この記事はここがポイント
- 三井住友トラストグループの10NC5劣後債、利率年2.902%に決定
- 当初5年間は年2.902%、6年目以降は5年国債金利に0.700%上乗せの利率構造
- 発行額は400億円、最低投資額100万円、年限10年(5年後早期償還可能)の条件
28日、三井住友トラストグループが、新たに発行を予定する社債「三井住友トラストグループ株式会社第25回期限前償還条項付無担保社債(劣後特約及び実質破綻時債務免除特約付)」について、利率が年2.902%に決まりました。
仮条件レンジの年2.400~3.200%のやや上限寄りで決着。
5年経過後の利率は5年国債0.700%(+70bp)を上乗せした水準に決定しました。
三井住友トラストグループ債の発行要項
- 銘柄名: 三井住友トラストグループ株式会社第25回期限前償還条項付無担保社債(劣後特約及び実質破綻時債務免除特約付)
- 発行額: 400億円
- 仮条件利率:当初5年間が2.902%(6年目以降は5年国債金利+0.700%にリセット、年率・税引前)
- 年限: 10年(ただし5年後に期限前償還の可能性あり)
- 利払日: 毎年3月11日、9月11日
- 償還期限(満期): 2036年9月11日(早期償還可能日:2031年9月11日)
- 申込期間: 2026年8月31日~9月10日
- 払込期日: 2026年9月11日
- 最低投資金額: 100万円
- 格付: A+(R&I)/AA-(JCR)
- 引受会社: 大和証券/野村證券/SMBC日興証券/SBI証券/岡三証券/東海東京証券/楽天証券/マネックス証券
年限10年・最低投資金額100万円という設定は、少額から始めたい初心者向けというより、まとまった資金を長期間預けられる中上級者向けの商品性といえるでしょう。
三井住友トラストグループ債の発行要項
そもそも「劣後債」「コール条項」とは?
「劣後債」とは、発行体が万一破綻した際の弁済順位が、普通社債より低く設定されている社債のことです。
弁済順位が低い(=リスクを引き受ける)分、普通社債より高い利率が設定されるのが一般的です。
いわば「優先席を譲る代わりに、多めの利息を受け取る」ような仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
今回の社債には「実質破綻時債務免除特約」も付いており、一言で言えば発行体が実質破綻したと当局が認定した場合に元利金の支払い義務が免除される「ベイルイン」条項です。
「期限前償還条項(コール条項)」は、発行体側の判断で満期を待たずに早期償還できる権利のことです。
今回の社債は発行から5年後(2031年9月11日)にコールされる可能性があり、その場合は実質的な運用期間が5年になります。
先行した三菱UFJFG・みずほFGとの利率比較
先行した2社の同スキームの社債(10年債・5年後コールの10NC5型)と並べると、今回の水準がより立体的に見えてきます。
- 三菱UFJFG(第43回、7月31日発行): 利率2.548%、スプレッド:国債+60bp、格付け:AA-(R&I)/AA-(JCR)
- みずほFG(第35回、7月17日発行): 利率2.607%、スプレッド:国債+65bp、格付け:AA-(R&I)/AA-(JCR)
- 三井住友トラストグループ(第25回、今回): 決定利率2.902%、スプレッド:国債+70bp、格付け:A+(R&I)/AA-(JCR)
スプレッドを見ると、三菱UFJFGの国債+60bp、みずほFGの+65bpに対し、三井住友トラストグループは+70bpと5~10bpワイドです。
R&Iの格付けが三菱UFJFG・みずほFGのAA-より1ノッチ低いA+であることが、スプレッドの差に表れています。
一方で決定利率そのものの差(2.548%→2.607%→2.902%)は、スプレッドの拡大幅(60bp→65bp→70bp)以上に大きく開いています。
これはベースとなる5年国債金利自体が上昇し続けているためです。5年国債金利は5月には1.8%台前半で推移していましたが、7月にかけて1.9%台に乗せ、8月には2.1%台後半まで上昇する場面もありました。
三井住友トラストグループが条件決定した8月28日は、2.1%台半ば~後半で推移しており、三菱UFJFGのローンチ時の7月時点(1.9%台半ば)、みずほFGの条件決定時点(1.9%台前半~半ば)から明確に切り上がっています。
自身の前回債(第21回)との比較
同じ「10年債・5年後コール」構造の社債は、三井住友トラストグループ自身も過去に発行しています。旧社名の三井住友トラスト・ホールディングス株式会社時代である2024年9月17日に発行した「第21回期限前償還条項付無担保社債(劣後特約及び実質破綻時債務免除特約付)」です。
- 発行額: 400億円
- 利率: 年1.475%(当初5年間)
- スプレッド: 5年国債金利+0.960%(96bp)
- 発行日: 2024年9月17日
今回の第25回債は発行額こそ前回債と同じ400億円ですが、利率は1.475%から2.902%へと1.427%の上昇です。一方でスプレッドは前回債の96bpから今回の70bpへとむしろ縮小しています。先行した2銘柄もスプレッドは縮小させていました。
つまり今回の利率上昇は、上乗せ幅の拡大によるものではなく、この2年間でベースとなる5年国債金利そのものが大きく上昇したことによるものとなります。
記者コメント
三井住友トラストグループの新発劣後債は、先行する三菱UFJFG・みずほFGを上回る利率2.902%で決定しました。
国債+70bpというスプレッドが先行銘柄よりもワイドな背景には格付けの差が踏まえられています。
一方、自身の前回債との比較では、スプレッドはタイトニング(縮小)しており、今回の利率上昇はベース金利(5年国債金利)の上昇にあることが見えてきます。
なお、劣後特約や実質破綻時債務免除特約が付いた商品であり、普通社債とは弁済順位やリスクの性質が異なる点は理解したうえで、申込を検討する際は目論見書や発行要項をご自身で確認することが第一歩といえるでしょう。
参考資料
免責事項
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
