格付けはどう変わっていくのか?「見通し」というワンクッション
格付けは一度付いたら固定されるものではなく、発行体の業績や事業環境の変化に応じて随時見直されます。
ただし、いきなり格上げ・格下げが発表されるとは限らず、多くの場合「見通し(方向性)」の変更というワンクッションを挟むことが特徴です。
R&I・JCRとも、格付けの見通しは主に次の区分で示されます。
- ポジティブ:今後、格上げの方向で見直される可能性が高いことを示します
- ネガティブ:今後、格下げの方向で見直される可能性が高いことを示します
- 安定的:当面、変更の可能性が低いことを示します
- 方向性未定・不確定:格上げ・格下げのどちらの可能性もあり、方向性を絞り込めない場合に付されます
さらに変化がより差し迫っていると格付会社が判断した場合、R&Iでは「レーティング・モニター」、JCRでは「クレジット・モニター」という指定がなされ、通常より短期間で結論を出す前提で見直し作業が進められます。
実際の例として、JCRは2026年5月25日に南都銀行の格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更しています。
これは格付け記号そのものを引き上げたわけではなく、「今後、格上げの方向で見直される可能性が高まった」という中間的な意見表明にあたります。
見通しの変更を経ずに、直接格付け自体が変わるケースもある点には注意が必要です。
格付けをチェックする際の注意点は?
絶対視は禁物
格付けはあくまで格付会社による分析結果のひとつであり、将来の元本保証を意味するものではありません。
見通し変更は格下げ・格上げの"予兆"に過ぎない
見通しがネガティブになっても、そのまま格付けが据え置かれることもあります。
価格変動リスクは別問題
格付けが高くても、市場金利の変動によって途中売却時の価格が変動する点は変わりません
なぜ会社によって評価が分かれるのか?
格付会社ごとに評価基準や分析モデルが異なるため、同じ発行体でも会社によって評価が分かれることがあります。
実際のデータ比較では、国内2社同士ではR&IのほうがJCRより1ノッチ下に評価することが多いです。
社債発行の常連企業の多くは日本を代表する大企業のため、R&IとJCRの2社から格付けを取得しているところがほとんどです。
ただ、格付けを取得するにはコストがかかります。
このため、どちらか1社のみ、というケースももちろん存在します。
記者コメント
格付けは債券投資の「取っ掛かり」として便利な指標ですが、記号の意味や見通しの仕組みを理解したうえで、あくまで「参考」にするものです。
格付けだけを信じて投資判断を行うことは避けるべきです。
2001年に約900億円の個人向け社債がデフォルト(債務不履行)したマイカル債の事例がありますが、このとき格付けは「投資適格」級を維持したままでした。
お墨付きをもらってもデフォルトした例はあるのです。
実際に投資を検討する際は、格付けだけでなく発行体の事業内容や財務状況、目論見書の内容も必ず併せて確認しておきましょう。
参考資料
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
