元機関投資家が教える株式投資と債券投資のメリットとデメリットー知っておきたい12の視点
出所:モニクルリサーチ
執筆者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
20:59
元機関投資家が教える株式投資と債券投資のメリットとデメリットー知っておきたい12の視点
出所:モニクルリサーチ

この記事はここがポイント

  • 株式は上限ないリターンを追求、債券は満期で元本確保が目的の投資商品。
  • 日本の10年国債利回り約30年ぶり3%台に上昇、債券が株式の比較対象に戻った市場。
  • 株式は値上がり益に上限がなく、債券は満期で額面が戻るため値上がり益が限られる特性。

株式と債券、どちらに投資すればよいのでしょうか。

よく「株はリスクが高く、債券は安全」とまとめられます。ただ、この整理は便利すぎて、かえってそれぞれの長所とt難所を見えにくくしてしまいがちです。

二つの資産の違いは、リスクの大小というよりお金の出し方の違いです。株式は会社に出資して持ち主になること、債券は会社や国にお金を貸すこと。ここから先の性質の違いは、すべてこの一点から出てきます。

ここでは株式と債券のメリット・デメリットを6つずつ、合わせて12の視点で並べていきます。

株式投資の3つのメリット

1. 値上がり益(キャピタルゲイン)が債券より大きくなりやすい

株式を買うと、会社が稼いだ利益のうち株主に帰属する分が、自分(株主)の持ち分として積み上がっていきます。利益が利益を生む構造なので、理屈のうえで値上がり益に上限がありません。

一方、債券は満期に額面が戻ってくる商品です。買った価格が額面を大きく下回っていない限り(アンダーパーなど)、得られる値上がり益はおのずと限られます。

10年で株価が10倍になる銘柄はありますが、10倍になる債券はまれでしょう。この非対称性が、株式を持つ最大の理由です。

2. 配当(インカムゲイン)を受け取れる

株式には配当があります。会社が稼いだ利益(最終利益)の一部を、株主に現金で還元する仕組みです。

ここで債券の利金と違うのは、配当は増えることがあるという点です。利益が伸びれば増配があります。

3. 株主として議決権を持てる

株式を持つということは、その会社の一部を持つということです。株主総会での議決権があり、取締役の選任や重要な議案に意思表示ができます。

ただ、個人の持ち株数で経営を動かせるかというと、現実にはそう簡単ではありません。それでも近年は、資本効率の改善を求める株主の声が、企業の資本政策を実際に変えてきました。会社の持ち主の一人であるという感覚は、持っておいて損はないと思います。

株式投資の3つのデメリット

4. 価格変動が債券より大きい

株価は会社の利益見通しで動き、その利益見通しは景気でも、また競争環境でも変わります。債券のように満期とキャッシュフローが決まっている商品に比べれば、値動きが大きくなるのは当然です。

数年単位で見れば、株価が半分になることは珍しくありません。これは異常事態ではなく、株式という商品の標準的な性質です。

5. 配当が出ないこともある

配当は約束されたものではありません。業績が悪化すれば減配や無配になります。

債券の利金が「支払わなければ債務不履行」であるのに対し、配当は会社の判断で止められる。この差は、不景気のときにはっきりと出てきます。

6. 最悪の場合、価値がゼロになる

会社が破綻したとき、残った財産は債権者に先に配分され、株主の取り分は最後です。実際には株主に回ってこないケースがほとんどで、株式の価値はゼロになります。

債券投資の3つのメリット

7. 利金を受け取れる。足元の利回り水準は高い

債券は、あらかじめ決まった利率で利金が支払われます。

いまはこの水準が上がってきました。最近ですと10年国債の利回りは3%台と、約30年ぶりの高さをつけています。配当利回りが2%台程度では、高配当株というのも難しくなり、国債のほうが高い利回りになる場面が出てきたということです。

8. 価格変動が株式より小さい傾向にある

債券は満期に額面が戻ることが決まっているため、満期が近づくほど価格は額面に収れんしていきます。株式のように利益見通しで評価が大きく揺れることもありません。

9. 満期まで持てば額面が戻ってくる

これが債券のいちばんの特徴です。途中でいくら価格が下がっても、満期まで持ち切れば額面が戻ってきます。

ただし条件が二つの注意点があります。ひとつは、発行体が破綻しないこと。また、外国債券ですと為替が円換算変化してしまうことです。

債券投資の3つのデメリット

10. 値上がり益は株式より小さい

満期に額面が戻る商品である以上、価格の上値は限られます。金利が下がれば債券価格は上がりますが、その幅は株式の値上がりとは比べものになりません。

逆もまた同じで、金利が上がれば債券価格は下がります。満期前に売る可能性があるなら、債券にも価格変動リスクはあると考えておくべきです。

11. デフォルト(債務不履行)のリスクがある

頻度は高くありませんが、発行体が利金や元本を支払えなくなることはあります。

利回りが高い債券には、高い理由があります。国債より利回りが高い社債は、その差の分だけ信用リスクを取っているということです。

12. 流動性が株式より劣る銘柄がある

上場株式は取引所に注文が集まり、いつでも時価で売買できます。一方、個人が買う債券の多くは証券会社との相対取引で、買値と売値の差(スプレッド)が乗ります。

途中で売ろうとしたときに、思ったより安い価格しか提示されないということが起こりえます。満期まで持つつもりがない資金で債券を買うときは、ここを確認しておきたいところです。

12の視点から見えてくる使い分け

並べてみると、二つの商品の性格ははっきりしています。

株式は、上限のないリターンを、価格変動とゼロになる可能性と引き換えに取りにいく商品です。債券は、リターンの上限を受け入れる代わりに、満期という着地点を手に入れる商品です。

どちらが優れているという話ではありません。使う時間軸が違うだけです。10年、20年先に向けて資産を増やしたいお金は株式に、数年以内に使い道が決まっているお金は債券に回すという使い分けが可能です。

元機関投資家イズミダの視点

私が機関投資家だった頃、株式と債券を比べるときによく見ていたのが、株式の益利回りと長期金利の差です。

益利回りとは、PERの逆数のこと。PER20倍なら益利回りは5%です。これを10年国債の利回りと並べると、株式と債券のどちらが相対的に割安かの目安になります。

長く続いたゼロ金利の時代、日本では長期金利が0%台でしたから、この差は大きく開いていました。株式を選ぶ理由を探す必要すらなかったとも言えます。

ただ、長期金利が3%台まで上がってきたいま、この差は確実に縮んでいます。債券が比較対象として戻ってきた、というのがいまの市場の変化だと私は見ています。

とはいえ、これは株式をやめて債券にすべきという話ではありません。債券の利回りは買った時点で満期まで持つのであればリターンが決まっていますが、株式の配当は会社が成長すれば増えていきます。10年後に受け取る金額まで含めて考えると、順位が入れ替わることは十分にあります。

比較のモノサシを増やしておくこと。それが、金利のある世界に戻った相場での備えだと思います。バリュエーション指標の全体像は「バリュエーション完全ガイド」にまとめています。

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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