私はかつて証券会社の法人担当として、地方の共済組合や自治体、学校法人などの資産運用に携わってきました。
そこで痛感したのは、こうした公的な資金は「短期で増やす」ものではなく、長い時間をかけて着実にお金に働いてもらう性格のお金だ、ということです。
これは、私たち一人ひとりが受け取る年金にも通じます。年金は、現役時代に納めてきた保険料に、老後の暮らしのなかで長く働いてもらう仕組みだといえます。
大切なことは「お金に働いてもらいたい」ということです。そう考えると、いくら受け取れるかだけでなく、そのお金をどう運用するのか、またその受け取り方や、家計のどこにコストがかかっているのかまで含めて眺めることが大切になります。だからこそ、まずは足元の制度を正しく知ることから始めたいです。
梅雨も明け、本格的な夏の暑さが続く時期になりました。
エアコンの電気代や帰省の準備など、なにかと出費がかさむのも、この季節ならではといえます。
そんな「なんとなくの支出」に目が向くいまだからこそ、老後の収入の柱である公的年金についても、あらためて向き合ってみたいところです。
公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっていて、現役時代の働き方によって受け取れる金額が大きく変わってきます。
また、2026年度の制度改定によって、それぞれの年金受取額は前年度比でプラスとなりました。
本記事では、最新のデータをもとに、1回の年金支給日で標準的とされる「47万5000円」を受け取る世帯とはどんな世帯なのか、そして全体のどれくらいを占めるのかを、コストの視点も交えながら整理していきます。
【基本を理解】公的年金は「国民年金と厚生年金」の2階建て構造
公的年金制度は、土台となる「国民年金」と、その上に積み上がる「厚生年金」で成り立つ、いわゆる2階建て構造です。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入する制度で、公的年金の土台を担う部分です。
ここでかかる保険料(※1)は、所得の多い少ないに関係なく、一律で設定されています。
一方の厚生年金は、会社員や公務員などが対象です。国民年金に上乗せするかたちで加入し、こちらは給与や賞与に応じた保険料(※2)を負担する仕組みになっています。
国民年金保険料を480月すべて納めきれば、65歳以降に老齢基礎年金を満額(※3)受け取れますが、未納の期間があれば、その分だけ受給額は差し引かれていきます。
また、厚生年金の受給額は、加入していた期間の長さと、これまでに納めた保険料の額をもとに計算されます。
このように、年金の受給額は一人ひとり異なりますが、厚生労働省が年金改定のたびに公表する「年金額例」は、目安として押さえておきたい数字です。
2026年度の最新例では、「標準的な夫婦世帯」において、1回の年金支給日に約47万5000円が支払われる水準とされています。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万608円
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級を保有。みずほ証券会社出身。証券会社では、個人向けコンサルティング営業に加え、地方公共団体や学校法人等への債券を活用した法人向け資産運用業務を経験。現在はIFAとして個人向け資産運用のコンサルティング業務を行う。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
