フィジカルAI関連銘柄を読み解く「3層構造」
フィジカルAIに関連する企業は多岐にわたりますが、泉田氏はこれを「ロボット本体(ハードウェア)」「主要部品」「AIモデル(頭脳)」の3層構造に分けて考えると理解しやすいと解説します。
日本企業だけでも関連する会社が数多くあるという実感の声が上がるなか、泉田氏はそれぞれの層において日本企業がどのような立ち位置にいるのかを整理していきます。
ロボット本体(完成機)——3層の入口
ロボット本体・完成機(フィジカルAI 3層の入口)
第1層は、実際に物理的なロボットを組み立てて完成させる「ロボット本体」の領域です。この領域は、大きく「産業用ロボット」と「ヒューマノイド(人型ロボット)」の2つに分けられます。
産業用ロボットは、工場などで特定の作業をこなすために作られたロボットです。この分野では日本企業が非常に強く、世界4強と呼ばれる企業のうち、ファナックと安川電機の2社が日本企業です。他にも、大型ロボットを手掛ける不二越や、自動車向けの溶接ロボットで実績のあるダイヘンなどが存在します。
一方、ヒューマノイドは人間のような形をしたロボットです。川崎重工、トヨタ自動車、かつて「ASIMO」を開発していたホンダ、そしてデンソーなどが、ヒューマノイドを開発できるポテンシャルを持つ企業として挙げられます。
一般的にフィジカルAIと聞くと、人間のように動くヒューマノイドを思い浮かべがちですが、泉田氏は投資の視点から次のように分析します。
「管理された空間で動くことが多いので、AIで制御する要素も少ないんですよ。なのでこっち(産業用ロボット)の方が入れやすいかなと思います」
工場などの管理された環境で働く産業用ロボットの方が、複雑な環境下で動くヒューマノイドよりもAIを導入するハードルが低いため、ビジネスとして先に立ち上がる可能性が高いと泉田氏は見ています。
AIモデル(頭脳)——海外勢が優位な層
AIモデル・頭脳(基盤モデル・制御AI・AI半導体)
順番は前後しますが、第3層にあたるのが、ロボットに思考力と判断力を与える「頭脳」の領域です。
この領域に関しては、NVIDIA、Google、Microsoftといった海外の巨大IT企業が圧倒的な優位性を持っています。最近では、宇宙開発企業のSpaceXがAI事業(xAI)を統合して参入する動きも見られます。日本企業でこの頭脳の領域に食い込んでいる代表格としては、富士通が挙げられます。
頭脳の領域は海外企業が中心となりますが、日本のロボットメーカーはこれらの海外企業と積極的に協業することで、自社のロボットに最先端のAIを組み込もうとしています。
主要部品——日本が世界で最も強い「隠れた注目領域」
主要部品(日本が世界で最も強い層)
そして、泉田氏が最も強調するのが第2層の「主要部品」です。
「逆に皆さんがあんまりまだ感じてないというか知らないところはどこかって考えると、主要部品なんだよね」
完成品のロボットメーカーも、すべての部品を自社で作っているわけではなく、専門の部品メーカーから調達しています。そして、この部品メーカーにこそ、世界で高いシェアを持つ日本の優良企業がひしめいているのです。泉田氏はロボットの部品を「人間の体」に例えて解説します。
1つ目は「関節」です。ロボットが腕や脚を曲げるためには関節が必要であり、ここで活躍するのが「減速機」という部品です。減速機とは、モーターの回転速度を落として、その分だけ力を強くする歯車のような部品です。
この分野では、ハーモニック・ドライブ・システムズや、自動ドアや駅のホームドアでも知られるナブテスコが世界的に高いシェアを誇っています。
2つ目は「筋肉」です。ロボットを動かすための動力源であり、モーターや直動案内機器、空圧機器などが該当します。小型精密モーター大手のニデック(旧日本電産、近年は不適切会計の問題などもありましたが関連銘柄の一つです)、直線運動を滑らかにするガイド部品で世界大手のTHK、空気圧制御機器で世界トップ級のSMCなどが代表的です。
3つ目は「目・神経」です。周囲の状況を認識し、情報を伝達する役割を担います。センサーや画像処理システムを手掛けるキーエンスやオムロン、電子回路に不可欠な極小部品であるMLCC(積層セラミックコンデンサー)で世界首位級の村田製作所、そしてロボットの「目」となるCMOSイメージセンサーで世界首位級のソニーグループなどが挙げられます。
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
