この記事はここがポイント
- オルカンは全世界株、S&P500は米国株へ投資。オルカンも米国が6割超。
- 両ファンドは米国依存度が高く、両方持ちでの分散効果は限定的。
- 最適なファンドは、市場変動時も継続できる、自身の投資スタンスに合ったもの。
夏休みが近づいてきました。
まとまった休みを利用して、忙しい日々になかなか取り組めなかった新NISAでの資産運用を始めようと思っている方もいるかもしれません。
銘柄はインデックスファンドで人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー、通称オルカン)」か「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のどちらにするか、両方に投資するか。
「人気だからとりあえず両方買っておけば安心」と思われがちですが、元銀行員の視点からお伝えすると、中身を理解せずに「両方持ち」するのはおすすめしません。
また、どちらか1本に絞る場合でも中身を理解しておくことが重要だとお伝えしたいです。
この記事では、オルカンとS&P500の最新データ(2026年6月末時点)を比較し、最適な選び方を解説します。
オルカンとS&P500の「強み」と「両ファンドの違い」をおさえる
どちらも「eMAXIS Slim」シリーズに属するインデックスファンドですが、投資対象と設計の方向性が異なります。
それぞれの「強み」を理解した上で選ぶことが、長く投資を続けるための第一歩です。
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の強み
全世界の株式市場に幅広く投資するファンドで、先進国から新興国まで約3,000銘柄以上に分散しています。2026年6月末時点の地域別内訳は次のとおりです。
- 先進国株式(除く日本):82.7%
- 新興国株式:12.2%
- 国内株式:5.1%
「全世界に分散」とはいえ、国別では米国が63.0%を占め、日本(5.1%)、台湾(3.1%)、イギリス(3.0%)と続きます。米国の動向に大きく左右される点は押さえておきたいところですが、将来的に台頭する国・地域が変わっても、自動的に組み入れ比率が調整されていく点が最大の強みです。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の強み
米国の主要企業500社で構成されるS&P500指数に連動するファンドです。
資産のほぼ100%が米国株式で構成されており、米国市場の力強い成長をダイレクトに取り込める点が最大の強みです。設定来のリターンはオルカンを大きく上回っており、米国経済の底力をそのまま享受してきたことがわかります。
組入上位銘柄の比較(2026年6月末)
上位銘柄の顔ぶれは似ていますが、各銘柄への集中度に大きな差があります。
【オルカン】
- NVIDIA CORP:4.4%
- APPLE INC:4.0%
- MICROSOFT CORP:2.5%
- AMAZON.COM INC:2.3%
- ALPHABET INC-CL A:2.0%
- TAIWAN SEMICONDUCTOR(TSMC):1.8%
- BROADCOM INC:1.6%
- ALPHABET INC-CL C:1.6%
- MICRON TECHNOLOGY INC:1.3%
- META PLATFORMS INC-CLASS A:1.2%
【S&P500】
- NVIDIA CORP:7.3%
- APPLE INC:6.4%
- MICROSOFT CORP:4.2%
- AMAZON.COM INC:3.6%
- ALPHABET INC-CL A:3.2%
- BROADCOM INC:2.7%
- ALPHABET INC-CL C:2.6%
- MICRON TECHNOLOGY INC:2.0%
- META PLATFORMS INC-CLASS A:1.9%
- TESLA INC:1.8%
S&P500はNVIDIA(7.3%)・Apple(6.4%)など上位への集中度が高く、オルカンはそれぞれ約半分程度に分散されています。また、オルカンには台湾のTSMCが含まれるのも特徴のひとつです。
オルカンとS&P500の2026年6月末の最新運用実績を比較する
実際のパフォーマンスを期間別に確認してみましょう。
オルカン・S&P500 トータルリターン比較(2026年6月30日基準)
- 過去1カ月:オルカン +0.7% / S&P500 +0.3%
- 過去3カ月:オルカン +18.2% / S&P500 +19.4%
- 過去6カ月:オルカン +13.9% / S&P500 +12.3%
- 過去1年:オルカン +38.2% / S&P500 +36.5%
- 過去3年:オルカン +93.2% / S&P500 +95.9%
- 設定来:オルカン +280.2% / S&P500 +344.0% ※設定日:S&P500は2018年7月、オルカンは2018年10月
