シミュレーション②:1年前から毎月10万円を積立投資した場合の評価額
次に、2025年7月から2026年6月までの1年間、毎月末に10万円ずつ積立投資を続けた場合の評価額を試算してみましょう。
総投資額は一括投資と同じ120万円となり、これは新NISAのつみたて投資枠における年間上限額と同じです。
このシミュレーションは、各月末の基準価額で取得した口数を算出し、2026年6月末時点の基準価額で評価した値に基づいています。
オルカンで積立投資した場合
- 総投資額: 120万円(10万円 × 12カ月)
- 現在の評価額(税引前): 約138万2000円
- 評価益: 約+18万2000円(+15.1%)
S&P500で積立投資した場合
- 総投資額: 120万円(10万円 × 12カ月)
- 現在の評価額(税引前): 約137万2000円
- 評価益: 約+17万2000円(+14.3%)
積立投資では、価格が下落したタイミング(例えば2026年3月)でより多くの口数を安価に購入できる「ドル・コスト平均法」の効果が期待できます。今回のシミュレーションではオルカンがわずかに上回りましたが、その差は約1万円と僅差でした。
同じ120万円を投資した場合でも、一括投資と積立投資では評価額に約28万円もの差が出ていることがわかります。
この差が生まれた主な要因は、「投資資金が市場で運用されていた期間」の違いです。
一括投資では、最初に120万円全額を市場に投じるため、1年間の上昇相場の恩恵を最大限に享受できました。
対照的に、積立投資は毎月10万円ずつ段階的に投資するため、まだ投資されていない資金は運用されません。今回のような右肩上がりの相場では、資金全体の運用効率が低くなり、一括投資と比較して資産が増えるペースは緩やかになります。
しかし、これはあくまで市場が好調だった場合のシナリオです。
もしこの1年間が下落相場であったなら、結果は全く逆になっていたでしょう。一括投資は120万円全体が下落の影響を直接受けて大きな損失を出す可能性がありますが、積立投資なら未投資の資金が保全されるうえ、価格が下がった局面で安く買い増しができるため、損失を抑えやすくなります。
シミュレーション③1年間、同じ水準で下落していたらどうなった?《一括投資・積立投資》
反対に、この1年間が下落相場だった場合はどうでしょうか。
直近1年間のオルカンとS&P500のリターンは以下のとおり。
- 一括投資(オルカン):+38.2%
- 一括投資(S&P500):+36.5%
- 積立投資(オルカン):+15.1%
- 積立投資(S&P500):+14.3%
一括投資は単純計算、積立投資は「毎月均等に下がり続ける」と仮定して計算してみます。
一括投資・積立投資 下落相場シミュレーション
たとえばオルカンが同幅(▲38.2%)下落していたとすると、一括投資では約45万8000円のマイナスとなる計算です。
一方、積立投資では毎月下がっていく局面で安値をコツコツ拾えるため、損失は約24万6000円とおよそ半分に抑えられる試算になります。
上昇相場では積立が一括に劣る代わりに、下落相場では損失を大きく抑える緩衝材として機能するのが、ドル・コスト平均法の特性です。
まとめ
オルカンとS&P500、一括と積立のどちらが「正解」かは、投資目的や資産状況で異なります。
- 銘柄の選び方: どちらも優秀ですが、米国の成長性に賭けるならS&P500、1本で世界中に分散したいならオルカンが向いています。すでに持っている他の資産とのバランスで選びましょう。
- 投資方法の選び方: 一括投資は上昇相場でリターンを最大化できますが、下落時のダメージが大きくなります。一方、積立投資は下落相場で安く買い増しができ、損失を抑える緩衝材になります。
老後資金など「長期の資産運用」が目的であれば、暴落時も精神的安定を保ちやすく、ドル・コスト平均法で着実に資産を育める「積立投資」が最も安心な選択肢です。
相場の勢いに惑わされず、自身のリスク許容度に合わせて心地よく続けられる方法を選ぶと良いでしょう。
【投資に関するご注意】
この記事は、特定の金融商品の勧誘や売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。
参考資料
関連タグ
PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。社内表彰歴多数。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。現在は、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、および専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて、企画・執筆・編集・監修を幅広く担当している。
金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、NISAや投資信託をはじめとするファイナンス領域を主軸に、その土台となる年金制度や社会保障、住宅ローン、相続まで横断的に分かりやすく解説。
