は横並びで公平に決定されています。
7月の標準モデルの地方債は2.972~3.000%で決まり、個人向けの販売があった個別銘柄(抜粋)では千葉県債、札幌市債がそれぞれ2.982%、2.972%となりました。
なお、札幌市債は償還が2036年6月20日であり、厳密には10年にやや満たないためその分利回りも低くなっています。
ただ、実質的な上乗せ幅(国債カーブ対比+20bp)は同じです。
地方債は本来、プロの投資家である「機関投資家」が中心のマーケットですが、実はその一部は個人投資家にも販売されるようになっています。
7月分の新発債として3日条件決定の千葉県債や札幌市債などが個人でも購入できましたが、一部のネット証券では発売即完売という人気ぶりでした。
7日には、共同発行市場公募地方債(共同債)が3.027%で条件決定し、一部は個人投資家へも販売されるとみられます。
共同債とは?
共同債は、複数自治体がコスト削減と安定調達のため、地方財政法に基づき2003年から共同で発行する地方債です。最大の特徴は、資金調達の有無に関わらず全参加団体が「連帯債務」を負う強固な支払い体制にあります。
さらに災害時等の支払い遅滞を防ぐ専用ファンドも備えており、安全性への配慮が徹底されています。毎月発行されており、個人にとっても信頼性の高い投資対象といえるでしょう。
【4~6月債の振り返り】10年債の利回りを整理
それでは4月~6月の10年債の利回りを時系列で振り返ってみましょう。
4月債
- 個人向け国債(変動10年): 1.55%(初回)
- 共同債(固定): 2.612%
- 千葉市(固定): 2.570%
- 神奈川県(固定): 2.570%
5月債
- 個人向け国債(変動10年): 1.67%(初回)
- 共同債(固定): 2.767%
- 千葉県(固定): 2.727%
- 静岡県(固定): 2.707%
6月債
- 個人向け国債(変動10年): 1.74%(初回)
- 共同債(固定): 2.832%
- 埼玉県(固定): 2.764%
- 神奈川県(固定): 2.729%
利率の移り変わり・まとめ
4月から7月にかけての動きを振り返ると、「金利の上昇スピードがさらに加速している」ことがハッキリとわかります。注目ポイントは以下の3点です。
地方債がついに「3%の大台」を突破!
一番のニュースは、7月の地方債の利回りがついに3%の壁を超えたことです。
機関投資家向けの発行ですが、個別銘柄では福井県債と広島県債が3.000%でローンチしています。
こうしたなかで、共同債の利回りが3.027%となり、7月登場の地方債として最も高い水準となりました。
4月(2.612%)からわずか3カ月で0.4%以上も上昇しており、債券市場としてはかなり劇的な変化です。
7月の千葉県(2.982%)や札幌市(2.972%)といった地方債も、一気に2.9%台後半まで乗せてきました。
4月時点では2.5%台だったことを考えると、こちらも驚くほどのハイペースで利率が上昇しています。
また、実質的な上乗せ幅が、4~6月に+18bpだったものが、+20bpへとシフトしている(ワイドニング)点にも注目です。
個人向け国債(変動10年)は手堅く1.80%へ
国が発行する一番安全な「個人向け国債」も、4月の1.55%から.67%→1.74%→1.80%と、毎月確実にステップアップしています。
地方債 vs 国債:迷ったときのスマートな選び方
「国債より地方債のほうが利回りがいいからお得では?」と、目先の数字だけで決めるのは禁物です。
債券には「信用力が下がるほど利回りが上がる」という大原則があるため、国より信用力が一段下がる地方債のほうが利回りが高く設定されています。
一見似ている両者ですが、中身には決定的な違いがあります。
①2つの決定的な違い
「信用力」の差(国 vs 自治体)
- 国債 日本国が発行する、国内最高峰の安全資産
- 地方債破綻リスクは極めて低いが、自治体の財政状態による「わずかな格差」がある
「中途換金」の差(元本保証 vs 時価売却) 最重要チェックポイント!
- 個人向け国債:発行後1年が経てばいつでも国が元本(額面)で買い取り。ただし、ペナルティとして「直近2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685 」が差し引かれる点には注意。もらえる利息は減りますが、投資した元本そのものが目減りすることはありません
- 地方債:途中で売る場合は市場での「時価売却」。金利状況によっては元本割れするリスクあり
資金の性格で使い分ける
- 満期までじっくり持てるお金 → 利回り魅力の「地方債」
- 途中で使うかもしれないお金 → 守りの堅い「個人向け国債」
②あなたはどっち?目的別の選び方
10年物の債券で迷ったら、あなたの「金利の先行き予想」に合わせてチョイスしましょう。
個人向け国債(変動10年)が向いている人
- スタンス:「金利はこれからさらに上がる」
- 理由: 変動金利なので、世の中の金利上昇に合わせて、自分がもらえる利息も自動的に増えていくから
地方債(固定)が向いている人
- スタンス:「いまの高金利を今のうちにキープしたい」
- 理由: 基本が固定金利。いまの高水準な利回りを、満期を迎えるまでガッチリロックできるから
③ ジャーナリストが教える応用戦略
時期をずらす「組み合わせ戦略」
「当面は金利上昇に備えて変動国債を持ち、数年後に金利がピークに達したと判断したところで地方債(固定)に買い換える」というパズルのような投資スタイルも賢い選択です。
あえて買わずに「徹底様子見」
「金利の天井はまだ先だ」と読むなら、7月はあえて見送り、8月以降を虎視眈々と待つのも立派な戦略です。
実は今、債券市場では投資家にとって非常に有利な「裏の変化」が起きています。
地方債の利回りは「国債の金利+上乗せ金利(スプレッド)」で決まりますが、4〜6月まで「+18bp(0.18%)」だった上乗せ幅が、7月には「+20bp(0.20%)」へと拡大(2bpのワイドニング)しました。
ベースとなる国債金利そのものが上がって地方債の魅力が増しているにもかかわらず、さらに上乗せ幅まで広がっている。
これは、プロである機関投資家の間で「今は様子を見よう」という空気が広がり、需給が緩んでいる(買い手が少なくなっている)証拠です。
8月以降の展開は誰にも読めませんが、この需給の緩みが続けば、「さらなるワイドニング(上乗せ幅の拡大)」が起き、さらに高い利率で地方債や社債が登場する可能性も十分にあります。
「もっと美味しくなるまで待つ」という選択は、今まさに検討に値する作戦です。
まとめ
2026年7月、日本の金利は大きく動き、共同債が3%を超え、個人向け国債も1.80%になりました。
「これだけ選択肢が増えると、結局どう選べばいいの?」と迷ってしまう方も少なくないでしょう。
判断のヒントは、ご自身のお金の使い道とこれからの金利予想にあります。
「近々使うかも」「これからもっと金利が上がる」と思うなら、中途換金でも元本が守られ金利上昇に連動する個人向け国債(変動10年)が心強い味方になります。
一方、「満期まで使う予定はない」「今の高い利回りをキープしたい」なら、金利をガッチリロックできる地方債(固定)が魅力的に映るはずです。
今はあえて買わずに様子を見るというのも、立派な作戦の一つ。
それぞれのメリットやルールの違いをすっきり整理して、ご自身のライフプランに合った「心地いい付き合い方」を考えてみてください。
参考資料
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願いいたします。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
