この記事はここがポイント
- 2026年度障害年金は、基礎1級約106万、2級約85万、厚生3級最低63万の支給。
- 精神・知的障がいや内部疾患等、幅広い傷病が障害年金対象。
- 初診日の証明、5年時効に注意し、年金事務所へ早めの相談が重要。
7月も中旬を迎え、暑さが本格化する季節となりましたが、日々の暮らしの中で予期せぬ病気やケガに見舞われる可能性は誰にでもあります。
筆者はファイナンシャルプランナーとして、これまで多くのお客様のお金の相談業務を承ってきましたが、中には「もし働けなくなったら、どうやって生活していけばいいのか」と、将来に漠然とした不安を抱えている方も少なくありませんでした。
このような万が一の事態に、現役世代の生活を経済的に支えるための公的制度が「障害年金」です。
この記事では、日本年金機構の公表データなどを基に、2026年度の支給額や対象となる傷病、申請手続きの注意点について、わかりやすく解説していきます。
2026年度の障害年金はいくら?障害基礎年金1級・2級の支給額と障害手当金の最低保障額
障害年金には、主に自営業者などが加入する「障害基礎年金」と、会社員や公務員が加入する「障害厚生年金」の2種類があります。支給される年金額は、障がいの重さ(1級から3級)、年齢、初診日にどの年金制度に加入していたかによって変わります。2026年度の年間支給額の目安は、次のようになっています。
障害年金の年間支給額(2026年度)
障害等級1級の場合の年金額
- 障害基礎年金(1階部分):105万9125円(※昭和31年4月1日以前に生まれた方は105万6125円)
- 障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
障害等級2級の場合の年金額
- 障害基礎年金(1階部分):84万7300円(※昭和31年4月1日以前に生まれた方は84万4900円)
- 障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
障害等級3級の場合の年金額
- 障害基礎年金(1階部分):支給なし
- 障害厚生年金(2階部分):報酬比例の年金額(※最低保障額63万5500円、昭和31年4月1日以前に生まれた方は63万3700円)
障害厚生年金の1級または2級と認定された場合、1階部分にあたる「障害基礎年金」もあわせて受給できます。ただし、障害基礎年金には3級の区分がない点に注意が必要です。そのため、初診日に国民年金のみに加入していた自営業者やフリーランスの方は、障害の状態が3級に該当しても障害年金は支給されません。一方で、初診日に厚生年金に加入していた会社員や公務員であれば、障害厚生年金(3級)を受け取れる可能性があります。
一時金が支給される「障害手当金」とは?
また、障害厚生年金3級より軽い障がいが残った方向けに、「障害手当金(一時金)」という制度が用意されています。これは年金のように定期的に支給されるのではなく、一度だけまとまった金額が給付されるものです。障害手当金の金額は報酬比例の年金額の2倍となり、最低保障額として127万1000円(昭和31年4月1日以前生まれの方は126万7400円)が設定されています。
障害年金の対象となる傷病は?新規受給者の約7割が「精神・知的障がい」
障害年金の支給可否は、特定の病名のみで判断されるわけではありません。病気やケガが原因で、日々の生活や仕事にどれくらいの制約があるかが総合的に評価されます。このため、障害者手帳を持っていなくても申請は可能で、身体的な障がいはもちろん、精神疾患や外見からでは判断しにくい内部疾患まで、幅広い傷病が対象に含まれます。
- 精神・知的障がい:うつ病、統合失調症、発達障がい、認知障がいなど
- 外部障がい:手足の機能障がい、視覚・聴覚の障がいなど
- 内部障がい:がん、心疾患、腎疾患、呼吸器疾患、糖尿病、血液疾患など
新規受給者の内訳から見る傷病の傾向
日本年金機構が公表した『障害年金業務統計(令和6年度決定分)』を基に、どのような障がいによって支給が決定されたのか、診断書の種類別の件数から傾向を確認します。
令和6年度 診断書種類別の支給件数
支給決定件数の中で、最も大きな割合を占めているのは「精神・知的障がい」です。
- 新規に受給を始めた方(新規裁定)では、約13万件のうち67.0%にあたる約8万7000件を占めています。
- 受給を更新した方(再認定)では、約30万6000件のうち79.1%にあたる約24万件となっています。
このように、精神・知的障がいの分野では、新規受給・更新ともに多くの支給決定が行われていることがわかります。障害年金は、障がいを持つ方々の暮らしを経済的に支える大切な社会保障制度であり、これからも公正な審査と制度の充実が期待されます。
障害年金のQ&A、初診日の証明や受給開始後の症状悪化などFPが解説
ここでは、障害年金の申請や受給について、多くの方が疑問に思う点についてQ&A形式で解説します。
Q1. 初診日の証明ができないときはどうすればよいですか?
障害年金の請求において、初診日の証明は非常に重要な要素です。しかし、医療機関が閉院していたり、カルテの保存期間が過ぎて破棄されていたりすると、証明書の取得が難しくなります。そのような状況でも、診察券やお薬手帳といった、初診日を客観的に推測できる資料を提出することで、申し立てた日が認められるケースがあります。すぐに諦めるのではなく、まずは最寄りの年金事務所へ相談してみてはいかがでしょうか。
Q2. 障害認定日から時間が経過していても請求は可能ですか?
障害認定日から数年が経っていても、請求手続きを行うことはできます。その場合、障害認定日時点の診断書と、現在の状態を示す診断書の2種類を提出することが求められます。ただし、公的年金には5年の時効が設定されている点には注意が必要です。確実に給付を受けるためにも、対象となる可能性があれば、早めに専門窓口へ相談することをおすすめします。
Q3. 受給開始後に症状が悪化したら等級は変更できますか?
現在3級の障害厚生年金などを受給している方が、症状の悪化により上位の等級に該当する状態になった場合、「額改定請求」をすることで年金額の見直しが可能です。この請求手続きは、原則として65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。ただし、過去に障害基礎年金(2級以上)の受給権を得た経験がある方は、65歳を過ぎてからでも改定請求を行えます。
まとめ:万が一に備える障害年金、早めの相談が重要
この記事では、日本年金機構などが公表しているデータに基づき、2026年度における障害年金の支給額や受給のポイントについて解説しました。この制度は、身体的な障がいに限定されず、うつ病などの精神疾患や、がんのような内部障がいも幅広く対象としているのが特徴です。
しかし、受給するためには初診日の証明が必要であったり、5年という時効があったりと、注意すべき点がいくつか存在します。制度の仕組みをきちんと理解し、早めに行動を起こすことが大切です。万が一の時に生活の基盤を確保するためにも、必要であれば年金事務所などの専門窓口へ相談してみるのが、確実な手続きへの第一歩となるでしょう。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
