この記事はここがポイント
- アンドエスティHDの中間決算は、売上高1.9%増と小幅ながら営業利益34.6%増の大幅増益
- 粗利率56.5%改善が利益を牽引、値引き抑制と正価販売が寄与
- 株主優待制度は2026年から年2回に変更、100株で年3,000円分の優待券
「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」「niko and ...(ニコアンド)」などのブランドを展開するアンドエスティHD<2685>が、9月30日の大引け後に2027年2月期の中間決算を発表しました。
物価高で消費者の節約志向が強まるなか、売上高の伸びは1.9%にとどまった一方、営業利益は34.6%増と大きく伸びています。
売上がほぼ横ばいなのに、なぜ利益がこれほど伸びたのでしょうか。
最新決算から、同社の稼ぎ頭と利益が伸びた理由を見ていきましょう。
アンドエスティHDの中間決算、売上高1.9%増で営業利益は34.6%増
9月30日に発表された2027年2月期中間期(2026年3月~8月)の連結業績は、次のとおりです。
- 売上高:1,521億1,000万円(前年同期比1.9%増)
- 営業利益:107億3,100万円(同34.6%増)
- 経常利益:110億6,600万円(同42.0%増)
- 中間純利益:59億5,100万円(同0.6%減)
営業利益率は7.1%と、前年同期から1.8ポイント改善しました。
一方、最終利益は前年同期をわずかに下回っています。特別損失として特別功労金12億3,000万円などを計上し、特別損失の合計は14億2,700万円(前年同期は1億4,200万円)に膨らみました。
法人税等の合計も38億2,100万円(同16億7,500万円)に増えており、本業の伸びに比べて最終利益は伸び悩んだ形です。
通期の業績予想は、4月6日に公表した数値から変更していません。
- 売上高:3,140億円(前期比3.2%増)
- 営業利益:172億円(同4.1%増)
- 経常利益:172億円(同2.2%増)
- 純利益:105億円(同10.5%増)
通期予想に対する中間期時点の進捗率は、売上高でおよそ48%、営業利益では6割を超えています。
稼ぎ頭はアパレル・雑貨関連事業、利益が伸びた理由は「値引きを抑えた販売」
同社の事業は、報告セグメントの「アパレル・雑貨関連事業」と、「その他」に区分される飲食事業(株式会社ゼットン)で構成されています。
- アパレル・雑貨関連事業:売上高1,441億9,200万円(前年同期比2.0%増)、セグメント利益111億1,000万円(同42.9%増)
- その他(飲食事業):売上高80億4,200万円(同1.1%増)、セグメント損失4,300万円(前年同期はセグメント利益1,300万円)
※同社のセグメント利益は、営業利益ではなく経常利益ベースの数値です。そのため、全社の営業利益の伸び率(34.6%増)とは単純に比較できません。
外部顧客への売上高で見ると、アパレル・雑貨関連事業がグループ全体の94.7%を占めます。利益面でもグループの稼ぎを一手に担っており、同社の業績はこの事業の動向でほぼ決まるといってよいでしょう。
国内は3.2%増収、GLOBAL WORKが最大の売上の柱
アパレル・雑貨関連事業のうち、国内の売上高は1,330億8,900万円(前年同期比3.2%増)で、グループ全体の87.5%を占めます。
決算短信では、国内の増収について、トレンドを捉えた商品の機動的な展開や、多数のブランドとグループ各社による多様な商品展開、テレビCMやポイント還元などのプロモーションが効果を上げたと説明しています。2025年4月にグループに加わったカリマーインターナショナルの上乗せも寄与しました。
ブランド別では、GLOBAL WORKの売上高が261億2,400万円(同0.1%増)で、グループ売上高の17.2%を占める最大の売上の柱です。
伸び率が目立ったのは、LEPSIM(レプシィム)の99億1,500万円(同13.7%増)や、niko and ...の193億4,800万円(同8.8%増)でした。
一方、海外の売上高は110億1,400万円(同11.4%減)でした。中国大陸・香港・台湾はいずれも2ケタの増収でしたが、2025年7月に米国事業から撤退した影響で、海外全体では減収となっています。
粗利率は56.5%に改善、正価販売が好調
利益が大きく伸びた最大の理由は、売上総利益率(粗利率)の改善です。
円安や製造コストの上昇で原価が押し上げられるなか、同社は需要に見合った量の商品を適切なタイミング・価格で投入して在庫を抑え、値引き販売を抑制してきました。
生産背景の見直しと春夏物衣料の正価販売が好調だったことが、利益率の回復を牽引したと説明しています。
この結果、連結の粗利率は56.5%と前年同期から1.3ポイント改善しました。販管費は人件費や店舗家賃の増加で総額が増えたものの、プロモーションの効率化などで売上高に対する比率は49.5%と0.3ポイント改善しています。
あわせて、ECとリアル店舗で共通のポイント制度である「and ST(アンドエスティ)」の会員数は、前期末から100万人増えて2,270万人になりました。外部企業が「and ST」に出店するモール型のビジネスも拡大しています。
アンドエスティHDの株主優待、年2回で100株なら年3,000円分
