梅雨が明け、本格的な夏の訪れを感じるこの頃、セカンドライフの過ごし方やお金について考える方も多いのではないでしょうか。
特に公的年金は、老後の暮らしを支える大切な収入源ですが、「自分は一体いくらもらえるのだろう」「周りの人はどのくらい?」といった疑問は尽きないものです。
また、昨今は物価の上昇も続いており、年金だけで生活していけるのか不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、公的年金の基本的な仕組みから、2026年度の最新情報、そして60歳代以上の平均的な受給額や生活実態まで、具体的なデータを交えて詳しく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、将来の資金計画を考えるきっかけにしていただければ幸いです。
公的年金の仕組みとは?基本の「2階建て構造」を解説
公的年金は「2階建て構造」になっている、と耳にしたことがある方もいるかもしれません。
これは、日本の年金制度が「1階部分の国民年金(基礎年金)」と「2階部分の厚生年金」で構成されていることを指します。
厚生年金と国民年金の仕組み
1階部分:国民年金の概要
- 加入対象者:原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方
- 年金保険料:国民年金保険料は全員一律ですが、年度ごとに改定されます(2026年度月額:1万7920円)
- 受給額:保険料を40年間すべて納付すると満額を受け取れます(2026年度月額:7万608円)
国民年金の加入者は第1号から第3号被保険者に区分され、このうち第2号被保険者が次に説明する厚生年金に加入します。厚生年金保険料を支払っている場合、別途国民年金の保険料を支払う必要はありません。
また、第3号被保険者についても、保険料を自身で納付する義務はありません。
2階部分:厚生年金の仕組みについて
- 加入対象者:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たした方が国民年金に上乗せして加入します
- 年金保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています(※2)
- 受給額:加入していた期間や納めた保険料の額によって個人差が生じます
※1 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まず、共済組合員を含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。 ※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます。
2026年度における年金の受給額
公的年金の支給額は、物価や賃金の変動を考慮して、毎年度見直しが行われています。
2025年度と比較すると、国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなります。
国民年金・厚生年金の具体的な受給額例(2026年度)
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):月額7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):月額23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)です。 ※厚生年金は、平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)を得ていた夫が40年間就業し、その配偶者が40年間国民年金に加入した場合の給付水準です。
厚生年金と国民年金の受給額を1万円単位で分析
多くの方が気になる「厚生年金」と「国民年金」の平均的な月額はどのくらいなのでしょうか。
ここでは厚生労働省の資料を基に、60歳から90歳以上までの全受給権者における「平均年金月額」と「受給額の分布」を見ていきます。
男女別の厚生年金・平均受給月額
厚生年金の平均額(全年齢)
出典:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の金額には国民年金部分も含まれています。
厚生年金の受給額分布を1万円刻みで見る
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均月額は全体で15万289円ですが、男女別に見ると男性が16万9967円、女性が11万1413円と、約6万円の差があることが分かります。
国民年金の男女別平均月額と受給額の分布
国民年金の平均額(全年齢)
出典:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の受給額分布(1万円単位)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は5万9310円で、男女別では男性が6万1595円、女性が5万7582円でした。
受給者数が最も多いボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」の層であり、多くの方が満額に近い年金額を受け取っていることがうかがえます。
65歳以上の無職夫婦世帯における家計の収支状況
この章では、65歳以上の無職世帯について、夫婦のみの世帯と単身世帯の1カ月あたりの家計収支を見ていきましょう。
ここでは、総務省が公表している「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」を参考にします。
65歳以上の生活費(夫婦世帯)
出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
無職夫婦世帯(65歳以上)の収入内訳
- 実収入:25万4395円
- うち社会保障給付:22万8614円(主に年金)
無職夫婦世帯(65歳以上)の支出内訳
- 実支出:29万6829円
- うち消費支出:26万3979円
消費支出は、一般的に生活費と呼ばれるものです。その内訳は以下の通りです。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
また、税金や社会保険料などの非消費支出は3万2850円で、内訳は次のようになっています。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
このモデル世帯の場合、1カ月の実収入25万4395円に対して支出の合計が29万6829円となり、毎月4万2434円の赤字という計算になります。
65歳以上の無職単身世帯における家計の収支状況
次に、単身世帯の家計収支についても同様に確認していきましょう。
65歳以上の生活費(単身世帯)
65歳以上の生活費(単身世帯)
無職単身世帯(65歳以上)の収入内訳
- 実収入:13万1456円
- うち社会保障給付:12万212円(主に年金)
無職単身世帯(65歳以上)の支出内訳
- 支出:16万1435円
- うち消費支出:14万8445円
消費支出の具体的な内訳は以下の通りです。
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教育:0円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
非消費支出の平均額は1万2990円でした。
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
単身世帯の場合、1カ月の実収入13万1456円に対して支出の合計が16万1435円となり、毎月2万9980円の赤字となっています。
国民年金の受給額を増やす「付加年金」という選択肢
働き方が多様化する現代では、厚生年金に加入しないフリーランスや自営業として働く方も増えています。
しかし、国民年金のみの受給となる場合、老後の年金額は少なくなる傾向にあります。
国民年金の受給額を増やす方法の一つとして、今回は「付加保険料の納付」について解説します。
国民年金付加年金制度
付加年金とは、定額の国民年金保険料(2026年度は1万7920円)に「付加保険料(月額400円)」を上乗せして支払うことで、将来受け取る年金額を増やせる制度です。
付加保険料を納付できる対象者
- 国民年金第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
付加保険料を納付できないケース
- 国民年金保険料の納付を免除されている方(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、学生納付特例のいずれか)
- 国民年金基金に加入している方
個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は、同時に加入することが可能です。ただし、iDeCoの掛金によっては併用できない場合もあるため注意が必要です。
シミュレーション:付加保険料を40年間納付した場合
仮に20歳から60歳までの40年間、付加保険料を納付し続けた場合を考えてみましょう。
65歳以降に受け取れる「付加年金額」は、「200円 × 付加保険料納付月数」で計算できます。
- 40年間に納付した付加保険料の総額:19万2000円(400円 × 480カ月)
- 65歳以降に受け取れる付加年金額(年間):9万6000円(200円 × 480カ月)
40年間で納付した付加保険料は合計で19万2000円です。一方で、毎年の年金受給額に9万6000円が上乗せされるため、年金の受給開始から2年で元が取れる計算になります。
まとめ
今回は、公的年金の基本的な仕組みから平均受給額、そして年金生活を送る高齢者世帯の家計の実態について詳しく見てきました。
厚生年金と国民年金の平均額には、現役時代の働き方によって差が出ることがデータから読み取れます。
また、統計からは年金収入だけでは家計が赤字になる世帯も少なくないという、少し厳しい現実も見えてきました。
老後の生活をより安心して送るためには、まずはご自身の年金見込額を「ねんきんネット」などで一度確認してみることが大切です。
その上で、国民年金に加入している方であれば付加年金といった制度の活用も選択肢の一つになりますので、ご自身のライフプランに合わせた準備を少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。

オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
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