この記事はここがポイント
- 2026年度年金は増額も、物価高3.2%で実質価値は目減り傾向。
- 厚生年金は男女で約5万8000円の差、働き方で月額10万円超の年金額差。
- 夫婦2人のゆとり老後には月額39万1000円必要も、年金不足で資産形成が重要。
2026年も後半に入りました。6月15日には新年度の改定額が反映された公的年金が支給されましたが、次の支給日は8月14日(金)となります。
厚生労働省の発表によると、今年度の年金額は国民年金が前年度比で+1.9%、厚生年金は+2.0%と、4年連続で増額改定となりました。
しかし、総務省が公表した2025年の年平均消費者物価指数(総合指数)は前年比で+3.2%の上昇を記録。
6月30日に公表された帝国データバンクの調査(※)では、7月の飲食料品値上げが2566品目に達しています。
9月には3000品目を超えると予測されており、「中東発」の値上げラッシュが夏以降に本格化する見込みです。
つまり、年金の額面は増えても物価の上昇ペースには追いついておらず、実質的な価値は目減りしているのが現状といえるでしょう。
親や祖父母の世代とは異なり、現代は長寿化による長い老後を見据え、計画的な老後資金の準備やシニア期の就労が求められます。
この記事では、シニアの暮らしとお金にまつわる情報を発信する筆者が、老後の暮らしに不可欠な「公的年金」について、基本的な仕組みや受給額の男女差を整理して解説。
2026年8月から65歳以上の受給者へ順次送付される「公金受取口座登録の意向確認書」など、最新の話題性あるトピックを交えて詳しく見ていきます。
※帝国データバンク 「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年7月
年度の年金は4年連続の増額!しかし物価高で『実質目減り』の不安も。
今回は年金制度の基本や男女差の実態に加え、2026年8月から65歳以上の年金受給者へ順次届く『公金受取口座登録に関する意向確認書』など、ご自身やご家族のために知っておきたい最新の重要トピックを分かりやすく解説します。
厚生年金と国民年金、何が違う?公的年金制度の基本を解説
まず、年金制度の基本的な仕組みから確認しておきましょう。
日本の公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の二階建て構造で成り立っています。
国民年金・厚生年金の違いとは?
- 【国民年金】…原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。年金保険料は全員一律となっています。
- 【厚生年金】…会社員や公務員などが、国民年金に上乗せして加入する制度です。年金保険料は給与や賞与といった報酬額に応じて決まります。
例えば、自営業や専業主婦(夫)の方は国民年金のみに、会社員や公務員の方は国民年金と厚生年金の両方に加入することになります。
8月以降順次届く「公金受取口座登録の意向確認書」とは?
年金の基本構造に加えて、2026年後半に特に押さえておきたい話題があります。
それは、8月から順次送付される「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」です。
公金受取口座登録法の改正により、年金振込口座を公金受取口座として登録することが可能になりました。
そのため、2026年(令和8年)4月15日時点で65歳以上の年金受給者(すでに登録済みの方などを除く)を対象に、8月から翌年2月にかけて簡易書留で意向確認書が届く予定です。
手続きの詳細等については8月に改めて案内される予定ですが、専用のフリーダイヤルも開設されます。重要な郵便物を見落とさないよう、ご自身やご家族のポストの確認を心がけましょう。
2026年8月から翌年2月にかけ、65歳以上の方へ『公金受取口座登録に関する意向確認書』が簡易書留で届きます。
すでに登録済みの方などを除き、年金振込口座を公金受取口座に登録するかの確認です。
大切な案内なので、ご実家の親御さんの郵便物など、見落としがないか家族で声を掛け合いましょう。
公的年金の平均受給額、男女でどれくらい違う?最新データで見る実態
ここからは、厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、国民年金と厚生年金の男女差を具体的に見ていきましょう。
国民年金の平均月額、男女差は約4000円
【男性】
- 平均受給額…6万1595円
【女性】
- 平均受給額…5万7582円
国民年金は加入義務があり、保険料も一律であるため、男女間の差は4013円と比較的小さくなっています。
しかし、現役時代の給与や加入期間が反映される厚生年金では、この差が大きく開くことになります。
厚生年金の平均月額、男女差は約5万8000円に拡大。その理由は?
