この記事はここがポイント
- 三菱UFJFG劣後債10NC5の当初5年利率は2.548%、前回債から0.752%上昇
- 三菱UFJFG債2.548%は、先行したみずほFG債2.607%を0.059%下回る条件決定
- 劣後債は弁済順位が低く、ベイルイン特約や実質5年の10NC5期限前償還条項が特徴
17日、三菱UFJフィナンシャル・グループの2本立て個人向け劣後債の条件が決定しました。
このうち、年限10年ながら期限前償還条項付の10NC5「第43回無担保社債(実質破綻時免除特約および劣後特約付)」の利率は2.548%となりました。
事前に提示されていた仮条件(2.250~2.850%)の中央に着地しています。
2日に2.607%で先行した、同タイプのみずほフィナンシャルグループ債の条件を0.059%下回りました。
昨年7月15日に条件決定した同タイプの前回債(第41回債、利率1.796%)と比較すると、今回の新発債の利率は0.752%上昇しており、国内の金利上昇局面を反映した、投資妙味のある利回り水準となっています。
以下に、今回決定した第43回債の発行要項をまとめました。
今回の募集要項と「格付け」をチェック
それでは、新発債の発行要項を見ていきましょう。
第43回の条件
- 銘柄名:株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ第43回期限前償還条項付無担保社債(実質破綻時免除特約および劣後特約付)
- 発行額:1,260億円
- 利率:当初5年間は2.548%(6年目以降は5年国債金利+0.600%にリセット、年率・税引前)
- 年限:10年(ただし5年後に期限前償還の可能性あり)
- 利払日: 毎年1月31日、7月31日
- 償還期限(満期):2036年7月31日(早期償還可能日:2031年7月31日)
- 申込期間:2026年7月21日~7月30日
- 払込期日: 2026年7月31日
- 最低投資金額:100万円
- 格付: AA-(R&I)/ AA-(JCR)
- 引受会社(引受額):三菱UFJモルガン・スタンレー証券(1,035億円)/大和証券(100億円)/野村証券(50億円)/岡三証券(35億円)/東海東京証券(30億円)/丸三証券(10億円)
三菱UFJFGの個人向け劣後債 発行要項
ベース金利の変動と前回債(2025年7月)との条件比較
仮条件を確認するにあたって、必ず把握しておきたいのがは国内の国債金利(ベース金利)の動向です。
三菱UFJFGが前回(2025年7月)に個人向けとして発行した同タイプの「第41回債」の実績と、今回の「第43回債」の仮条件について、指標となるベース金利の動きを交えて比較・解説します。
10NC5型(前回の第41回債vs今回の第43回債)
ベース金利(5年国債金利)を比較すると、 前回債の条件決定時(2025年7月中旬)はおよそ 1.0%台前半で推移していたのに対し、今回の仮条件提示時(2026年7月上旬)には 1.9%台前半まで上昇していました。
なお、足元(7月中旬現在)では 1.9%台半ばで推移しています。
劣後債の当初5年間の利率の比較
- 前回(第41回):1.796%
- 今回(第43回):2.548%
前回の利率である1.796%に対し、今回債は2.548%となっており、足元の金利環境に対応した設計になっていることが読み取れます。
また、5年経過後に期限前償還が見送られた場合の6年目以降の利率に関しては、前回の固定上乗せ幅(+0.720%)に対して0.600%と、引き下げられた水準が設定されました。
ベース金利が上昇した分、上乗せ幅は縮小(タイトニング)させたものとみられます。
【深掘り】先に決まった「みずほFG債」の水準と徹底比較!5bpタイトに
直近の個人向け劣後債市場を振り返ると、ライバルであるみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が7月2日に条件決定した劣後債が大きな話題となりました。
みずほFGの決定利率と、今回の三菱UFJFGの仮条件を並べて比較してみましょう。
10NC5型(当初5年)
- みずほFG(7月2日決定利率/発行額1,070億円):2.607%
