キーエンス(センシング技術の巨人)
キーエンスは、センサーや画像処理システム(マシンビジョン)を手掛ける大手企業です。フィジカルAIが自律的に動くためには、周囲の状況を正確に感知する「目」や「触覚」の役割を果たすセンサーが不可欠です。
キーエンスは、製造業など産業用途の顧客基盤が非常に強固です。顧客が工場にAIロボットを導入しようとする際、キーエンスのセンサー技術やソリューション提案力が大きな強みを発揮すると泉田氏は見ています。
村田製作所(電子部品の心臓部)
村田製作所は、電気を一時的に蓄えたりノイズを取り除いたりする「MLCC(積層セラミックコンデンサー)」で世界首位級のシェアを持ちます。
どんなに高度なAIロボットであっても、内部は電子回路で構成されており、そこには必ずコンデンサーが必要です。フィジカルAIが高度化し、処理する情報量が増えるほど、搭載される電子部品の点数も増加します。
そのため、ロボット市場の拡大は、そのまま村田製作所のMLCCの需要拡大に直結する構造となっています。
まとめ:日本の「部品」が持つ構造的な強み
フィジカルAIという巨大なテーマにおいて、日本企業はどのような立ち位置にあるのでしょうか。泉田氏は、完成品メーカーの強さを認めつつも、部品メーカーの構造的な強みを強調します。
「もちろん完成品のロボットも強いんだけど、これはグローバルで見ても強いと思います。その最終製品が強いものが日本の部品がいっぱい入ってると、そんな構造ですね」
AIの頭脳部分で海外企業が覇権を握ったとしても、あるいは海外のロボットメーカーが完成品市場でシェアを伸ばしたとしても、物理的に動くロボットを作る以上、日本の高品質な減速機、モーター、センサー、電子部品は欠かすことができません。
つまり、世界のどの企業がフィジカルAIの競争に勝ったとしても、日本の部品メーカーには需要が落ちてくるという構造的な強みがあるのです。
一方で、投資にあたってはリスクも認識しておく必要があります。国策として掲げられている戦略17分野ですが、今後の政権交代や政策の変更によって、投資の優先順位や規模が見直される可能性はゼロではありません。
また、フィジカルAIのような先端テーマに関連する銘柄は、将来の成長期待が先行して株価が形成されやすいため、価格の変動(ボラティリティ)が大きくなる傾向があります。
大きな市場規模(TAM:Total Addressable Market=獲得可能な最大市場規模)が見込まれるテーマを捉えつつ、グローバルで競争力を持つ企業を見極めることが重要です。今回紹介した企業を入り口として、ご自身の投資スタイルに合った銘柄を深掘りしてみてはいかがでしょうか。
フィジカルAIは日本企業の競争優位性を確立した領域だと考えています。現在はデジタル空間におけるAIの使い方やその設備投資、特にデータセンターへの投資が株式市場で話題ですが、今後はそのAIを使ってリアルの空間においてどのように作業を発揮するかというテーマにシフトしていくことが考えられます。その際に、いわゆるロボットが活躍するというのが、フィジカルAIのテーマへとつながっていきます。
ロボットというと、人によっては人型ロボットをを想像するかもしれませんが、フィジカルAIの今後の浸透を考えると、まずは産業用途に使われるロボットの普及が第一ステージかなと思います。
現在の産業用ロボットの頭脳をどうAIに置き換えていくかということと、その頭脳が出した指示をどうロボットが作業をこなしていけるかがカギになりますが、その点においては現在ハードウェアであるロボットを製造している日本企業に商機があるという点が見逃せません。
参考資料
- 内閣官房・内閣府「戦略17分野における『主要な製品・技術等』」(2026年6月24日 経済財政諮問会議・日本成長戦略会議 合同会議 資料1)
- 川崎重工業「NVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通とフィジカルAIの社会実装に向けて協業し、開発を加速」(2026年5月22日)
- ファナック「ファナックはGoogleとの協業でフィジカルAI社会実装を加速」(2026年5月13日)
- ファナック「ファナックはNVIDIAとの連携をさらに強化」(2026年5月15日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
※リンクは記事作成時点のものです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
