この記事はここがポイント
- 楽天グループが発行する期間5年6カ月の個人向け第26回無担保社債の利率が税引前年4.370%に決定
- 購入者特典として音声通話不可で月30GBの楽天モバイル回線を1年間無料で使えるSIMがもらえる
- 利率はイオンの7年債の3.087%を上回り、ソフトバンクグループ7年債の4.75%を下回る水準
楽天グループ<4755>は16日、個人向け社債「第26回無担保社債(社債間限定同順位特約付)」の利率を年4.370%に決定しました。
仮条件として提示していた年3.800~4.600%のうち、上限を0.230%下回る水準での決定です。
同社の社債では「楽天モバイル」回線を1年間無料で使えるSIMが購入者特典として付くのが特徴です。
一方、楽天グループは12月末を基準とする株主優待でも「楽天モバイル」の無料提供を行ってきました。
本記事では、決定した発行条件を整理したうえで、特典と株主優待の違い、さらに先行した5年債・7年債との利率の比較を見ていきます。
楽天グループ第26回無担保社債の発行条件
- 銘柄:楽天グループ株式会社 第26回無担保社債(社債間限定同順位特約付)
- 利率:年4.370%(税引前) ※税引後は年3.482%
- 条件決定日:10月16日
- 発行額:3,600億円
- 期間:5年6カ月
- 申込単位:100万円単位
- 発行価格:額面100円につき100円
- 申込期間:10月19日~28日
- 払込日:10月29日
- 利払日:毎年4月29日・10月29日(初回は2027年4月29日)
- 償還日:2032年4月28日
- 格付け:A-(日本格付研究所=JCR)
- 財務上の特約:担保提供制限、担保付社債への切換
- 引受証券会社:大和証券/楽天証券/みずほ証券/三菱UFJモルガン・スタンレー証券/SMBC日興証券/野村証券
100万円を購入した場合の利息は、税引前で年4万3,700円、税引後で年3万4,822円です(税率20.315%で計算)。
利払いは2027年4月から2032年4月まで計11回で、満期まで保有した場合の利息は税引前で合計約24万円、税引後で合計約19万円となります(最終回は半年に満たない期間分の利息となるため概算)。
前回の第25回債(2025年8月発行)は期間3年・利率2.336%で、年限が2年6カ月長い今回債の利率はこれを+2.034%上回ります。
社債の特典:楽天モバイルSIMが1年間無料
社債の特典の主な内容は次のとおりです。特典は楽天グループが提供します。
- 対象:申込期間中に本社債を購入した個人
- 内容:「楽天モバイル」回線を1年間無料で使えるSIM(データ通信30GB/月)
- 案内:2027年2月頃、取扱証券会社から購入者1名につき「ご購入者様特典のご案内」を1通郵送
- 申し込み方法:案内に記載の特典サイトから、購入者自身が申し込む
- 利用に必要なもの:対応する通信端末(日本国内でローミング可能な端末)、本人確認の手続き
- 対象外となる人:法人、特典サイトでの申し込み時点で18歳未満の人
- 主な制限: 音声通話は利用不可 一部の機能・サービスは利用不可 通信速度の制御が行われる場合あり 「Rakuten最強プラン」の契約を条件とするSPU(スーパーポイントアッププログラム)特典は対象外 無料期間終了後に同じSIMで再契約・延長は不可 楽天グループの同意なく第三者に売却・譲渡すると、携帯電話不正利用防止法の違反となる場合あり
注意したいのは、音声通話が使えない「データ通信専用」である点です。
また、受け取るには特典サイトでの申し込みと本人確認が必要で、購入しただけで自動的にSIMが届くわけではありません。
なお、前回の第25回債の特典は「データ無制限プラン」を1年間無料で使えるeSIMで、今回はデータ容量が30GB/月のSIMとなっています。
株主優待と比べると?
楽天グループは12月末を基準日として株主優待を実施しています。前回の第29期(2025年12月末基準)は、100株以上を保有する株主に「楽天モバイル」の音声+データ30GB/月プランを6カ月無料で提供する内容でした。
2025年12月末と2026年6月末の株主名簿に同一株主番号で100株以上の記載があれば、さらに6カ月無料になる継続要件も設けられていました。
社債の特典と株主優待の違いを並べると、次のとおりです。
社債(第26回債)
- 必要な資金:100万円(申込単位)
- 特典の内容:データ30GB/月、1年間無料、音声通話は不可
- 期間中の保有条件:なし
- 元本:満期の2032年4月28日に額面で戻る(途中売却時は市場価格)
株式(前回の第29期株主優待)
- 必要な資金:100株=6万1,130円(10月15日終値611.3円で計算)
- 特典の内容:音声+データ30GB/月、6カ月無料(継続要件を満たせば最大12カ月)
- 期間中の保有条件:12月末に加え、6月末も同一株主番号で100株以上
- 元本:株価次第で変動
必要な資金だけを見れば、株主優待は社債の約16分の1で済み、音声通話も使えます。一方で、株式には満期がなく、元本は株価次第です。
社債は100万円とまとまった資金が必要で、特典もデータ通信のみですが、発行体が約束通り支払えば年4.370%の利息を受け取りながら、満期には額面で元本が戻ります。
なお、2026年12月末を基準とする第30期の株主優待の内容は、10月16日時点で同社の株主優待ページに掲載されていません。
前回と同じ内容になるとは限らない点に注意が必要です。
利率は直近の5年債・7年債と比べて高い?低い?