長中期ではS&P500がやや優勢ですが、直近1年・6カ月ではオルカンが上回っています。
「どちらが優れているか」は期間次第で結論が変わるため、一概には言えないのが正直なところです。
ひとつ注意しておきたいのが、直近1年の年利30%超という数字はあくまで「異例の好調期」の実績だという点です。
2026年3月には世界同時株安の影響で、両ファンドとも1カ月で2,000円以上の基準価額が下落した局面もありました。
「このリターンがこれからも続く」という前提は持たないようにしたいですね。
NISAで積み立てた場合、どれくらい増えるかシミュレーション
現実的な長期平均利回り(年率5〜7%)を想定して、つみたて投資枠で10年間運用した場合の試算です(金融庁「資産運用シミュレーター」算出)。
毎月3万円(元本360万円)
- 年率5%:合計463万円(運用収益+103万円)
- 年率6%:合計487万円(運用収益+127万円)
- 年率7%:合計513万円(運用収益+153万円)
毎月5万円(元本600万円)
- 年率5%:合計772万円(運用収益+172万円)
- 年率6%:合計812万円(運用収益+212万円)
- 年率7%:合計855万円(運用収益+255万円)
毎月10万円(元本1,200万円)
- 年率5%:合計1,544万円(運用収益+344万円)
- 年率6%:合計1,625万円(運用収益+425万円)
- 年率7%:合計1,711万円(運用収益+511万円)
※上記はシミュレーションであり、将来の成果を保証するものではありません。市況によっては運用成果がマイナスになる期間もあり得ます。
あなたにとっての「正解」はどちら?4つの判断軸
投資の格言に「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉があります。
分散投資の大切さを説いたものですが、オルカンとS&P500はどちらも米国株への比率が高いため、両方持ってもそれほど分散効果は変わりません。
「どちらが自分の正解か」を見極めるための判断軸を4つ整理しておきましょう。
① 米国経済への「強気度」で選ぶ
「今後も米国が世界経済をリードし続ける」とお考えなら、S&P500を多めに持つか一本化する選択肢があります。
「どの国が伸びるか分からないから広く持っておきたい」という方は、国別比率が自動調整されるオルカンが向いているかもしれません。
② 他の保有資産とのバランスを見る
預貯金・日本株・債券など米国株以外の資産を十分に持っているなら、リスク資産のコアとして「両方持ち」で米国比率を高める戦略も有効です。
資産全体のバランスを見た上で判断してみてください。
③ 投資期間(ライフプラン)で考える
- 20年以上の超長期運用:時代の覇権交代リスクに備え、投資国を自動調整してくれるオルカンが安心かもしれません
- 10年前後の中期運用:現在の米国の強さに期待するなら、S&P500の比率を高める選択肢もあります
④ 積立か、一括か
毎月定額を買い付ける「積立」なら時間の分散が働きます。まとまった資金を一度に投じる「一括購入」の場合は、購入タイミングの影響を受けやすいため、オルカンに絞るか、購入時期を分けるなどの工夫をしておくと安心ではないでしょうか。
まとめ:最適解は「市場が荒れても続けられる方」を選ぶこと
銀行員時代、相場が急落したタイミングに焦って解約し、損失を確定させてしまう方を何度も見てきました。
待っていたら戻るかもしれないけれど、損をしてでも不安や恐怖を手放したい、そのように仰っていました。
長く続けるためには、相場の上昇/下落に大きく反応しないことが大切です。
もちろん、ハイリスク・ハイリターンの投資だと、速やかに対応しなければいけない時もありますが、「NISAの対象ファンド」は金融庁が定める基準をクリアした資産形成に適したファンドですので慌てずに運用状況を確認してみましょう。
さて、オルカンかS&P500か、はたまた両方かについてですが、「米国集中か、世界分散か」というご自身のスタンスを整理し、次に「どれくらいの値下がりなら焦らず持ち続けられるか」を確認してみてください。
その2点が決まれば、あなたにとっての最適解が自然と見えてくると思います。
【免責事項】
投資にはリスクが伴います。
本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。社内表彰歴多数。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。現在は、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、および専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて、企画・執筆・編集・監修を幅広く担当している。
金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、NISAや投資信託をはじめとするファイナンス領域を主軸に、その土台となる年金制度や社会保障、住宅ローン、相続まで横断的に分かりやすく解説。
