この記事はここがポイント
- 2026年8月より高額療養費制度が改定、月額自己負担上限の引き上げと年間上限の新設
- 市販薬で代替可能な処方薬は2027年3月から薬剤料の4分の1相当が窓口で追加負担
- 国民健康保険の子どもの均等割保険料軽減は2027年4月より高校生年代まで拡大
少子高齢化が進む日本において、社会保障制度の要である「公的医療保険」は今、大きな転換期を迎えています。医療費の増大に伴う制度の持続可能性を確保するため、給付と負担のあり方を見直す法改正が次々と決定されており、これらは個人や家計の資金計画(マネープラン)にも直接的な影響を及ぼします。
筆者はファイナンシャルプランナー(FP)ですが、お客様の家計相談をお引き受けする中で、
「高額療養費制度って聞いたことはあるけれど、複雑でよくわからない」「そもそもどんな制度か知らなかった」というお声をよく耳にします。
いざという時の強い味方になる制度だからこそ、正しく理解しておくことが不可欠です。
本記事では、厚生労働省の最新データから日本人の健康と通院の実態を客観的に捉えた上で、成立した法改正における「5つの重要ポイント」、そして2026年8月から段階的に実施される「高額療養費制度の見直し」について、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から解説します。
年齢とともに上がる通院リスク、男女とも通院理由でいちばん多いのは「高血圧症」
厚生労働省が発表した「2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況」から、現在の日本人の有訴者や通院者の実態が明らかになっています。
※「有訴者(ゆうそしゃ)」とは、世帯員(入院者を除く)のうち、病気やけが等で自覚症状のある者のことを指します。
女性や高齢層で高まる「有訴者率」
人口千人当たりの有訴者率は、総数で255.7となっており、男女別では男性233.2、女性276.7と、女性の方が高い傾向にあります。また、男女ともに年齢が高くなるにつれて有訴者率が上昇していることがわかります。
性別にみた有訴者率の上位5症状(複数回答)
《男性のトップ5》
- 1位「腰痛」
- 2位「頻尿」
- 3位「肩こり」
- 4位「せきやたんが出る」
- 5位「鼻がつまる・鼻汁が出る」
《女性のトップ5》
- 1位「腰痛」
- 2位「肩こり」
- 3位「手足の関節が痛む」
- 4位「体がだるい」
- 5位「目のかすみ」
年齢とともに急増する「通院者率」
人口千人当たりの通院者率は、総数409.2、男性398.1、女性419.7です。年齢が上がるほど通院者率も高くなり、特に80歳以上では700を超えています。
性別にみた通院者率の上位5傷病(複数回答)
性別にみた通院者率の上位5傷病(複数回答)
《男性のトップ5》
- 1位「高血圧症」
- 2位「糖尿病」
- 3位「脂質異常症」
- 4位「歯の病気」
- 5位「眼の病気」
《女性のトップ5》
- 1位「高血圧症」
- 2位「脂質異常症」
- 3位「眼の病気」
- 4位「歯の病気」
- 5位「腰痛症」
このように、年齢を重ねるにつれて生活習慣病等で通院するリスクが高まります。将来の高額な医療費への備えとして、高額療養費制度などを正しく理解しておくことが重要です。
【令和8年成立】暮らしに直結「公的医療保険」5つの重要改正ポイント
今回の医療保険制度改革のポイント
2026年(令和8年)5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律案」は、全世代が納得できる医療保険制度を維持するためのものです。国民の生活や家計負担に関わる「5つの重要な改正ポイント」は以下の通りです。
市販薬で代替可能な薬の負担増(令和9年3月施行想定)
鼻炎や風邪薬など、市販薬(OTC医薬品)で代用できる処方薬について、薬剤料の「4分の1相当」が窓口で追加負担となります(こどもや難病患者などは特例で配慮予定)。
高額療養費の上限引き上げ&「年間上限」の新設(令和8年8月〜順次)
医療費の増加に伴い、月ごとの自己負担限度額が引き上げられます。一方で、新たに「年間上限」が設けられ、長期療養の方への配慮がなされます。
後期高齢者の負担判定に「金融所得」を反映(公布後5年以内)
窓口負担割合の不公平をなくすため、確定申告の有無に関わらず、上場株式の配当等の「金融所得」も負担判定に自動的に反映されるようになります。
妊娠・出産費用の「現物給付化」など支援強化(公布後2年以内)
妊婦の自己負担をなくすため、出産費用を医療保険から施設へ直接支払う仕組みが導入されます。また、定額の現金給付など幅広い支援策も実施予定です。
子育て世帯の国保料軽減が「高校生」まで拡大(令和9年4月)
国民健康保険における子どもの均等割保険料の半額軽減措置が、現在の未就学児から「高校生年代まで」大幅に拡大されます。
8月から変わる「高額療養費制度」3つの変更点をFPが解説
高額療養費の年間上限の新設
来月、2026年(令和8年)8月から高額療養費制度が一部見直されます。制度を維持するための「引き上げ」と、長期治療者を守る「サポート強化」の3つのポイントが実施されます。
ポイント①:月額の「自己負担上限」がアップ
一人当たりの医療費増加に伴い、月ごとの負担上限が引き上げられます。
(例:70歳以上・年収約260万円~約370万円の場合、通常の上限額が「5万7600円→6万1500円」に引き上げ)
ポイント②:長期療養者の味方「年間上限」がスタート
毎月医療費がかかる方の負担軽減策として「年間上限」が新設されます(毎年8月〜翌年7月で計算)。上限額(上記年収例では53万円)に達すると、それ以上の支払いは不要になります。
ポイント③:「多数回該当」の金額はそのまま据え置き
直近12か月で3か月以上高額療養費の対象になった場合、4か月目以降の負担が下がる「多数回該当」の金額は、長期治療者の負担を増やさないために据え置かれます。
まとめにかえて
統計データが示す通り、年齢を重ねるにつれて医療機関を利用する確率は上昇し、生活習慣病などのリスクは誰にでも生じる現実です。これからの時代、公的医療保険制度の持続可能性を保つための負担増や自己負担額の引き上げは避けられない流れにあります。
しかし、今回の改正のように「高額療養費の年間上限」が新設されるなど、長期治療に伴う過度な家計圧迫を防ぐセーフティネットも同時に強化されています。ライフプランにおける予備資金(医療費の備え)を計画する際は、民間保険の追加を検討する前に、まずこれら最新の公的制度の変更点と保障内容を正しく把握し、反映させることが重要です。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