同社の株主優待は、日本国内のグループ店舗で使える「株主様ご優待券」です。アダストリアのブランドに加え、エレメントルール、飲食事業のゼットン、WeOurの各社の店舗が対象になります。
ただし、公式WEBストア「and ST」を含むWEB店舗と一部の店舗では使えない点に注意が必要です。お釣りは出ないため、額面以上の買い物で使う形になります。
権利確定日は毎年2月末日と8月末日で、制度変更により2026年から年2回になりました。贈呈額は、保有株式数と保有期間によって次のように決まります。
保有株式数:保有期間:2月末:8月末:年額
- 100株以上500株未満:3年未満:1,500円:1,500円:3,000円
- 100株以上500株未満:3年以上:2,500円:2,500円:5,000円
- 500株以上1,000株未満:3年未満:5,000円:5,000円:10,000円
- 500株以上1,000株未満:3年以上:6,000円:6,000円:12,000円
- 1,000株以上:3年未満:10,000円:10,000円:20,000円
- 1,000株以上:3年以上:11,000円:11,000円:22,000円
100株を3年以上持ち続けると、年額は3,000円から5,000円に増えます。「3年以上保有」とは、2月末と8月末の株主名簿に、同一の株主番号で7回以上連続して100株以上の保有が記録されていることを指します。
なお、2025年8月末以前に初めて権利が確定し、その後も100株以上を持ち続けている株主は、経過措置として「2年以上保有」で長期保有の対象になります。
GLOBAL WORKはキッズからファミリー層までを対象にしたブランドで、家族の服を買う機会が多い家庭では使い道に困らない優待といえそうです。ファッションの店舗に加え、ゼットンの店舗一覧に掲載されている国内の飲食店でも使えます。
10月2日の終値2,988円で100株を買う場合の投資金額は29万8,800円です。100株・3年未満の優待額(年3,000円)を投資金額で割った優待利回りは1.00%で、配当利回り(会社予想)3.01%と合わせると4.01%になります(優待券を額面どおり使い切った場合の単純計算)。
※株主優待の内容は変更される可能性があるため、公式サイトを確認してください。
次回の権利確定日は2027年2月末
8月末の権利確定日はすでに過ぎており、次回の権利確定日は2027年2月末日です。権利付き最終日は2月24日、25日になります。
アンドエスティHD<2685>の10月2日の株価
2日終値は2,988円(前日比:▲52円、▲1.71%)となりました。
- PER(会社予想):13.15倍
- PBR(実績):1.61倍
- 配当利回り(会社予想):3.01%
- 出来高:29万7,700株
- 時価総額:1,458億1,400万円
- 年初来高値:3,635円(7月8日)/年初来安値:2,702円(1月29日)
10月2日の終値2,988円は、年初来高値を647円(約18%)下回る一方、年初来安値は286円上回る水準です。
2027年2月期の配当は、中間配当が1株45円、期末配当の予想が45円で、年間では90円の予定です。
同社は配当について、連結配当性向30%、DOE(株主資本配当率)4.5%以上を基本方針に掲げています。
アンドエスティホールディングスの年間チャート
下期最初の9月の月次は既存店108.8%、秋物衣料が好調
同社は10月2日の大引け後に、下期最初の月となる9月の月次売上高前年比を発表しました。対象はアダストリア単体(WEBストアを含む)で、その他の国内・海外子会社は含みません。
- 全店売上高:110.9%
- 既存店売上高:108.8%(客数104.6%、客単価104.0%)
同社によると、東日本を中心に記録的な大雨や天候不順の影響を受けたものの、全国的に月を通じて気温が低く、秋物衣料を中心に販売が好調でした。ブランド別では、GLOBAL WORK、niko and ...、LOWRYS FARM(ローリーズファーム)、LEPSIMなどが好調だったとしています。
ただし、前年より休日が1日多かったことで、既存店前年比に2.1ポイントのプラス影響があったと同社は試算しています。また、前年9月の既存店売上高は前年比96.1%と、前年を下回っていました。
記者コメント
アンドエスティHDの中間決算は、売上高の伸びが小さい一方で、値引きを抑えた販売によって粗利率が改善し、営業利益が大きく伸びた内容でした。
稼ぎ頭のアパレル・雑貨関連事業では、最大のブランドであるGLOBAL WORKが横ばいにとどまるなか、LEPSIMやniko and ...が伸びており、ブランドごとの差も見えてきます。
営業利益は中間期の時点で通期予想の6割を超えましたが、同社は通期予想を据え置いています。
同社は前期(2026年2月期)、国内外の気候変化への対応などが課題となり、売上・利益ともに期初の業績予想に届かなかった経緯があります。
下期最初の9月は、アダストリア単体の既存店売上高が前年比108.8%と好調な滑り出しでした。
秋冬物でも春夏物と同じように正価販売を続けられるかが、通期の着地を左右するポイントになりそうです。
株主優待は年2回で、次回の権利確定は2027年2月末です。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
