NISAの普及にともない、いまや投資の定番として絶大な人気を集める「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」。
ファンド設定来の平均利回りが年率約19%という驚異的な実績を記録していることをご存じでしょうか。
それどころか直近の1年や3年を振り返ると、米国をはじめとする世界的な株高や円安の後押しを受け、これをさらに上回る極めて高いリターンで推移しています。
誰もが将来への期待を膨らませたくなるような高パフォーマンスを見せていますが、多くの資産運用コンサルティングを行ってきた元銀行員の視点からお伝えすると、この「年率19%」という数字の扱い方には注意が必要です。
なぜなら、これはあくまで過去の平均値であり、毎年一律で増え続けるわけではないからです。
時には”大きく”下落する年もある。この前提を理解しているかどうかで、将来のシミュレーションの見え方はずいぶん変わってくるはずです。
本記事では、オルカンの最新利回りデータをもとに、「もし年率19%が続いたら?」という夢のシミュレーションと、「現実的な5〜7%なら?」という堅実なシミュレーションの2パターンを比較します。さらに、NISAの非課税メリットがどれだけ手取り額の差を生むかも、具体的な数字で確認します。
オルカンの平均利回りは何%?トータルリターンとあわせて解説
2026年6月30日時点の月次レポートをもとに、オルカンのトータルリターンをまとめると以下の通りです。
オルカン「トータルリターン・平均利回り」
- 過去1年:38.2%(年率:38.2%)
- 過去3年:93.2%(年率換算:約24.6%)
- 設定来(約7年8カ月):280.2%(年率換算:約19.0%)
投資信託の世界において、設定来の年率換算リターンが約19.0%という数字はまさに異例といえます。
とくに直近1年を見ると、トータルリターンは38.2%に達しています。これは米国ハイテク株の急騰と円安進行という、2つの強力な追い風が重なったことが主な要因です。
しかし、こうした急成長にばかり意識がいきがちですが、2026年3月には1カ月で基準価額が2000円以上も下落する場面がありました。
このときSNSでは、オルカンホルダーたちの不安の声があふれていました。
高いトータルリターンの裏側には、それと同じだけの下落リスクがある。そのことをしっかりと理解しておくことが大切です。
NISAで運用すると「利益にかかる約20%の税金」がゼロになり、利益が丸ごと手元に残る
シミュレーションに入る前に、NISAの非課税メリットを確認しておきましょう。
通常の課税口座では、運用で生じた利益(売却益・分配金)に対して20.315%の税金がかかります。
NISAでは、この20%超の税金が0円になります。
利回りが高ければ高いほど、NISAの恩恵は大きくなります。
- 利益が100万円の場合 → NISA:100万円まるごと手元に / 課税口座:約79.7万円(税金約20.3万円)
- 利益が500万円の場合 → NISA:500万円まるごと手元に / 課税口座:約398.4万円(税金約101.6万円)
- 利益が1000万円の場合 → NISA:1000万円まるごと手元に / 課税口座:約796.9万円(税金約203.2万円)
「利益が大きいほど、税金で持っていかれる金額も大きくなる」。この当たり前の事実が、長期・高利回り運用においては数百万円単位の差になって現れます。
シミュレーション①夢のケース:「もし年率19%が続いたら」
まず、設定来の年平均利回り(約19%)がそのまま20年間続いたと仮定した場合を試算します。
条件:月5万円を20年間積立×年率19%
NISA積立投資シミュレーション
- 元本:1200万円
- 運用収益:9562万円
- 最終資産額:1億762万円
- NISAで運用した場合の手取り収益:9562万円(税金0円)
- 課税口座で運用した場合の手取り収益:約7619万円(税金約1943万円)
- NISAと課税口座の差額:約1943万円
上記は、あくまで年率19%が20年間一直線に続いた場合の”夢のシナリオ”です。
現実の投資でこのような経路をたどることは、まずないと考えてよいでしょう。
良い年があれば、悪い年もある。下落の年に保有を続けられるかどうかが、長期投資の現実です。
シミュレーション②現実的なケース:「年率5%〜7%で考える」
国際分散投資の長期リターンとして、金融の世界でよく使われる目安は年率5〜7%程度です。
過去の世界株式の平均的な実績を参考にした水準で、「好調すぎず、悲観的すぎない」現実的なシナリオとして、こちらの数字を使うことをおすすめします。
条件:月5万円を20年間積立×年率5%
NISA積立投資シミュレーション
- 元本:1200万円
- 運用収益:829万円
- 最終資産額:2029万円
- NISAで運用した場合の手取り収益:829万円(税金0円)
- 課税口座で運用した場合の手取り収益:約661万円(税金約168万円)
- NISAと課税口座の差額:約168万円
条件:月5万円を20年間積立×年率7%
NISA積立投資シミュレーション
- 元本:1200万円
- 運用収益:1338万円
- 最終資産額:2538万円
- NISAで運用した場合の手取り収益:1338万円(税金0円)
- 課税口座で運用した場合の手取り収益:約1066万円(税金約272万円)
- NISAと課税口座の差額:約272万円
年率19%という実績を見せているいま、オルカンホルダーにとって年率5〜7%は地味な数字に見えるかもしれません。
しかし、仮に20年間、平均して年率5%または7%で運用できれば、元本1200万円に対して最終的に829万〜1338万円の利益が積み上がるのですから、十分に魅力的な水準といえます。
「良いときだけを見ない」ための2つの心がけ
投資を始めてから右肩上がりの好調な時期しか経験していないと、いざ相場が下がったときに慌てて売ってしまいたくなるかもしれません。
とくにオルカンのような高パフォーマンスに引き寄せられて投資していると、下落局面で冷静でいるのが難しくなります。
以下の2点を事前に確認しておくことが、長期投資を続けるための「お守り」になるのではないでしょうか。
- 「もし30%下がったら」を金額で想像しておく:資産が1000万円になった時点で30%下落すると、300万円が一時的に消えます。「パーセントではなく金額で」想像したとき、それでも保有し続けられるかを事前に確かめておきましょう。
- 「自分が使う現実的な利回り」を決めておく:19%ではなく、5〜7%で「自分はこれだけ積み上がれば十分」という目標を設定すること。過度な期待を持たないことが、相場の下落時に動じないための心の準備になります。
まとめ
オルカンの運用は非常に好調です。ただし、直近の驚異的な「米国株高」と「円安」がこれを牽引しているため、今後、逆の動きが続く可能性があることを十分に理解しておきましょう。
なお、オルカンは信託報酬が年率0.05775%以内という業界最安水準である点も魅力の1つです。
NISAを活用することで利益に対する税金が0%になる非課税メリット、長期運用で複利を積み上げる仕組みと組み合わせれば、相場の上下にかかわらず効率良い資産運用が期待できます。
夢のような19%シナリオでも、現実的な5〜7%シナリオでも、「コストを最小限に抑え、税金をゼロにして、長く持ち続ける」という方針は変わりません。
大切なのは、高い数字に振り回されず、現実的な目標を持って淡々と続けることではないでしょうか。
【投資に関するご注意】
- 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。
- シミュレーション数値は概算であり、実際の運用成果を保証するものではありません。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
