この記事はここがポイント
- ソフトバンクG個人向け7年債、利率4.75%、過去最大の1兆円発行
- 1兆円のうち約5,585億円をABBロボティクス買収に、残りは既発債の借り換え
- 本社債は普通社債「シニア債」、過去の劣後債とは異なる種類
4日、ソフトバンクグループ<9984>の個人向け7年債の利率が4.75%に決定しました。
発行総額は1兆円で、ソフトバンクグループの起債としては過去最大規模。
仮条件レンジの4.30%〜4.90%からは上限寄りに着地しています。
直近では4月と6月に、弁済順位が低いリスクを引き受ける代わりに利率が高い「劣後債」を発行していましたが、今回はこうした特約のない「普通社債」であり、「シニア債」と呼ばれます。
発行要項
- 銘柄:ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保普通社債
- 発行総額:1兆円
- 各社債の金額:100万円
- 利率:4.75%
- 払込金額:各社債の金額100円につき100円
- 償還金額:各社債の金額100円につき100円
- 年限:7年
- 償還期限:2033年9月16日
- 償還方法:満期一括償還(払込期日の翌日以降、振替機関が別途定める場合を除きいつでも買入消却が可能)
- 利払日:毎年3月17日・9月17日
- 申込期間:2026年9月7日〜2026年9月16日
- 払込期日:2026年9月17日
- 財務上の特約:担保提供制限条項/担付切換条項/純資産額維持条項
- 取得予定格付:A(JCR)
引受会社と引受金額
- 野村証券:2,400億円
- 大和証券:1,900億円
- SMBC日興証券:1,500億円
- みずほ証券:1,200億円
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券:1,100億円
- SBI証券:1,000億円
- 岡三証券:370億円
- 岩井コスモ証券:240億円
- 東海東京証券:220億円
- 水戸証券:40億円
- 西日本シティTT証券:30億円
野村証券・大和証券・SMBC日興証券の上位3社だけで引受額全体の約58%を占めており、大手証券が幹事の中心を担う構図となっています。
ソフトバンクグループ債の発行要項
なぜ1兆円の巨額を調達?5,000億円超をABBロボティクス事業の買収資金の一部に充当
払込金額の総額1兆円から発行諸費用の概算額114億9,800万円を差し引いた、差引手取概算額9,885億200万円について、使いみちは3つに分かれています。
- 4,000億円:2026年9月17日に償還を迎える国内社債の償還資金
- 300億円:2027年4月23日に償還を迎える国内社債の償還資金
- 残額(約5,585億200万円):子会社への投融資を通じて、2026年12月までにクロージングを予定しているABBロボティクス事業の買収資金の一部
つまり調達資金の一部は、既存の社債を新しい社債に置き換える「借り換え」に充てられ、残りの過半はABBロボティクス事業の買収資金の一部に回される計画です。
ABBロボティクス事業の買収は、ソフトバンクグループが2025年10月8日にABB Ltdと最終契約を締結したもので、買収総額は53.75億米ドル(約8,187億円)。
ABBが産業用ロボット事業をカーブアウトして新設する持株会社の全株式を、子会社を通じて取得する計画です。対象となるABBロボティクス事業は従業員約7,000人を抱え、同社が掲げる「フィジカルAI」戦略における中核投資の一つと位置づけられています。
発表時点では完了時期を「2026年半ばから後半」としていましたが、今回の資金使途の説明では「2026年12月まで」とより具体的な期限が示されました。
なお、ABBロボティクス事業の買収はクロージング時期が確定していません。もし時期が大幅に先送りとなった場合や必要資金額が減額となった場合には、この資金は2027年3月に返済期日を迎える「ブリッジローン」(買収資金などをつなぐための短期のつなぎ融資)の返済資金の一部に充てる予定であることも明記されています。
記者コメント
今回の第70回債では、4,000億円が2019年9月に発行された第56回債(福岡ソフトバンクホークスボンド)の借り換えに充当されます。
第56回債も同じく100万円単位・主に個人投資家向けの7年債で、利率は年1.380%でした。
それが今回、同じ条件設計の7年債でありながら年4.75%となり、+3.37%(+337bp)もの上昇となっています。
同じ発行体・同じ年限・同じ投資家層の社債を並べて比べられるからこそ、この7年間で個人向け社債の資金調達コストがどれだけ重くなったかが、数字としてくっきり見えてきます。
超低金利下で発行された社債が、金利上昇局面のただ中で満期を迎え、より高いクーポンで借り換えられる——今回のソフトバンクグループ債は、その典型例といえそうです。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
