金利というクッションが、下落時のリスクを軽減する
為替レートが140円から200円まで変動した場合の損益シミュレーションをグラフ化しました。
損益分岐点(1ドル163円×1万ドル×年5% 購入時)
156.75円を損益分岐点として、それより円安になれば利益、円高になれば損失が発生します。
180円まで円安が進んだ場合: 為替差益+金利収入で、約24万円のプラス
140円まで円高が進んだ場合: 為替差損が上回り、約17万円のマイナス
「140円まで円高になったら結局損をするではないか」と思われるかもしれません。
しかし、仮に金利のつかない状態で米ドルを保有していた場合、140円時点での損失額は約23万円に膨らみます。金利がつくことによって、損失額を約6万円分も軽減できているのです。金利が下落に対するクッションの役割を果たしていることが分かります。
今回のシミュレーションは為替レートそのもので計算していますが、実際には金融機関に支払う「為替手数料(スプレッド)」が発生します。一般的に、銀行の窓口で取引を行うと1ドルあたり片道1円(往復2円)ほどかかるケースがあり、これではせっかくの金利収入が目減りしてしまいます。取引コストを抑えるためには、同じ銀行でも手数料が優遇されるインターネットバンキングを活用したり、コストが低めに設定されているネット証券などを視野に入れ、取引チャネルを賢く選ぶことが大切です。
まとめ:感情的な売買を避け、客観的な「数字」を基準にする
今回は1年間の運用でシミュレーションしましたが、これを2年、3年と継続し、「複利(利息が利息を生む仕組み)」で運用した場合はどうなるでしょうか。保有するドルが加速度的に増えていくため、損益分岐点は150円、140円と段階的に下がっていきます。つまり、長期で保有するほど、円高に対する「防御力」が高まっていくのです。
為替相場は常に変動しており、時として予期せぬ急落を見せることもあります。
しかし、「金利」という確実性の高いリターンを計算に組み込むことで、「どこまで円高になっても耐えられるか」という明確な損益分岐点を導き出すことができます。
相場の動きに一喜一憂し、慌てて売却してしまうのは、投資において避けるべき行動の一つです。
外貨預金などの外貨建て資産を始める際は、今回のようにあらかじめシミュレーションを行い、客観的な数字に基づく運用方針を持っておくことが重要です。
【免責事項】
- 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
