フィジカルAIで注目すべき個別企業6社の深掘り
ここからは、フィジカルAIの3層構造を踏まえ、泉田氏が特に注目する6社について、その強みと将来性を深掘りしていきます。
ファナック(産業用ロボット世界4強)
ファナックは、産業用ロボットで世界4強の一角を占める日本を代表する企業です。同社の最大の強みは、工作機械の動きをコンピューターで精密にコントロールする「CNC(数値制御装置)」において世界トップ級のシェアを持っていることです。
これまでファナックは、自社で全てを完結させるクローズドなビジネスモデルを中心としていました。しかし近年、GoogleやNVIDIAといった世界のトップAI企業との協業を発表し、大きな転換期を迎えています。
精密な制御技術を持つファナックのハードウェアと、世界最高峰のAIが融合することで、次世代のフィジカルAIロボットが生み出されることが期待されています。
安川電機(サーボモーターとロボットの一体提供)
安川電機も、ファナックと並ぶ産業用ロボット世界4強の1社です。同社は、指示通りに正確な位置や速度で動くことができる「ACサーボモーター」で世界的な強みを持っています。
安川電機の強みは、自社で高性能なモーター(部品)を作りながら、完成品のロボットも製造している点です。同社もNVIDIAとの協業を発表しており、自社のサーボモーターとロボットを一体化させたシステムに、どのようにAIを組み込んでいくかが今後の成長の鍵になると泉田氏は見ています。
川崎重工(ヒューマノイド開発の先駆者)
川崎重工は、航空宇宙や船舶、鉄道など幅広い事業を手掛ける重工メーカーですが、実はロボット分野でも長い歴史を持っています。特に注目されるのが、国産人型ロボット「Kaleido(カレイド)」です。同社は10年以上にわたってヒューマノイドの開発を続けてきました。
さらに、2026年5月には米シリコンバレーのサンノゼに「Kawasaki Physical AI Center San Jose」を開設しました。ここでは、NVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通の4社と協業し、フィジカルAIの開発を本格化させています。多様な事業を展開する中で、フィジカルAIという新たな成長領域を積極的に開拓している点が評価されています。
ハーモニック・ドライブ・システムズ(関節部品の覇者)
ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の株価推移
部品メーカーの中で泉田氏が特筆するのが、ハーモニック・ドライブ・システムズです。同社は「波動歯車装置」と呼ばれる独自の精密減速機を製造しており、産業用ロボットの関節向け精密減速機で世界シェアの約5割を握っています。
「シェア5割なんでロボットメーカーのどの陣営が勝ってもこの会社の製品が入ってるというそういうパターンですね」
産業用ロボットだけでなく、半導体製造装置や手術支援ロボットなど、精密な動きが求められる幅広い機械に同社の製品が使われています。さらに、泉田氏はヒューマノイドの普及が同社にとって大きな追い風になると指摘します。
「ヒューマノイドになった瞬間にいろんなところに関節があるじゃないそうするとやっぱりここの減速機がより多くの数が必要になる」
単純作業を行うロボットに比べて、人間のように動くヒューマノイドは圧倒的に多くの関節を持ちます。そのため、ヒューマノイド市場が立ち上がれば、同社の減速機の需要は飛躍的に増加することが期待されています。
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