特典とは別に、社債としての利率水準も確認しておきます。
楽天G債の5年6カ月は、5年債より半年長く、7年債より1年6カ月短い期間です。
一般に、債券はお金を預ける期間が長いほど利率が高く設定されやすいため、年限の違いを意識して比べる必要があります。
2026年7~9月に条件が決まった個人向け社債と比較してみます(いずれも税引前)。
5年債(楽天G債より6カ月短い)
近鉄グループホールディングス<9041>第135回債
- 期間:5年
- 利率:2.521%
- 条件決定日:7月9日
- 格付け:A-(JCR)/BBB+(R&I)
- 申込単位:10万円単位
- 保証:近畿日本鉄道株式会社保証付
クレディセゾン<8253>第121回債
- 期間:5年
- 利率:2.448%
- 条件決定日:7月17日
- 格付け:AA-(JCR)/A+(R&I)
- 申込単位:10万円単位
7年債(楽天G債より1年6カ月長い)
イオン<8267>第31回債
期間:7年
利率:3.087%
条件決定日:8月7日
格付け:A-(格付投資情報センター=R&I)
申込単位:100万円単位
ソフトバンクグループ<9984>第70回債
- 期間:7年
- 利率:4.75%
- 条件決定日:9月4日
- 格付け:A(JCR)
- 申込単位:100万円単位
個人向け社債の利率比較(税引前)
JCRの格付けが楽天G債と同じ「A-」で、期間が半年短い近鉄グループホールディングス債(2.521%)に対し、楽天G債(4.370%)は+1.849%上回りました。
ただし、近鉄債はR&Iの格付けが「BBB+」で、近畿日本鉄道が元利金の支払いを保証している点も楽天G債とは異なります。
JCRで「AA-」のクレディセゾン債(2.448%)と比べると、楽天G債は+1.922%上回ります。
7年債では、R&Iで「A-」のイオン債(3.087%)を、楽天G債は期間が1年6カ月短いにもかかわらず+1.283%上回りました。
一方、ソフトバンクグループ債(4.75%)には▲0.380%届いていません。
ソフトバンクグループ債は期間が楽天G債より1年6カ月長く、そもそも年限の違いが利率差の前提にあります。
加えて、JCRの格付けは楽天G債より1ノッチ上の「A」です。
社債の投資妙味を測る際は、年限や格付け、業態が近い先行銘柄と利率を比べるのが一般的です。
ただし、格付けの基準は格付け会社ごとに異なります。
さらに条件決定のタイミングによって金利水準などの起債環境は変わり、発行額も銘柄ごとにまちまちです。
そのため、利率の数字だけで単純に優劣をつけることはできません。
また、たとえば民鉄銘柄は安定したインフラ事業を営むことから、実際の格付け以上に信用力が高いと評価されやすいのが債券市場の慣習です。
他銘柄との比較は、あくまで目安の一つとして捉えるのがよいでしょう。
そもそも「社債間限定同順位特約」とは?
一言で言えば「ほかの社債だけを優遇しない」という約束です。
楽天グループが国内で発行する他の社債のために担保を付ける場合は、本社債にも同じ順位の担保を付けることになっています。ただし対象は「社債間」に限られ、銀行借入など社債以外の債務は含まれません。
なお、第26回債は劣後債やハイブリッド債ではない「普通社債」です。
購入前に押さえておきたいリスク・注意点
信用リスク
発行体が利息や元本を約束通り支払えなくなるリスクがあります。JCRは2025年9月26日に格付けの見通しを「安定的」に変更した一方、最終損益の赤字が続き財務負荷が高い状況にあるとも指摘しています。高い利率は、こうしたリスクを引き受ける対価でもあります。
価格変動・流動性リスク
満期まで持てば額面で償還されますが、途中売却は市場価格での取引となり、元本割れの可能性があります。希望する価格・タイミングで売れないこともあります。
購入単位
申込単位は100万円で、10万円単位で買えた近鉄債やクレディセゾン債と比べると、まとまった資金が必要です。期間も5年を超えるため、イオン債・ソフトバンクグループ債と同様、まとまった余裕資金がある中上級者向けの商品です。
特典は利息とは別物
特典は社債の発行条件そのものではなく、楽天グループが提供するサービスです。使う予定があるかどうかで価値は人それぞれのため、利率と信用リスク、期間で判断することが大切です。
税金・NISA
利息には20.315%の税金がかかり、NISAの対象外です。
記者コメント
楽天グループの第26回債は、利率が年4.370%に決まりました。5年債の近鉄債・クレディセゾン債、7年債のイオン債を上回る一方、期間が1年6カ月長いソフトバンクグループ債は下回る水準です。
「楽天モバイル」の無料提供は株主優待でもありますが、株式は100株(10月15日終値で6万1,130円)から手が届く一方、元本は株価次第で変動します。社債は100万円とまとまった資金が必要な一方、満期まで持てば額面で元本が戻る仕組みです。
特典の「お得さ」だけで選ぶのではなく、必要な資金、元本の戻り方、使える通信の内容を比べたうえで、自分の資金計画に合う投資先を検討してみてはいかがでしょうか。
申込期間は10月19日~28日です。購入を検討する際は、必ず目論見書を確認してください。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
