9日、近鉄グループホールディングスの個人投資家向け5年社債(第135回無担保社債)が利率2.521%で決定しました。
仮条件レンジ2.150〜2.750%(税引前)のやや上限寄りに着地しました。
申し込みは7月10日からです。
先行した、同じ民鉄セクターの「名鉄債」と比較した投資妙味や、購入特典について解説します。
近鉄「第135回無担保社債」の発行要項
近鉄債の発行要項は以下の通りです。
社債の名称:近鉄グループホールディングス株式会社第135回無担保社債(近畿日本鉄道株式会社保証付および社債間限定同順位特約付)
- 愛称:Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま) 運行記念債
- 発行総額:50億円
- 年限:5年
- 利率(年率):2.521%(税引前)
- 利払日:毎年1月24日、7月24日
- 償還日:2031年7月24日
- 申込期間:2026年7月10日~23日
- 払込期日:2026年7月24日
- 最低投資金額:10万円以上10万円単位
- 格付:BBB+(R&I)/A-(JCR)
- 引受会社(引受額):野村証券(22億円)/SBI証券(21億円)/みずほ証券(※)(5億円)/三菱UFJモルガン・スタンレー証券(2億円)
- 申込取扱場所:取扱証券会社のインターネット取引(ネット)販売のみ(店頭販売なし)
※ みずほ証券は引受額の全額を楽天証券へ販売委託するため、申し込みの取扱いは行いません
近鉄債の発行要項
近鉄債のポイントは?
それでは今回債のポイントを追っていきます。
初のネット販売のみ
今回の社債は、同社として初のインターネット取引サービス(ネット)販売専用の商品です。証券会社の店頭(窓口)での申し込み取扱いはなく 、投資家が自発的にオンライン上で手続きを行う仕組みとなっています。
100万円以上の購入で豪華特典アリ
募集期間中に同一の取扱証券会社から100万円以上購入し、指定の手続きを済ませた購入者には、以下の特典が用意されています。
- 新型レストラン列車「Les Saveurs 志摩」ペア乗車券(フレンチコース):抽選で最大30組60名にプレゼント
- KIPSポイント 5,000ポイント(5,000円相当):手続きを行った方全員に付与
KIPSポイントは、近鉄グループ共通のポイントサービスです。近鉄グループ各社の店舗・施設などで使えるものなので、沿線外では利用機会が限定される側面もあるため、自身の生活圏に照らした客観的な見極めが必要です。
先行銘柄「名鉄債」からは0.574%アップ
プロの機関投資家は、債券の条件を客観的に評価する際、セクターや年限、格付けが近い先行銘柄と比較して検証します。
今回、近鉄債に近い銘柄としては、3月6日に先行した、名古屋鉄道5年債(A:R&I/A+:JCR、発行額100億円) が挙げられます。
名鉄債は、近鉄債対比で格付けがR&I、JCRともに2ノッチ(段階)ずつ上かつ発行額が倍の100億円という条件で、利率(税引前)は1.947%でした。
今回の近鉄債は2.521%となっており、名鉄債の水準を0.574%上回りました。
この理由は、次の2つの要素に分解するとすっきりと理解できます。
市場の「金利」自体が上昇したため
名鉄債の条件が決まった3月6日近辺の5年国債の金利は1.6%台前半でしたが、足元は1.9%台後半へと上昇しています。
このようにベースとなる世の中の金利自体が0.3%以上底上げされたことが、今回の近鉄債の利率を押し上げる大きな要因になっています。
格付けの差による「上乗せ金利」が反映されたため
名鉄の格付けに比べ、今回の近鉄債の取得格付(予定)は2ノッチ低くなっています。
格付けが低い(=リスクが相対的に高い)企業は、投資家にお金を貸してもらうために、より高い上乗せ金利を支払う必要があるため、これが利率の差に表れています。
検証のまとめ
近鉄債の提示する利率が名鉄債より高いのは、「3月からの市場金利の上昇」と「格付けが2段階低いことによるリスクの見返り(上乗せ金利)」という2つの客観的な理由によるものです。
今回の近鉄債では、ベース金利の上昇分と格付け差が相応に反映されているといえそうです。
購入の手続きとスケジュール
本債券の発行総額は50億円となっており 、各取扱証券会社への割当金額は以下の通りです。
- 野村証券:22億円
- SBI証券:21億円
- 楽天証券:5億円
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券:2億円
(※みずほ証券株式会社は、引受額の全額を楽天証券へ販売委託するため、申し込みの取扱いはありません)
おわりに
ここまで近鉄債の仮条件や投資判断のポイントを解説してきました。
債券投資の検討にあたっては、証券会社から提供される「目論見書」に必ず目を通してください。
発行額が限定的であるため、募集期間内であっても売切れ次第、取扱いが終了となる場合があります。
決定した利率を確認し、ご自身のポートフォリオの「守り」の一手として検討してみてはいかがでしょうか。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
