3日、7月の個人向け国債と地方債の先行組の利率が決定しました。
2日の10年国債の入札では、市場の需要の強さを測る目安となる応札倍率が3.13倍となり、6月の3.53倍を下回りました。
結果が低調だったことを受けて長期金利が上昇し、3日は一時約30年ぶりとなる2.81%をつけました。
今後さらに金利が上がるという見方(先高観)も根強いですが、裏を返せば、個人投資家が「ひと昔前には考えられなかったような高い利率」を享受できる絶好のタイミングが到来しているとも言えます。
この記事では、7月に条件決定した個人向け国債と、地方債の利率について、10年物を中心にみていきます。
地方債は3日のローンチ組が7月の第1陣ですが、このあと6日以降にも複数銘柄が条件決定を控えています。
すべての銘柄が対象ではないですが、一部は個人投資家向けの販売も予定されているとみられます。
債券金利が軒並みアップ!背景にある「需給のゆるみ」とは?
ニュースで「長期金利が急上昇」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、新しく債券を買いたい個人投資家にとっては「より高い利回りを確定させるチャンス」の到来です。
今回金利が跳ね上がった理由は、市場での「国債の需給(売り買いのバランス)のゆるみ」にあります。
入札の「応札倍率」が前月から低下したことは、プロの買い手たちが買い控え、市場に国債が余り気味になったことを意味します。
債券市場には「需給が緩んで価格が下がると、金利(利回り)は上がる」というルールがあるため、金利に強い上昇圧力がかかりました。
このトレンドをダイレクトに反映し、7月募集の個人向け国債と地方債は、6月対比で軒並み魅力的な利率へ引き上げられました。
7月の個人向け国債と地方債「早見表」
【7月募集】個人向け国債:6月対比でさらに好条件に!
債券投資といっても「何から始めたらよいか」と迷う方にまずおすすめしたいのが、1万円から手軽に買えて国が元本を保証する「個人向け国債」です。
7月募集分の金利は、前月(6月)と比較して以下のように軒並みアップしました。
変動10年(第196回)当初6カ月 1.80%(6月:1.74% /+0.06%)
実勢金利に合わせて半年ごとに利率が変わるため、今後のさらなる金利上昇も自動で追いかけられます。
「金利のある世界」の恩恵を一番受けやすい大本命です。
固定5年(第184回)年 1.95%(6月:1.86%/+0.09%)
5年間、この高い金利をしっかりロック(固定)できます。中期的な運用に最適です。
固定3年(第194回)年 1.56%(6月:1.51%/+0.05%)
直近でお金を使う予定があるけれど、普通預金より有利に預けたいという手堅い運用に向いています。
※いずれのタイプも、万が一金利が下がっても「年0.05%」の最低金利が国によって保証されています。
【7月地方債】上乗せ幅拡大(ワイドニング)でついに「3.0%」の大台へ
国債よりさらにもう一歩高い利回りを狙いたい場合の選択肢が、自治体が発行する「地方債」です。
国債に比べると信用力が低いため、その分利率が上乗せされる債券です。
今回は、地方債の基準となる「10年物地方債(標準モデル)」に絞って最新の利率を見ていきます。
地方債の利率は、ベースとなる国債金利に、各自治体のオマケ金利(対国債スプレッド)を上乗せして決まります。
前月の6月債では上乗せ幅が「+18bp(0.18%)」でしたが、今月の7月債では「+20.0bp(0.20%)」へと拡大しました(これを専門用語でスプレッドのワイドニングといいます)。
「ベースの国債金利が上がった」うえに「上乗せ幅も広がった」というダブルの追い風を受け、3日に条件決定した主要な10年物地方債は以下のように非常に高い利率となりました。
- 【表面利率 3.000%】
- 福井県
- 広島県
- 【表面利率 2.990%】
- 千葉市
- 【表面利率 2.982%】
- 宮城県
- 千葉県
- 【表面利率 2.972%】
- 札幌市
福井県と広島県でついに「3.000%」の大台に乗ったほか、他の自治体も軒並み3%に肉薄しています。
満期まで持てば、この高い利子が確実に手に入るのは大きなメリットです。
ただし、地方債は原則として機関投資家(プロ)向けが中心であり、個人投資家が購入できるのは一部の銘柄に限られます。
本記事で挙げたすべての銘柄が個人向けに販売されるわけではないため注意してください。
個人向けの販売があるかどうかは、ご利用の証券会社ウェブサイトにある「新発債(新発国内債券)」のラインナップから確認できます。
6月債からはどれくらい上がった?
先月(6月債)と今月(7月債)の利率の広がりを「上限・下限」でシンプルに比較してみましょう。
【利率の下限(一番低い金利)の比較】
6月債:2.729%⇒7月債:2.972% (+0.243%のプラス)
【利率の上限(一番高い金利)の比較】
6月債:2.868%⇒7月債:3.000% (+0.132%のプラス)
ご覧の通り、7月債は「一番低い金利(2.972%) 」であっても、6月債の上限(2.868%)を大きく上回っています。
そして上限にいたっては、ついに「表面利率 3.000%」という歴史的な大台に乗せてきました。
「同じ+20.0bp の上乗せなのに、なぜ2.972%から3.000%まで差が出るの?」と疑問に思うかもしれません。
これは自治体ごとの信用力の差ではなく、値決め(プライシング)の手法や、上乗せのベースとなる国債の基準金利の選び方がそれぞれ異なるためです。
「10年債」なら個人投資家はどちらを選ぶべき?「安心ルール」と「中途換金リスク」の比較
どちらを選ぶべきかは、その資金を「途中で使う可能性があるか」でシンプルに判断できます。
「いつでも現金化できる安心」なら:個人向け国債
個人向け国債の変動10年債には「基準金利に0.66を掛ける」という公式ルールがあります。
これは国が「いつでも元本割れなしで中途換金できる安心特典」をセットにしているため、その分が差し引かれて利率が決まる仕組みです。
発行後1年が経過すれば、いつでも国が買い取ってくれます。
その際、直近2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた金額が「中途換金調整額」として差し引かれます。
そのため、国から払い戻される現金そのものは購入した元本満額ではなく、調整額が引かれた金額となります(それまでに受け取った利子を含めた総額で見れば、元本割れはしません)。
「満期までじっくり運用し、効率よく増やす」なら:地方債
地方債は国債とは逆に、基準金利に利率が「プラス(上乗せ)」されるため高い利回りが得られます。
ただし、最大の注意点は「中途換金による元本割れリスク」です。
途中で現金化したい場合は、国ではなく「市場(証券会社などを相手にした相対取引)」でその時の時価で売却することになります。
金利が上昇している局面で売ると、購入価格を下回って損をするリスクがあります。
まとめにかえて
「10年間は絶対に引き出さない」と決めている余裕資金であれば、3%近い確定利回りを享受できる地方債が魅力的に映るかもしれません。
ただし、地方債は個人向けの販売枠が非常に少なく、ネット証券などでは一瞬で完売する「早い者勝ち」状態のため、事前の情報収集が重要です。
少しでも途中で使う可能性を残したいなら、金利上昇に自動で追随する個人向け国債の「変動10年」を選んでおくのが最も安全でスマートな選択といえるでしょう。
この目まぐるしい変化の波に無理に乗ろうとせず、それぞれの特徴を賢く活かして、ご自身のライフプランに最適な「お金の置き場所」をじっくり見つけてみてください。
参考資料
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願いいたします。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