- 三菱UFJFG(今回の条件/発行額1,260億円):2.548%
5年国債金利の推移を見ると、みずほFGの条件決定時(7月初め)および三菱UFJFGの仮条件提示時(7月上旬)ともに、おおむね1.9%台前半~半ばで推移していました。なお、足元では1.9%台半ば近辺で推移しています。
もっとも、今回三菱UFJFG債がみずほFG債を下回ったのは、明確にベース金利への上乗せ幅がタイトニングしたからです。
みずほFG債は国債に0.0650%上乗せで決まったのに対し、三菱UFJFG債では0.600%になりました。
結果として、三菱UFJFG債は、先行のみずほFG債を0.059%下回りました。
そもそも「劣後債」とは?普通社債との違い
最後に今回登場した「劣後債(劣後特約付社債)」という仕組みについて簡単におさらいしておきましょう。
劣後債とは、一言で言えば「普通の社債よりも、リスクを引き受ける分、高い利回りが期待できる債券」のことです。
投資家にとっては普通の社債よりもリスクが高い商品となるため、その見返りとして高い金利(利率)が設定されるのが特徴です。
投資する前に必ず押さえる!劣後債の3つのリスクと注意点
高い利回りは魅力的ですが、裏側にある「リスク」を正しく理解しておくことが債券投資では最も大切です。
劣後債を検討する際は、以下の3つの注意点を必ず頭に入れておきましょう。
万が一のときの「弁済順位が低い」
発行体(三菱UFJFG)が破産などの法的倒産手続きを行った場合、元本や利息が投資家に返済される順位(弁済順位)が、普通の社債や一般の借入金よりも後回し(劣後)になります。
つまり、普通の社債を保有している人たちにお金が返ってきた後、それでも資産が残っていれば返してもらえる、という仕組みです。
メガバンクならではの「実質破綻時免除特約(ベイルイン)」
金融機関が発行する劣後債には、非常に重要な特約がついています。
同債では、仮に発行体である三菱UFJFGの自己資本比率が著しく低下し、金融庁などから「このままでは実質破綻する」と認定された場合、この劣後債の元本や利息を支払う義務が永久に免除(カット)されるリスクがあります。
国が税金(公的資金)を投入して銀行を救う前に、まずは劣後債の投資家に身代わり(損失)になってもらうというルールです。
途中で満期が変わる?「期限前償還条項」の仕組み
今回準備されている券種の一つ(第43回債)には、5年後に発行体の都合で前倒し償還できる特約(10NC5)がついています。
国際的な銀行の規制(バーゼルⅢ)上、5年が経った最初のタイミングで前倒し償還されるのが市場の“既定路線(慣例)”となっており、プロの間では「実質5年債」として扱われます。
投資家としては「5年で返ってくるのが基本スケジュール」と捉えつつも、世の中の金利状況によってはその予定が後ろにズレ込む可能性(コールスキップ)があるという、変則的な満期の仕組みを理解しておく必要があります。
【プロの視点】なぜ銀行は5年で返したくなるのか?
世界のメガバンクが守るべき安全基準のルール上、こうした劣後債は「満期までの残存期間が5年未満」になった時点から、毎年20%ずつ段階的に自己資本への算入額が目減りしていきます。
銀行側としては、自己資本としての効率が悪くなった古い劣後債を5年で一度返し、新しいものに借り換えた方が都合が良いため、通常は5年で前倒し償還(コール)するのが市場の“お約束”となっています。
まとめ
三菱UFJの個人向け劣後債「第43回債」の利率が、仮条件中央の2.548%に決定しました。国内金利の上昇により、前回債(1.796%)から大幅にアップした魅力的な水準ですが、先行したみずほFG債(2.607%)はやや下回っています。
募集は2026年7月21日〜30日、最低投資金額は100万円で、発行額は 1,260億円。5年後の早期償還を基本とした「実質5年債」の設計です。
高利回りな一方、万が一の際の「弁済順位の低さ」や、実質破綻時に元利金がカットされる「ベイルイン特約」など、劣後債特有のリスクを正しく理解したうえでの判断が求められます。
投資を検討する場合は、必ず事前に証券会社が提供する「目論見書」に目を通してください。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