【男性】
- 平均受給額…16万9967円
- 受給権者数…1067万9944人
【女性】
- 平均受給額…11万1413円
- 受給権者数…540万5752人
厚生年金になると、男女間の差は月額で5万8554円にまで広がります。また、受給資格を持つ人の数も、男性が女性の約2倍です。
この差が生まれる背景には、女性が結婚や出産、育児といったライフイベントを機に退職したり、働き方を変えたりするケースが多いことが挙げられます。
その結果、厚生年金の加入期間が短くなったり、現役時代の給与が低くなったりすることが、年金額に影響していると考えられます。
【働き方別】将来の年金はいくら?5つのモデルケースで見る受給額の目安
全体の平均額だけでは、自分自身の将来を具体的にイメージするのは難しいかもしれません。
ここでは、厚生労働省が公表した「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」に記載されている「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」を参考に、5つの働き方パターン別の受給目安額を紹介します。
- 【パターン1】会社員として長く勤務した男性(厚生年金が中心)
- 想定:平均収入(月額換算)約50.9万円で約40年就業
- 年金月額の目安:17万6793円
- 【パターン2】自営業・フリーランスとして働いた男性(国民年金が中心)
- 想定:厚生年金への加入期間が約7.6年と短く、大部分が国民年金
- 年金月額の目安:6万3513円
- 【パターン3】キャリアを重ねた女性(厚生年金が中心)
- 想定:平均収入(月額換算)約35.6万円で約33年就業
- 年金月額の目安:13万4640円
- 【パターン4】自営業として働いた女性(国民年金が中心)
- 想定:厚生年金への加入期間が約6.5年と短い
- 年金月額の目安:6万1771円
- 【パターン5】専業主婦の期間が長い女性(第3号被保険者が中心)
- 想定:扶養内で過ごした期間が長く、厚生年金の加入期間は約6.7年
- 年金月額の目安:7万8249円
この結果から、同じ期間働いたとしても、厚生年金への加入歴の有無によって、将来受け取る年金額に月額10万円以上の差が生じる可能性があることがわかります。
夫婦2人の年金は合計いくら?世帯別の受給額シミュレーション
個人の受給額の目安を見てきましたが、夫婦2人世帯では合計でいくらになるのか気になる方も多いでしょう。
そこで、前の章で紹介した5つのモデルケースを組み合わせて、夫婦のパターン別に年金の合計目安額をシミュレーションしてみます。
共働き・専業主婦世帯・自営業、あなたの家庭はどのタイプ?
- 【会社員同士の共働き夫婦】…合計 約31万1400円
(パターン1の夫 17万6793円 + パターン3の妻 13万4640円) - 【会社員の夫+専業主婦の妻】…合計 約25万5000円
(パターン1の夫 17万6793円 + パターン5の妻 7万8249円) - 【自営業・フリーランス夫婦】…合計 約12万5200円
(パターン2の夫 6万3513円 + パターン4の妻 6万1771円)
なお、自営業者の配偶者で専業主婦(夫)の場合、会社員の配偶者のように第3号被保険者にはなれず、自身で国民年金保険料を納める第1号被保険者となるため、3つ目の「自営業・フリーランス夫婦」のケースに近くなります。
このように、夫婦の働き方の組み合わせによって、年金の合計受給額には最大で月額約18万円もの差が生じることがわかります。ご自身の世帯がどの組み合わせに近いか、イメージできたでしょうか。
年金だけで「ゆとりある老後」は実現できる?生活費との差額を検証
公的年金は老後の生活を支える重要な制度ですが、年金収入だけで生活が成り立つのか、不安に感じる方も少なくないでしょう。
生命保険文化センターの「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人がゆとりのある老後生活を送るために必要と考える費用は、月額で平均39万1000円という結果でした。
「ゆとりある老後生活費」はいくら必要?
一方で、「最低限の日常生活」に必要な費用だけでも月額平均23万9000円とされています。先ほどのシミュレーションで最も年金額が多かった「会社員同士の共働き夫婦」(約31万1400円)でも、「ゆとりある老後」の生活費には約8万円不足する計算です。
「会社員の夫と専業主婦の妻」の世帯(約25万5000円)では、最低限の生活費はなんとか賄えるものの、ゆとりある生活には13万円以上不足します。自営業夫婦のケースでは、さらに厳しい状況が予測されます。
現役世代が今からできる備えとは?「資産寿命」と「健康寿命」を延ばすヒント
現在の年金受給者が現役で働いていた時代は、今ほど女性の社会進出が進んでいませんでした。
そのため、現在の現役世代が年金を受け取る頃には、こうした受給額の男女差は縮小している可能性も考えられます。
しかし、厚生年金の平均月額で男女間に約5万8000円の差がある現状や、物価高による実質的な年金の目減りは無視できません。
だからこそ、今回ご紹介した2026年8月からの「公金受取口座登録の意向確認書」への対応など、国からのお知らせをしっかりと確認し、制度の変更を正しく理解する知識が不可欠です。
今の現役世代は、「ねんきん定期便」などで自身の受給見込額を早めに把握し、新NISAやiDeCoなどを活用した資産形成も並行して行うなど、年金制度の最新動向を押さえながら、自分に合った老後への備えを計画的に始めていきましょう。
厚生年金の男女差は約6万円。物価高や長寿化が進む中、年金などの制度変更を正しく知り賢く対応することが求められます。
年金エイジのみなさんは日本年金機構から届くお知らせ類をしっかり確認&&現役世代はNISA等で資産形成に取り組むなど、最新動向をチェックしながら複数の柱で老後の備えを作っていくことが大切です。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 公益財団法人生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」
- 公益財団法人生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
- 株式会社帝国データバンク「飲食料品値上げ、7月は2566品目 年間2万品目ペース 「中東発」値上げラッシュ、夏以降に本格化 9月は年間最多の3千品目超えに」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
- 日本年金機構「令和8年8月から年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書をお送りします」
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
