この記事はここがポイント
- 住友電工27年1Q、情報通信が営業利益で自動車を上回る利益転換。
- 情報通信はデータセンター需要で伸長、営業利益率24.6%の高収益。
- 設備投資は情報通信へ減価償却費1.5倍を配分、成長分野へ資金集中。
社名に「電気」と入っているから、電線をつくる会社だと私は長らく思っていた。住友電気工業<5802>である。銅を引き伸ばして線にする、あの事業だ。ところが決算資料を開くと、売上の中心にいるのは電線ではない。しかも利益の重心は、いま別の場所へ移ろうとしている。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
売上の6割近くは、自動車の部品でできている
2026年3月期の連結売上高は5兆1,101億円。これをセグメントに割ると、社名から受ける印象は早々に崩れる。
最大は自動車関連事業で2兆9,353億円、構成比57.4%。次が環境エネルギー関連事業の1兆1,425億円で22.4%。以下、産業素材関連事業他が3,665億円で7.2%、エレクトロニクス関連事業が3,506億円で6.9%、情報通信関連事業が3,150億円で6.2%と続く。
自動車関連の中身について、会社はワイヤーハーネスや防振ゴムの需要を挙げている。車1台に張り巡らされる配線束と、振動を抑えるゴム部品だ。
たしかに配線ではある。ただ、これを「電線メーカー」と呼ぶのは、実態からかなり離れている。自動車部品メーカーと言ったほうが売上構成には忠実だろう。
社名から連想される電力ケーブルは、環境エネルギー関連のほうに入っている。祖業の名残は残っているが、それは今や2番手の事業だ。
売上の重心と、利益の重心は同じ場所にない
ここからが本題になる。セグメント別の営業利益を並べると、売上とは違う地図が現れる。
2026年3月期の営業利益は、自動車関連1,797億円、環境エネルギー関連906億円、情報通信関連774億円、エレクトロニクス関連395億円、産業素材関連事業他313億円だった。
金額では自動車が首位を保っている。だが利益率を横に並べると印象が変わる。自動車関連の営業利益率は6.1%。情報通信関連は24.6%である。実に4倍の開きだ。
売上構成比6.2%の事業が、営業利益では全体の2割弱を担っている計算になる。
伸び方も違う。2026年3月期の情報通信関連は売上高が前期比+44.2%、営業利益は+288.6%と、3.9倍近くに膨らんだ。自動車関連は売上+7.4%、営業利益+4.2%と、堅実だが緩やかな伸びにとどまる。
会社は、情報通信分野でデータセンター関連市場向け製品の需要が大きく増加したと説明している。光ファイバーや光デバイスといった、通信インフラの中核部材だ。
ここで、非鉄金属という業種区分に対する一般的な見方に触れておきたい。銅やアルミの市況に振られる素材産業、というイメージである。
だが数字はそれだけでは説明できない。非鉄金属業種の営業利益率の中央値は6.5%で、住友電気工業の自動車関連6.1%はほぼその水準にある。一方で情報通信関連の24.6%は、素材産業の利益率とは呼びにくい水準だ。
同じ会社の中に、業種平均並みの事業と、業種の枠から明らかにはみ出した事業が同居している。この二つは矛盾ではなく、単に別の産業構造に属しているというだけのことだろう。
連結の営業利益率8.2%、ROE(自己資本利益率)14.7%という数字も、業種中央値のそれぞれ6.5%、9.0%を上回る。押し上げているのがどこかは、もう見当がつくはずだ。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
